宇宙航空研究開発機構 ISASサイトマップサイトマップ

TOP > レポート&コラム > ISASメールマガジン > 2005年 > 第69号

ISASメールマガジン

ISASメールマガジン 第69号

★★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ISASメールマガジン   第069号       【 発行日− 05.12.27 】
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★ こんにちは、山本です。
 2005年最後のISASメールマガジンです。この2ヶ月間、メールマガジンの話題の多くは「はやぶさ」でしたが、来年は、1月に観測ロケット S-310-36号機の実験、2月は赤外線天文衛星ASTRO-F/M-V-8の打上げがあります。2006年は、更に多彩な話題を読者の皆さま に届けることが出来れば、と考えています。

 今年の締めは、宇宙探査工学研究系の橋本樹明(はしもと・たつあき)さんです。

 次週は、1月3日なので、ISASメールマガジンも『お休み』します。
次号 第70号は、1月10日にお届けします。それでは皆さま、よい年をお迎えください。

── INDEX──────────────────────────────
★01:「はやぶさ」は一日して成らず
☆02:M-V−8号機第2組立オペレーション順調に進む
☆03:ポータブル放射率測定装置の共同開発について
───────────────────────────────────

★01:「はやぶさ」は一日して成らず

小惑星イトカワの詳細観測を行い、小惑星への着陸・離陸を世界で初めて成し遂げた工学実験探査機「はやぶさ」ですが、突然ISASに「はやぶさチーム」なるものができて実現したわけではありません。長年に渡り、一歩一歩確実に学術研究、技術開発を積み重ねてきた成果であると考えています。今回は、 そのような側面を紹介したいと思います。

「はやぶさ」の設計、開発、運用に最も直接的に役立ったのは、火星探査機「のぞみ」です。「のぞみ」は残念ながら火星軌道投入できず、科学観測の点ではほとんど成果を上げられなかったのですが、技術開発、工学研究の面では多大なる貢献をしています。問題のあった推進系バルブや電源系の故障分離性を改善したのはもちろんのこと、「のぞみ」の運用で役立った自律機能を「はやぶさ」ではさらに進化させました。イトカワまでの往路、イオンエンジンの安定した運転は自律機能なしではできませんでしたし、着陸降下時のシーケンスにも自律機能を多用しました。また、2005年7月の合運用(探査機が地球から見て太陽のちょうど裏側に入り、通信が困難になる状況)では、「のぞみ」合運用の際のデータを活用し、通信がとれるであろうぎりぎりまでイオンエンジンの運転を行う計画を立てて、効率的な軌道設計がで きました。軌道設計や精密軌道決定についても、「のぞみ」の運用を通じて大きく技術アップしました。

イトカワの科学観測および着陸誘導に大活躍した光学航法兼科学観測カメラ(ONC)も、「のぞみ」搭載火星撮像カメラ(MIC)の開発・運用経験を活かしています。地球や月の写真をたくさん撮ったMICですが、初期には軌道計算誤差や撮像コマンドの不備などで、狙ったものが撮れなかったことが何回かありました。ONCでは、これらをカメラ設計に反映する一方、撮像運用方法も強化しました。その他の機器についても、「のぞみ」、LUNAR-Aのために開発した軽量化技術が用いられており、小型軽量でありながら高機能な「はやぶさ」の実現に必要不可欠でした。

「はやぶさ」の開発・運用に貢献したのは惑星探査機だけではありません。姿勢異常時のセーフホールド制御系は、先日運用を終了した電波天文衛星(もともとは工学実験衛星)「はるか」のものを基礎としています。また、イトカワへの着陸降下に必須であったレーザ高度計、近距離レーザ測距計の開発には、ISASのレーザセンサの研究者や、電子回路技術に長けた高エネルギー物理学(X線天文学)の研究者の協力を得ました。軌道を精密に決めるためのVLBI観測(通常は、電波星から来る信号の方向を精密に観測するのが目的ですが、これを探査機の位置決めにも使うことができるのです)は、 電波天文グループの協力で行われています。

「はやぶさ」は、文部科学省宇宙科学研究所時代に開発され打ち上げられたものですが、JAXA統合後、運用のアキレス腱となっている臼田局の送信機冗長系整備などが宇宙基幹システム本部によってなされました。また、リアクションホイール故障についての原因究明、製造メーカでの再現試験などは、探査機運用で手一杯の「はやぶさ」チームに代わって、総合技術研究本部安全信頼性推進部によって行われています。

11月27日付けの宇宙ニュースで的川教授は「日本にこのような若者たちを持っていることを、私は心から誇りに思います。」と表現されていましたが、計画開始時には若手だった主力メンバーも、今やみな40歳前後です。惑星探査の実現は長期に及びますので、個々のプロジェクトの成功・失敗にとらわれず、10年、20年先を見据えた着実な技術開発が必要だと考えています。「はやぶさ」で培った技術も、月探査機SELENE、金星探査機PLANET-C、水星 探査機BepiColomboなどへと引き継がれていくでしょう。

なお、今回の「はやぶさ」着陸運用の成果は、学術的、技術的なことだけではありません。記者レクチャなどを通じてジャーナリストの皆様と話す機会も増え、また国内外の皆様からの激励やご意見などもたくさんいただきました。太陽系探査は、科学的な研究対象としてだけではなく、全世界の皆様の興味の対象であることを実感するとともに、プロジェクトの進め方、探査機運用体制、広報のあり方など、勉強になることがたくさんありました。こちらも、一歩一歩ではありますが、改善すべく努力していきますので、今後ともJAXAミッションに対するご支援をよろしくおねがいします。


(橋本樹明、はしもと・たつあき)

 「はやぶさ」最新情報
http://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/today.shtml

 「はやぶさ」プロジェクトのページ
新しいウィンドウが開きます http://www.hayabusa.isas.jaxa.jp/j/

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
※※※ ☆02以降の項目は省略します(発行当時のトピックス等のため) ※※※