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第88号 2001年2月9日発行

目次


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新 SIRIUS の現状(最終回)

1.衛星テレメトリデータの管理

 新 SIRIUS の開発はシステムの UNIX 化と共にパケットテレメトリ方式のデータに対応することが大きな目的の一つとなっています。現在平行運転している新旧両システムも最終的には新システムに統合され、旧システム上の全衛星データは新システムに移行されて同居することとなります。そこで管理上から見たパケットテレメトリ方式のデータと従来テレメトリ方式のデータとの相異、そして新 SIRIUS システムでの管理形態について比較しながらお話することとします。

 衛星テレメトリデータはフレームと呼ばれる単位で受信され、時刻等の受信情報が付加された形式で収録されます。これが SIRIUS 上で管理されるデータの最小単位となります。この受信単位であるフレームは、

1)フレーム(マイナーフレーム)

2)トランスファーフレーム(Transfer frame)

3)PCA_PDU (Physical Channel Access Protocol Data Unit)

と呼ばれています。1)は従来のテレメトリ方式(以後非パケット方式と呼ぶ)の呼称。2)3)はパケットテレメトリ方式の呼称です。パケット方式も非パケット方式もフレームの長さや先頭に付加されている同期符号の違いはありますが、送られてくるテレメトリデータを受信単位で見る限り同様の形式であり同様に管理できます。しかしデータアクセス面から見ると大きな相異があります。SIRIUS 上のデータはテレメトリフォーマットに近い形状で格納されているためデータ取り出し時には衛星データ送出時と逆の手順で取り出すこととなります。パケット化されたデータはそれを元に戻すための所謂デパケットと言う複雑な操作が必要となります。非パケット方式では、データ送出手順が単純(規則的)なためデータの取り出し手順も比較的簡単です。次に両テレメトリ形式について個々に説明します。


1.1 非パケット形式について

 非パケット形式は整然とした配列にデータが格納された形式に似ています。1メジャーフレームをn行m列の配列に例えるなら次のように定義できます。 「1メジャーフレームはn個の番号付けられたマイナーフレームで構成され、各マイナーフレームがm個のワードで構成される。ワードは固定長(宇宙研の場合通常8ビット)でそれぞれのデータが各ワードに格納される。」 衛星からのデータの送り出しはこのメジャーフレームの繰り返しとなります。

 非パケット方式はこのように、どこにどのデータが格納されているかが明確であり、またデータ長も固定です。このためデータ管理面及びデータアクセス面での複雑さは有りませんが、その反面、柔軟性に乏しいとは言えます。


1.2 パケット形式について

 パケット形式のデータは非パケット形式のようにデータが整然と並んでいる訳ではありません。また、パケットの長さも不定長です。唯一明確なのは上記のフレーム長(PCA_PDU長)のみであり、それ以外はフレームの中を見ない限りデータの構成はわかりません。もちろんパケットテレメトリ方式としての定義は明確にされている訳ですから、それに従って順にデータを探して行けばよいことにはなります。具体的には、各種ヘッダ情報、

・ M_PDUヘッダ: フレーム内のパケットの先頭位置を示す等.

・ パケットヘッダ(Primary Header等):APID や各種パケット情報を格納.

をたよりに APID(Application Process Id.:パケット名に相当)によって識別されたパケットデータを探して持ってくるということです。話としては簡単ですが、この操作は非常に複雑で時間もかかります。また、パケットテレメトリ方式にはバーチャルチャネルと呼ばれる概念があり、VCID (Virtual Channel Id.) によってそのフレームがどのバーチャルチャネルに属するかが識別されます。バーチャルチャネルによる送出データの分類は衛星によって異なりASTRO-E (ASTRO-EII) では各観測器や共通機器に対し VCID によって分類されており、それぞれの分類ごとに独立して管理されています。それに対しMUSES-C ではリアルタイムデータとプレイバックデータの分類のみを VCID によって行っている関係上独立したデータとは見なしていません。また Packet Secondary Header の適応も両衛星で異なります。このように、CCSDS 勧告のテレメトリ方式を各衛星に適応させる場合その適応に巾があるためデータの管理やアクセス面においてさらに複雑なものとしています。

