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特別編 JAXA 2015 BIG 3からJAXA BIG 3に

(ISASニュース 2015年10月 No.415掲載)
 
宇宙飛翔工学研究系 教授 嶋田 徹
BIG 3、相模原を闊歩する。
左から大底、大瀬戸、大野。
今回は、2015年度採用の3人組が相模原キャンパスで過ごした研修の日々をまとめました。
 JAXAの2015年度入社職員は、「JAXA 2015」と呼ばれている。その中で我々、大野、大瀬戸、大底の3人は、「JAXA 2015のBIG 3」と自称している。理由は明白。我々3人がJAXA 2015の中で、最も優秀だから(言わずもがな、本当は全員苗字に「大」が付いているからというだけにすぎない)。新人研修の一環である現場実習において、その3人が同じグループになったことは奇跡である(人事部のいたずらではないかと邪推している)。本稿では、我々3人が5月に相模原キャンパスで過ごした13日間について振り返ることとしたい。

 研修先は、宇宙科学技術・専門技術の各グループ。内容は、「プロジェクトのサブシステムを担当する部署の業務内容を実体験することにより、業務内容への理解と現場感覚の養成を目指すこと」を目標に、座学と実技で構成されていた。

 初日。午前はイントロダクションを兼ねて、研修受け入れ責任者である廣瀬和之先生のお話を伺った。「白黒のはっきりとした答えのない『灰色の問題』にどのように対処するか」といったエンジニアとしての心得を教えていただいた。そのようなお話を拝聴できる機会は少なく、技術者である大野と大瀬戸にとっては本研修の中で最も有意義な時間であった。

 初日の午後は、電子部品・デバイスと通信系に関する座学と、超小型深宇宙探査機PROCYONの運用見学を行った。現在運用中の日本の深宇宙探査機は数えるほどしかなく、稀有な経験であった。

 次の3日間は、あきる野実験施設での低毒貯蔵性液体推進系実験に参加した。「指示されたタイミングでスイッチを押す」「大きなバケツいっぱいの水を運ぶ」など単純な仕事であったが、現場を実体験し、危険を伴う実験での安全管理や意思統一の重要性を学んだ。

 また、宇宙研らしいインハウス開発体験を目的とし、太陽センサの開発を4日間かけて行った。精度や動作環境などの要求から仕様と設計を決め、自らはんだ付けすることでセンサを製作した。さらに、ソーラーシミュレータを用いた試験と性能評価を行った。事務系の大底にとっては、このときの経験が最も印象深い。現在は筑波の契約部に配属されているが、依頼される案件の内容を漠然とでもイメージすることができる。それは、研修のために用意された課題であったとはいえ、一連の開発を体験できたからである。
 次に、自励振動ヒートパイプの製作と実験をし、次期X線天文衛星ASTRO-Hの熱真空試験を見学する期間が4日間あった。自励振動ヒートパイプは、基本的な動作原理は明らかにされているものの、その動作を普遍的に記述する理論はまだ確立されていないという。ものづくりが好きな大瀬戸は、理論よりもまずは製作し実験してみることの重要性をあらためて認識した。ASTRO-Hの熱真空試験では、フライトモデルの美しさと存在感が強烈に印象に残っている。

 最終日は、観測ロケットに関する座学を受け、実際のロケットに搭載されるバッテリーの充電実習を行った。9月に観測ロケット実験運用研修に参加した大野にとっては、このとき得た知識が大いに役立ち、また自分が充電したバッテリーが搭載されたロケットの打上げに参加できるとは夢にも思わなかった。

 これが13日間の現場実習の全容である。この期間を通して我々3人が学んだことは、相互理解と仲間・同僚の大切さである。技術者同士の連携の重要性はもちろん、技術系と事務系が互いを理解し合うことで、業務の効率化につながるのではないかと感じた。その意味では、本研修は事務系の大底にとって非常に良い経験であったし、一方、技術系の大野と大瀬戸は事務系の業務をわずかでも体験してみたかったと感じている。研修中は多くの先生方、先輩方にお世話になり、たくさん学ばせていただいた。JAXAという比較的小さな組織の中で、あれだけ多くの方々に顔と名前を覚えていただいたことは大変うれしく、今後はぜひ仕事でもお世話になれたらと考えている。心から感謝申し上げたい。そして最後に、3人の同期としての絆を深めることができた。よく笑い(時には怒られるのではないかと思うほどよくふざけ)、本当に楽しく充実した時間であった。

 これからは「JAXA 2015のBIG 3」から「JAXAのBIG 3」になれるよう、頑張ります。