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ISASコラム

宇宙・夢・人

系外惑星から地球の生い立ちを知りたい

(ISASニュース 2009年7月 No.340掲載)
 
宇宙科学技術センター ミッション機器系グループ 副グループ長 上野 宗孝
うえの・むねたか。1962年、大阪府生まれ。理学博士。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科助手・助教を経て、2009年より現職。赤外線天文衛星「あかり」では太陽系天体と星形成関係の観測計画取りまとめ、金星探査機PLANET-Cではミッション系の総括、小型科学衛星1号機SPRINT-A/EXCEEDではミッションマネージャーを務める。
Q: 搭載機器の管理などミッション系の総括をされている金星探査機PLANET-Cの打上げまで1年となりました。PLANET-Cは「金星気象衛星」とも呼ばれていますね。
「気象」という名前が付いた惑星探査機は世界で初めてではないでしょうか。金星では、大気が自転速度の60倍もの猛スピードで運動しています。その現象は「超回転」と呼ばれ、なぜ起きるのか分かっていません。PLANET-Cでは波長が異なる4台のカメラを使い、気象学的な手法を用いて、金星の大気を下から上まで詳しく観測します。地球の気象衛星より進んだことをやろうとしているのです。
 金星は、地球の隣の惑星です。46億年前に誕生したとき、2つの惑星はよく似ていたと考えられています。しかし、現在の金星は温暖化が極端に進み、400℃を超える灼熱の惑星です。金星が現在の姿になることに超回転はどう関係しているのか、何が地球と金星の運命を分けたのか、それを知ることを目指しています。
Q: 特に注目している観測は?
本来の目的とは違う“おまけ”ですが、地球を出発して金星に到着する間、黄道光を観測します。黄道光とは、太陽系の中に漂っているちり、惑星間塵が太陽光を散乱させているものです。ちりは太陽を中心に円盤のように広がっていると考えられていますが、詳しい分布は分かっていません。黄道光の観測は、地上と地球を周回する衛星からのものに限られていたからです。初めて地球から離れた場所から観測することで、ちりの分布や起源が分かると期待しています。PLANET-Cで行う最初の科学ミッションが、この黄道光の観測です。
 黄道光を知ることは、系外惑星の発見につながります。系外惑星を直接見て探す場合、最初に観測されるのは惑星ではなく、明るい黄道光でしょう。太陽系におけるちりの分布や供給源が理解できていれば、系外の黄道光を見つけたとき、惑星の位置や大きさを予測できるようになります。
Q: 小型科学衛星SPRINT-Aのミッションマネージャーも務めていらっしゃいます。
SPRINT-Aは惑星望遠鏡で、地球周回軌道から火星、金星、木星を観測します。太陽風によって大気がどのようにはぎ取られ、それぞれの惑星が現在の姿になったのかを明らかにすることを目指しています。惑星の近くまで行く探査機のように詳しい観測はできません。しかし、遠くから観測することで、太陽風が当たる側と、はぎ取られた大気が宇宙空間に流出していく側を同時に見ることができます。打上げ予定は2012年。PLANET-Cとの連携も計画しています
Q: 専門は赤外線天文学ですね。
はい。私が開発していた赤外線の検出器を搭載したいと声が掛かり、PLANET-C計画に参加したのですが、気が付いたら中心メンバーの一人になっていました。SPRINT-Aに至っては、赤外線の「せ」の字も出てきません。惑星科学と天文学は分かれていましたが、1995年に系外惑星が見つかって以降、急速に融合が進んでいます。新しい分野に入ることは面白いですし、何でもやるというのは宇宙研らしいでしょう。
 実は、大学では素粒子物理学を学びました。宇宙の根源を知りたいと思ったのです。でもそれが自分に合っているのか悩みと、卒業後は企業に就職しました。研究から離れてみて、自分がやりたいのは宇宙だと気付いたのです。
Q: 宇宙に興味を持ち始めたのはいつごろですか?
子どものころから自然が好きで、特に宇宙に興味がありました。天体望遠鏡をのぞくのではなく、宇宙の始まりについての本を読んだり、考えたりするのが好きでした。ぼんやりと、科学者になりたいと思っていましたね。小学生のころは、「どうして? なぜ?」と先生を質問攻めにして困らせていたようです。
Q: PLANET-CやSPRINT-Aの先は?
主星のすぐ近くを回る木星サイズの系外惑星、「ホットジュピター」がたくさん見つかっています。きっと、その惑星の大気は激しくはぎ取られているでしょう。その様子を観測してみたいですね。次期赤外線天文衛星SPICAでも、近距離に系外惑星があれば観測できる可能性があります。私は、この地球がどうして現在の姿になったのかを知りたいのです。金星や火星、系外惑星を観測することで、その答えが見えてくると信じています