宇宙航空研究開発機構 サイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASメールマガジン > 2006年 > 第80号

ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第80号

★★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ISASメールマガジン   第080号       【 発行日− 06.03.21 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★ こんにちは、山本です。

 先週読者の皆さんに感想メールをお願いしたところ、沢山の応援メールをいただきました。ありがとうございます。

 会社帰りの居酒屋で宇宙の話をしている方、「はやぶさ」の記事に一喜一憂して応援してくださる方、海外にお住まいの方、モチロン皆さん【宇宙大好き】な方たちばかりで、毎週の編集の励みになります。

 そんな中に九州在住(長崎、熊本)の方が、九州限定のTV番組のことを教えてくださいました。九州朝日放送(KBC)の「ドォーモ」という深夜番組で、3月1日・2日に【緊急指令 宇宙ロケット発射せよ!】として1時間にわたって放送されたものです。

 とても楽しそうな内容で、どうしても番組が見たくなったので的川先生の秘書Tさんに相談しました。そして、今週中には彼女の尽力で「ドォーモ」を見ることができます。(ワクワク)

 今週は、宇宙航行システム研究系の小川博之(おがわ・ひろゆき)さんです。

── INDEX──────────────────────────────
★01:なぜ超流動ヘリウム?
☆02:ビデオ「3万kmの瞳」が第47回科学技術映像祭:科学教育部門で文部科学大臣賞受賞!
☆03:宇宙科学講演と映画の会
☆04:「はやぶさ」のイトカワ到着を記念してポスターを制作しました。
───────────────────────────────────

★01:なぜ超流動ヘリウム?

 「すざく」、「あかり」にはセンサを冷却するために超流動ヘリウムが搭載されています。ヘリウムを蒸発させながらセンサを冷却するするわけですが、なぜ「超流動」ヘリウムを用いるのでしょうか?これは超流動ヘリウムのもっている不思議な性質を利用するからなのです。

 センサを冷却して発生したヘリウムガスを宇宙空間に捨てる必要があります。液体が容器のどこにあるかわからない状態で、ヘリウムガスだけを分離しなくてはいけません。地球上であれば、ヘリウムガス排出口を容器の上の方につければよいのですが、宇宙ではそうもいきません。

 ご存知のように宇宙では無重量状態です。地球上とは違って、液体は容器の底にとどまらず、ふわふわと漂います。宇宙船の中で宇宙飛行士が水玉をふわふわさせている映像をご覧になった方も多いと思います。このように宇宙空間では、液体を容器の特定の場所に固定することはできません。

 そこで超流動の「熱機械効果」という性質を利用します。容器に超流動ヘリウムを入れ、多孔質材で容器を二つに仕切り、片側を加熱すると、加熱された側に向かって超流動ヘリウムが流れる現象が観察されます。これを熱機械効果あるいは噴水効果と呼んでいます。

 超流動ヘリウム容器のヘリウムガス排出口に多孔質材を入れておきます。すると多孔質材の宇宙空間につながっている部分の圧力は、超流動ヘリウム容器内の圧力よりも低いため、多孔質材の超流動ヘリウム容器側の温度が、反対側の宇宙空間につながっている部分の温度よりも高くなります。熱機械効果により、多孔質に達した超流動ヘリウムは容器側に戻され、ヘリウムガスだけが多孔質材を通って宇宙空間に排出されることになります。

 他にも超流動ヘリウムは熱伝導が金属と同程度かそれ以上に良いという性質があり、冷却システムに望ましい性質を有しています。

(小川博之、おがわ・ひろゆき)

http://www.isas.jaxa.jp/j/snews/2006/0310.shtml

ASTRO-F衛星プロジェクトページ
http://www.ir.isas.jaxa.jp/ASTRO-F/Outreach/

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※