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ISASコラム

第8回:ロケットの状態監視
(ISASニュース 2007年4月 No.313掲載)

 今回は「ロケットの状態監視」として、計測班についてお話しします。

 計測班の主目的は、ロケットの性能(モータの燃焼・構造強度など)、搭載機器および機体各部の環境(加速度・振動・音響・温度・外圧など)についての計測値を取得することです。また、ロケットが正常に飛んでいるかどうか計測値を監視し、異常があれば飛翔保安担当者に連絡をします。

 これらの計測を行うセンサ(検出器)は、それほど特殊なものではなく、一般的に使用されているものです。いくつか例を挙げてみます。簡単に説明しますので正確さを欠くかもしれませんが、失礼します。

(1)抵抗線ひずみゲージ
 ひずみ(力)が加わることによって、電気抵抗が変わるセンサです。機体構造の強度を確認するときに使用します。

(2)圧力センサ
 金属性の円筒型圧力容器の内部に圧力を受けるための弾性金属板(ダイアフラム)があり、これに加わるひずみを検出するセンサです。ひずみを検出する方式には、前述の抵抗線ひずみゲージや、ピエゾ抵抗効果(半導体結晶にひずみが加わることによって内部のエネルギー構造が変化し、正孔または電子の移動量が変化して電気抵抗が変わる現象)を利用した半導体ゲージ(通常はシリコン)があります。最近では半導体をよく使用しています。


M-Vロケット1段モータ頭部耐熱ゴム温度センサ取付け作業

(3)加速度(振動)センサ
 センサケース内が、重りをばね(板ばねなど)と減衰機構(ダンパ)で支えた構造になっていて、重りの動きを検出するセンサです。重りの動きの検出には、ひずみとして検出する抵抗線ひずみゲージや、半導体ゲージ、圧電効果(ひずみを受けることによって電圧が発生する現象)を利用した圧電素子を用いた方式などがあります。また、重りの変位として検出するサーボ型の方式もあります。最近では、加速度はサーボ型、振動は圧電素子を用いたセンサを使用しています。

(4)熱電対(温度)センサ
 ゼーベック効果(二つの異なる金属の両端を結合し、両結合部に温度差を与えると電圧が発生する現象)を利用したセンサです。主に、K型(クロメルとアルメル金属)を使用しています。

 以上が、主にロケットに使用しているセンサですが、このほかにもいろいろなセンサがあります。

 これらのセンサを使用して計測する点数は、M-Vロケットで230から300点になります。また、計測場所(センサ位置)は1段、2段、3段の各モータ、衛星と、ロケット全体に及んでいます。センサからの信号を増幅してテレメータ(搭載機器の状態を電波で地上に知らせる装置)に送る計測機器の搭載場所は、各段の頭部かノズル部と限られているので、センサまでの線が長くなり、最長20mほどになることもあります。そのため、外来ノイズなどの影響を受けやすくなり、その対策に苦労しています。


M-Vロケット3段モータ伸展ノズル温度センサ取付け作業

 センサの取付け作業は、ロケットの組み立て作業の手順に従って行いますが、計測点数が多く、3人程度で行うので、打上げ直前までかかってしまうことがあります。写真は、温度センサを取付けている作業風景です。

 センサの取付け作業がすべて終了したら、あとはロケットの打上げを待つだけです。打上げの当日は、正常に計測できるか緊張しつつ、計測値の監視をしています。

 以上が計測班の仕事ですが、各班の協力があってこそ順調に作業が進んでいると感謝しています。今後ともよろしくお願いします。

(とみざわ・としお)