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ISASコラム

第13回
第6号科学衛星「じきけん」その2

(ISASニュース 2003年10月 No.271掲載)

「じきけん」の観測は、先端間60mの長いアンテナが長時間の微動の結果疲労し、欠損した時点が終結点となりました。この間、初めて磁気圏まで衛星が飛翔し、直接探査して多くの観測成果を挙げることができました。

この成果の詳細については述べませんが、報告されたものから主なものを挙げると、
(1)サウンダーによるプラズマ観測
(2)オーロラキロメートル電波の観測
(3)プラズマポーズ付近の諸現象の明確化
(4)プラズマ圏の波動粒子相互作用を実証的に解明
などが代表的な観測成果です。

毎日連続8時間の長時間受信で生まれた「トラッキング数え歌」

丹精込めて作りあげた衛星を囲む「じきけん」チームの面々

「じきけん」が長楕円軌道のため、トラッキングチームは今までにない長時間受信を毎日続ける、かなりきつい運用になりました。毎日受信されるペンレコーダ記録とアナログテープ記録によるデータは見る見る増えて、その整理と処理で大変でした。コンピュータで記録し、処理される今では考えられないことです。当時はメーカーの方も一緒に実験場に泊まり込んでの作業でしたが、長い1日が終わると、次の日に備えるアフターの盛り上がりは大変なものでした。そのとき生まれた歌に「トラッキング数え歌」があります。10番までありますが、その一部を紹介します。

「トラッキング数え歌」

 レボ1や〜レボ1や〜
 北極回って内之浦〜内之浦
 教授も喜ぶ一回り〜一回り

 レボ2や〜レボ2や〜
 にこにこ受けるは追跡班〜追跡班
 これから始まる祝賀会〜祝賀会

 レボ3や〜レボ3や〜
 さんざん苦労して打ち上げた〜打ち上げた
 これからたのむぞ よかデータ〜よかデータ

 レボ4や〜レボ4や〜
 4人でできるは麻雀や〜麻雀や
 4人でできないトラッキング〜トラッキング

 ……中略……

 レボ9や〜レボ9や〜
 くるくる変わるは平尾ちゃん〜平尾ちゃん
 おかげでこまるはコマンドマン〜コマンドマン

(注)レボとはRevolution(周回)の略。この歌は、「きょっこう」「じきけん」をトラッキング中に生まれたものと思われます。休まず回ってくる衛星を追跡した当時の追跡班の心情が伝わってきます。平尾ちゃんとは恐れ多くも平尾邦雄教授(現・名誉教授)のことです。

(井上 浩三郎)

衛星主任を務められた大林先生