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ISASコラム

宇宙・夢・人

 「はやぶさ2」で小惑星に穴を掘る

(ISASニュース 2011年12月 No.369掲載)
 
宇宙航行システム研究系/月・惑星探査プログラムグループ 助教 佐伯 孝尚
さいき・たかなお。1976年、広島県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。2005年、JAXA深宇宙探査センター 宇宙航空プロジェクト 研究員。三菱重工業(株)名古屋誘導推進システム製作所を経て、2009年7月より現職。専門は宇宙航空力学、宇宙システム工学。
Q: 小惑星探査機「はやぶさ2」の開発をされているそうですね。初代「はやぶさ」との違いは?
大きく違うところは、まさに私が担当している衝突装置です。2kgほどの銅の弾丸を小惑星に撃ち込んで穴を掘り、クレーターをつくります。そのクレーターを観察したり、可能であれば、そこから試料を採ってくるという野心的な計画を進めています。銅の弾丸は大量の爆薬を使って一気に秒速2kmに加速します。その爆薬は探査機自体を粉々にする威力があります。ですから、まず小惑星の上空で衝突装置を分離し、探査機を安全な場所に避難させます。そして爆薬を爆発させて銅の弾丸を小惑星に衝突させるというアクロバティックな運用を行います。精度よく衝突させるためには、衝突装置を小惑星に向けて精度よく分離する必要があります。そこが難しい点です。
Q: なぜ穴を掘る必要があるのですか。
小惑星の表面は、風化により変成していたり、ほかの天体からの物質で汚染されていたりする可能性があります。穴を掘って風化や汚染の影響のない地下の物質を観察することで、太陽系の起源に迫る知見が得られると期待されています。また、「はやぶさ2」が目指す小惑星1999JU3は水や有機物を含んでいると考えられるので、生命誕生の謎にも迫ることができるかもしれません。
Q: 子どものころから宇宙に興味があったのですか。
幼稚園のときの文集を見ると、"宇宙飛行士になりたい"と書いてあります。ちょうどそのころスペースシャトルの初飛行があったので、影響を受けたのでしょう。また、父が農機具などを器用に整備したりする姿を身近に見て育ち、ものづくりにも興味を持ちました。父を見ると今でもすごいと感じます。
Q: 具体的に宇宙工学を志したのはいつごろですか。
小・中学生のとき、理科は好きでしたが、宇宙に特に興味があったわけではありません。しかし高校で進路を考えるとき、小さいころ宇宙に憧れていたことを思い出し、宇宙工学に携わりたいと思うようになりました。そこで宇宙工学を学ぶことができる東京大学へ進学し、大学院の修士課程から宇宙研にある川口淳一郎先生の研究室で学びました。
Q: 川口研究室の教育方針は?
手を動かしてものをつくることが多かったですね。そのとき、「いきなり文献を見るのではなく、まず自分で考えてごらん。文献を読むと、その考えから離れられなくなる」と、川口先生によく言われました。
Q: 将来、探査機づくりを目指す中・高校生にアドバイスをください。
探査機づくりには、幅広い知識が求められます。私は今、衝突装置をシステムとしてまとめ上げることが仕事です。これまで爆薬などを扱った経験はありませんが、専門外のことでも大まかな判断を瞬時にできる知識が求められます。私も中・高校生のころ、"この勉強をやって将来、何の役に立つのだろう"と疑問に思ったことがあります。しかし、さまざまな分野を幅広く学ぶことは絶対に損にはなりません。
Q: 将来の夢は何ですか?
探査機で誰も行ったことのないところを目指したいですね。それが宇宙探査の原点ですから。しかし今は、「はやぶさ2」のことで頭がいっぱいです。
Q: 多くの人たちに感動を与えた「はやぶさ」の後継機として、注目度が高いですね。
大きなプレッシャーを感じています。「はやぶさ」はとても難しいミッションを成し遂げました。「はやぶさ」にできたことは、「はやぶさ2」にできて当たり前と思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。宇宙探査では、目指す場所がどのような状況か不明で、何が起きるか分かりません。だからこそ行く価値があります。
Q: 衝突装置を作動させるのはいつごろですか。
「はやぶさ2」は2014年に打ち上げられ、2018年6月に小惑星1999JU3に到着します。そして、地球へ帰還する直前の2019年秋に衝突装置を作動させます。文字通り一発勝負。小惑星に穴を掘る前に、私の胃に穴が開くかもしれませんが、とにかく頑張ります!