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ISASコラム

宇宙・夢・人

火星有人飛行第一陣に日本人を!?

(ISASニュース 2009年9月 No.342掲載)
 
大学等連携推進室 参事 鶴間陽世
つるま・ひとし。1962年、東京都生まれ。東京外国語大学インド・パーキスターン語学科ウルドゥー語学・文学専攻。1988年、宇宙開発事業団国際部国際課。向井宇宙飛行士専属マネージャー、JAXAワシントン駐在員事務所所長代理、国際部国際課長(アジア協力室計画マネージャ兼務)などを経て、2008年より現職。
Q: 2008年10月に大学等連携推進室所属となり、東京事務所から相模原キャンパスへ。相模原キャンパスの印象は?
学生さんがたくさんいることに、まず驚きました。丸の内にある東京事務所ではスーツ姿が当たり前ですが、相模原ではラフな服装の人が多かったり、実験で徹夜明けなのか廊下のソファで寝ている人がいたりで、とても新鮮です。
Q: 大学等連携推進室とは?
JAXA、特に宇宙研と大学の協力関係には長い歴史がありますが、宇宙科学分野が中心でした。日本の大学は、ロボットやナノテクノロジー、生命科学、遺伝子工学など、さまざまな分野で世界トップクラスの研究を行っています。今後の宇宙開発を考えると、宇宙科学だけでなく、大学が持っているさまざまな英知、先見的な知識を集結させ、オールジャパン体制で取り組んでいく必要があります。そのためにJAXAと大学との密接な協力関係を推進していくことが、私たちの仕事です。芸術や文学、哲学など、これまで宇宙開発とは無縁だと思われていた人文・社会科学の研究者に対しても、宇宙には大きな魅力があることを宣伝し、一緒に新しいことをやろうと働き掛けているところです。
Q: 出身大学は東京外国語大学、専攻はウルドゥー語ですね。
数学や理科が得意で、高校でも理系クラスでしたが、高校卒業後、言語学やコミュニケーション論に興味を持ち、文系に転向したのです。ウルドゥー語を選んだのは、一番なじみがなかったから。すでに勉強した英語だと飽きるかもしれないが、まったく知らないウルドゥー語なら新鮮な気持ちで学べるのではないかと思いました。外語大は厳しく、当時、2割は進級できませんでした。それでも私は3年間で単位をほぼすべて取り、4年生のときは、人工知能の先駆けとなる自動翻訳機の辞書をつくる民間企業の仕事をお手伝いしていました。まさにやりたかったことでしたが、そこで仕事を続けるには言語学で修士を取らないといけない。また勉強をするのかと考えたら頭が痛くなり、就職することに。
Q: そして宇宙開発事業団(NASDA、現JAXA)へ。
ビッグプロジェクトに携わりたいと、漠然と考えていました。当時のビッグプロジェクトといえば、宇宙開発、原子力、石油開発、海洋開発。幸運にも、NASDAが事務系の職員を募集すると聞き、受けてみたのです。
Q: もともと宇宙へのあこがれがあったのですか。
はい。アポロ月着陸のテレビ中継はもちろん見たし、月の石を見たくて大阪万博にも行きました。『宇宙戦艦ヤマト』のワープ航法には、わくわくしましたね。私たちが子どものころ、宇宙はまさに夢の世界でした。スペースシャトルが夕焼けの空を飛ぶ姿を見つけ、本当に、宇宙時代の到来を感じました。
Q: 専属マネージャーとして向井千秋宇宙飛行士と身近に接し、自分も宇宙に行きたいと思いませんでしたか。
それはありません。私はひどい船酔いをするのです。ぷかぷか体が浮いているシーンを見ただけで、もう駄目。
Q: 駐在員事務所や国際部など外国との仕事が多いですね。
宇宙開発は国際協力が不可欠です。でも実は、私は英語が得意だったことはありません。コミュニケーションには必ずしも高度な語学力が必要ではないと思っています。大事なのは、何を伝えたいかをきちんと整理して、哲学や思想を持って話すことです。
Q: 日本の宇宙開発は今、世界の中でどういう位置にあるのでしょうか。
日本が9月に打ち上げた宇宙ステーション補給機(HTV)に、NASAをはじめ国際パートナーは大きな期待を寄せています。ロシアのプログレス、ヨーロッパのATVと比べて、HTVは国際宇宙ステーション(ISS)に荷物を運び込む入り口の直径が大きく、大きな装置をそのまま運ぶことができるのです。日本が初めて衛星を打ち上げたとき、アメリカはすでに月に人を送っていました。それが今や、日本はISSの欠かせないパートナーとしてNASAから信頼を受けています。
また最近のJAXAの国際協力は、アジアに注目しています。アジア諸国は、通信衛星のユーザーとしてだけでなく、自国で製作した衛星を持ちたいと考えているのです。宇宙開発では、日本は彼らの“お兄さん格”です。アジアの国々と手を携えて月や惑星を目指すことができれば、と思っています。
Q: 最後に、日本の宇宙開発への期待をお聞かせください。
火星に立つ最初の人類の中に、ぜひ日本人がいてほしいですね。そして、もし生命がいれば、採取して地球に持ち帰ってほしい。アポロが撮影した真っ暗な宇宙に浮かぶ青い地球の写真は、人々に深い感動をもたらしました。地球外生命の発見は、それ以上に人類や社会の在り方に大きなインパクトを与えることでしょう。