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ISASコラム

宇宙・夢・人

数百年後の人類に恥じない宇宙開発を

(ISASニュース 2014年4月 No.397掲載)
 
科学推進部 部長 石井康夫
いしい・やすお。1962年、群馬県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空工学修士課程修了。1986年、宇宙開発事業団(NASDA)。種子島宇宙センターでH-Tロケット初打上げなどの地上設備、筑波宇宙センターでマニピュレータ飛行実証プロジェクトなどを担当。ボン派遣員事務所長、経営企画部企画課長などを経て、2013年より現職。
Q: 科学推進部では、どのような業務を?
宇宙研の広報を含めた総務全般、予算の立案を含めた事業計画検討、そして大学共同利用に関わる事務をしています。宇宙研の主役は、宇宙科学の研究開発をしている人たちです。皆さんが良い活動をして、良い成果を挙げられるように支えていくことが、科学推進部の仕事です。
Q: そのために必要なことは?
説明責任と信頼関係です。新しいことが決まったら、こうしてくださいと命令するのではなく、それがなぜ必要なのかをきちんと説明するように心掛けています。宇宙研に所属している全員がベクトルを合わせて仕事をしていくことが重要です。もし誰かが不満を持っていると聞いたら、すぐ連絡を取って話を聞き、対応するようにしています。その一手間をさぼると、信頼関係がなくなり良い成果を挙げられなくなります。
Q: これまで、さまざまな部署を経験されたそうですね。
エンジニアとしてNASDAに入り、数々のプロジェクトに参加してきました。その経験は、現在の科学推進部、その前の経営企画部での仕事にも役立ちました。研究者、技術者が何を言いたいのかが容易に想像できますし、政府や行政機関に説明する場でも自信を持って話をできるという強みがあります。
Q: これまでの仕事で大変だったことは?
たくさんありますが、一つは経営企画部に異動して1ヶ月で自民党から民主党に政権が代わったときですね。先行きが不鮮明になり、事業仕分けへの対応にも苦心しました。もう一つは、国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に搭載するロボットアームの飛行実証プロジェクトです。予算も時間も限られていて、フライトモデルをつくらずにエンジニアリングモデルを宇宙に持っていくことに途中で変更したため、改修や追加の試験、NASAの手続きなどすべてが大変でした。当時、私は30代半ばでしたが、すべてを懸けて取り組みました。ISSプロジェクトは1980年代からやっていますが、日本はずっとペーパーワークや地上作業ばかりでした。1997年に、このプロジェクトで初めて実際にISSに行くものをつくって宇宙に打ち上げて動かすことに成功しました。それを見た人たちが日本もできるんだと自信を持てたと言っているのを聞き、苦労が報われる思いでした。
Q: なぜNASDAに?
高校生のとき、宇宙開発に携わりたいと思うようになりました。学校でクラス対抗の行事があると、クラスがまとまって頑張りますよね。学校対抗、国対抗でも同じです。さらに大きな宇宙という視点で考えれば、地球で暮らす人類が一つにまとまるのではないか。つまり、宇宙開発の仕事は人類の平和につながると考えました。  書店で赤本を立ち読みして、東京大学の宇宙航空研究所でロケットを打ち上げていることを知り、東大に行こうと決めました。航空宇宙学科で構造力学を学び、卒業後は日本の宇宙開発を引っ張っていくような仕事をやりたいと思うようになりました。NASDAならばそういう仕事ができると考えたのです。
Q: どのような宇宙開発をやりたいと思い描いていたのですか。
きちんと考え始めたのはNASDAに入ってからでした。宇宙開発は数百年単位の事業です。具体的に何をしたいというのではなく、未来の人たちが振り返って、あのころによくやってくれたから今があるよね、と言われるようにしたいと思っています。
Q: 今の宇宙開発に必要なことは何だとお考えですか。
自分たちは今まで素晴らしい成果を挙げてきたのだから、これからも国民の皆さんにサポートしてもらえるだろう。そんな甘い考えでは日本の宇宙開発に将来はありません。宇宙開発の魅力や成果をもっとアピールしていくことが必要です。それには計画中・進行中のプロジェクトやその成果について、もっと分かりやすい言葉で伝えなければいけません。国民の皆さんの知的好奇心をかき立て、ぜひそのプロジェクトを実現してほしいと思っていただくことが不可欠です。
Q: 趣味は?
テニスです。高校時代は軟式で、社会人になってから硬式を始めました。相模原は単身赴任なので、筑波の自宅に帰る週末に練習しています。大会にも出ていますが、昨年は肉離れをやってしまい、執務室へ行く階段がつらかったです。テニスをやっているときは、仕事のことはすべて忘れます。仕事に集中するためには、気分転換も大事ですよ。