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オイラー角

変換行列は9つの要素を持つわけだが、独立な要素は3つである。これは、 オイラーの定理より、任意の直交変換は回転軸の方向(2つの変数で決まる) とそのまわりの回転角(3つめの変数)を与えれば実現できることから理解できる。 その3つの変数を指定すれば、二つの座標系の間の変換を一意的に定義したことになる。

座標変換を表わす3つのパラメーターとして良く使われるものにオイラー角 がある。オイラー角にもいろいろな定義があるが、ここでは日本の科学衛星の姿勢に使われている 「zyz」オイラー角の定義を用いて議論を進める。

赤道座標の上で、2.3節で定義した、$x,y,z$軸を考える($x$軸は春分点、 $z$軸は北極を向いている)。たとえばこれが人工衛星の三軸だったら、今から定義する オイラー角は人工衛星の姿勢を与えることになるし、別の座標軸だったら、 オイラー角は異なる天球座標系の間の変換を与える。

$z$軸の周りに、$+z$の向きを向いて時計周りに角度$\phi$回転し、 $x$軸、$y$軸の位置を変える。この新たな3軸を、便宜上$x'y'z'$としよう($z=z'$である)。 次に、$y'$軸の周りに、角度$\theta$回転し、$x'z'$軸の 位置を変え、$x''y''z''$軸を定義する($y'=y''$である)。最後に、$z''$軸の周りに$\psi$回転し、 最終的に、$x'''$,$y'''$,$z'''$軸を定義することができる。$xyz$軸による旧座標系と、$x'''y'''z'''$軸による 新座標系の間の関係を与える $(\phi,\theta, \psi)$を、オイラー角と呼ぶ。

このように定義したオイラー角と、(19)または(28)で与えられる変換行列との関係を調べてみよう。まず、最初の$z$軸のまわりの$\phi$回転で、新たな 基底ベクトルと元の基底ベクトルの間の関係は以下のようになる。

\begin{displaymath}
({\bf e_1'},{\bf e_2'}, {\bf e_3'})= ({\bf e_1},{\bf e_2}, {...
...\sin \phi & \cos \phi & 0\\
0 & 0 & 1\\
\end{array}\right).
\end{displaymath} (50)

同様にして、$y'$軸周りの$\theta$回転によって、

\begin{displaymath}
({\bf e_1''},{\bf e_2''}, {\bf e_3''})= ({\bf e_1'},{\bf e_2...
...& 1 & 0\\
-\sin \theta& 0 & \cos\theta\\
\end{array}\right).
\end{displaymath} (51)

$z''$軸周りの$\psi$回転によって、

\begin{displaymath}
({\bf e_1'''},{\bf e_2'''}, {\bf e_3'''})= ({\bf e_1''},{\bf...
...\sin \psi & \cos \psi & 0\\
0 & 0 & 1\\
\end{array}\right).
\end{displaymath} (52)

以上、3式をまとめて、


\begin{displaymath}
({\bf e_1'''},{\bf e_2'''}, {\bf e_3'''})=
({\bf e_1},{\bf ...
...
\sin \psi & \cos \psi & 0\\
0 & 0 & 1\\
\end{array}\right)
\end{displaymath} (53)


\begin{displaymath}
=({\bf e_1},{\bf e_2}, {\bf e_3})
\left(\begin{array}{ccc}
...
...i & \sin \theta \sin \psi & \cos \theta\\
\end{array}\right).
\end{displaymath} (54)

これが、このノートの冒頭で与えた式(6)である。 これは回転行列だから、条件(34)と(42)を満たしていることに注意しよう[*]



Ken EBISAWA 2011-02-08