 新 SIRIUS ではこのような複雑なシステムに対応するため、パケット情報ファイル(基本処理時に作成)と呼ばれる各パケットヘッダ情報と格納位置を示すデータを対にしたファイルを作成して目的パケットデータの高速サーチを行う、VCID ごとにデータの編集を行う、等の方法を取っています。


2.データの受け渡し形態

 新 SIRIUS システム上では先にも述べましたがデータは受信時のテレメトリフォーマットに近い形式で格納されています。これは、パケット単位等に分解するとデータが膨れあがると共にデータの取り扱いが煩雑になるためです。そのため、データをユーザに受け渡す時点で要求された形式に変換しています。データのユーザへの受け渡し形態には、

1)VCID ごとのトランスファーフレーム(PCA_PDU)形式

2) VCID ごとのバーチャルチャネル形式

3) パケット形式

の3種類があります。

一般的には3)のパケット形式であり、各機器ごとあるいは各項目ごとにデータが渡されます。具体的には各観測器データや姿勢データ、HK データといった使用目的ごとにデータが取り出されユーザインタフェース(SDTP等)を介して渡されます。


3.おわりに

 やや尻切れトンボ的になりましたがこれで新 SIRIUS システムの現状についてのお話を終わりとします。パケットテレメトリ方式は非常に複雑なシステムであり新 SIRIUS 作成に当たっては大変苦労をしました。誰がこんな方式を採用したんだ?と言った思いもありました。とは申せ、パケットテレメトリ方式は衛星データ送出に対し大変自由度の高い方式であります。今後の衛星テレメトリの主流となる方式でありますから新 SIRIUS としても種々の問題を克服してより便利なシステムとして行くことが任務であると心得ております。

(加藤 輝雄)


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大型計算機共同利用研究公募のお知らせ

 宇宙科学研究所・PLAIN センターでは、全国共同利用研究の一貫として、本研究所が行っている科学衛星、ロケット、大気球による宇宙理学及び宇宙工学の研究と密接に関連する次の二分野で共同研究課題の公募を行います。

(1)宇宙科学観測の総合解析に関する共同研究

(2)数値シュミレーションに関する共同研究

 本研究所で利用できる計算機としては、MSP システムの GS8400/10N(汎用計算機)と UNIX システムの VPP 800/12(12並列ベクトル計算機)、DEC AlphaServer (高速スカラー計算機)があります。また、各大学の大型計算機センターを利用することも可能です。

 平成 14 年度の締め切りは、2 月 25 日(金)で、応募書類は既に各大学の事務室宛に送付しております。PDF ファイルを Web 上で提供することも検討中です。

 その他詳細については、下記にお問い合わせください。
 宇宙科学研究所・PLAIN センター 

 笠羽康正(Tel/Fax : 042-759-8405

E-mail:kasaba@stp.isas.ac.jp)

(笠羽 康正)


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大型計算機に関するお知らせ

1.2月・3月の計算機保守作業予定

 2月・3月の定期保守作業及び年度末処理は下記の通り予定しております。尚 3 月の VPP 800 の保守は年度末処理で一括して保守作業が予定されているので中止します。


2.大型計算機年度末処理について

 毎年行われている年度末処理を、今年は3月 30日(金)・3月31日(土)に予定しておりますのでよろしくお願いします。詳細スケジュール、内容については3月号でお知らせします。

3.スーパコンの VPP 800 は年度末処理に続けてソフトウェアのバージョンアップのため4月1日(日)も運休します。作業の詳細については 3 月号ニュースでお知らせします。


 M:システムメンテナンス


4.課題更新手続きについて

 現在利用されている課題の有効期限は、3月31日までとなっておりますので、次年度も引き続き利用される課題の更新手続きは、3月16日(金)までにお願いします。 課題申請用紙は 3 月2日(金)にお送りします。

(三浦 昭 )


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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