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第86号 2000年12月12日発行

目次


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国 際 研 究 会
"Astronomical Data Analysis Software & Systems X"
参 加 報 告

 表記研究会(以下、ADASS X)は、その名前の通り、天文学分野におけるソフトウェア開発に関連したテーマを扱う国際研究会である。毎年開催され、今回が第 10 回目の開催となる。今年はスミソニアン天文台 (SAO) の主催の下、 2000/11/ 12-15、アメリカ・マサチューセッツ州ボストンのホテル Swissohel で開催された。この会場は SAO やハーバード大学から地下鉄で数駅ほどの所である。参加者は全体で約 280 名、その 9 割は欧米からの参加者である。日本からの参加者は私を含めて 9 名、 日本人が筆頭発表者である発表は、 ポスター発表 4 件であった。私は ADASS には初の参加である。

 我々の発表は、PLAIN センターが国立天文台・天文学データ解析計算センターと共同で平成 10 年度から開発を進めている「多波長天文画像データ検索閲覧サービス(Multi-wavelength Astronomical Image Service On-line; 略称 MAISON)」の開発についてである。この開発は、平成 11 年度からは、科学技術振興事業団の「計算科学技術活用型特定研究開発推進事業」で認められた研究課題「宇宙科学データ解析の研究のためのバーチャル・センターの構築」(研究代表者・長瀬文昭教授)の研究計画の一つとして進められてきている。MAISON についての詳細は、例えば PLAIN センターニュース第72号を参照頂きたい。

 ポスター発表を行なえる期間は各ポスター 1 日間のみであり、我々の発表日は研究会の実質的初日である 13 日であった。 ちなみに 3 日間のポスター掲示数は、合計約 140 編であった。我々の発表内容がどの程度興味を惹いたかを評価することはなかなか難しいが、多くの参加者が足を止めて内容を読んでくれたように思う。質問はあまりされなかったが、分光観測を行った紫外線天文衛星 IUE のデータアーカイブ関係者は、「分光データを対象にすることはできないか」と興味を示していた。注目度の指標とはならないが、持参したポスターの A4 縮小版別刷 70 部はすべて持って行って頂くことができ、MAISON を世界の天文ソフトウェア開発のリーダー方に宣伝する機会としては、十分な成功であった。

 ADASS X の口頭発表セッション別のテーマとしては、バーチャル天文台(NVO)構想、教育活動や一般社会への啓蒙のためのシステム開発、様々な観測装置の制御・データ処理システム、大規模サーベイ観測、XML の天文への応用、などがあった。また、SAO が主催ということで、天文研究を紹介するセッションとしてアメリカの X 線天文衛星 Chandra の初期成果紹介のセッションがあった。NVO 構想は、当初はアメリカが国内の天文台や天文研究機関の天文データアーカイブシステムを計算機ネットワーク上で仮想的に統合することを意図した計画であったと認識しているが、現在はそれを世界規模のものへ拡大しようと呼びかけている。実現すれば世界の天文学研究への寄与は絶大なものとなる計画であるだけに、PLAIN センターや国立天文台のデータセンターも、今後この計画の動向を注視し、これへの参加体制についての議論を行なっていく必要が生じると思われる。XML を天文データの標準フォーマットとして今後開発に力を注いでいくべきか、という問題は、NVO の協力体制の議論と並んで、天文データアーカイブ分野で今後最も中心的な話題となる問題であろう。FITS フォーマットが極めて広く普及し、多くのソフトウェアがそれに基づいて開発されていること、そして FITS を定式化するためにこれまでに多くの天文学者の多大な努力が払われてきていること、などの理由から、XML を一朝一夕に FITS の代替フォーマットと認めることには少なからぬ抵抗があることは事実であり、今後更に議論が必要であろう。ソフトウェア開発とは関連しないセッションであるが、X線天文学研究を行なっている宇宙研に関連する内容として、Chandra の初期成果の発表はまさに圧巻であった。私の不勉強で X 線天文学の近年の動向をあまり良く理解していなかったが、可視光画像と同程度の秒以下の角分解能で映し出される M31 の中心部の X 線画像など見事なものばかりであった。アメリカの天文観測装置開発の底力に感嘆すると共に、ASCA に続いて宇宙研の天文衛星が新たな成果を生み出すことへの期待を新たにする研究発表内容であった。

(渡辺 大)


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大型計算機に関するお知らせ

1.大型計算機の12月・1月の保守作業予定


M:保守作業

(1) VPP800/12 の12月18日(月)に予定していた定期保守作業は中止にして、12月29日(金)の9:00からの集中保守作業の中で行います。 尚、12月28日9:00 SIMPLEX モード、18:00キュー停止になります。
(2)Alpha サーバは1月15日(月)9:00〜13:00に保守作業を行います。保守作業前に特に入力制限は行いませんので、各自で作業時間前までに終了する様入力してください。


2.大型計算機の年末・年始の運転スケジュール


M:保守作業

(1) 12月29日(金)22:00から1月4日(木)9:00の間の連続運転中はセンターオペレータが不在のため、システムダウンがあった場合1月4日9:00まで対応が出来ません。
(2) 注意 大型計算機関係の各サブステーション・オープンステーションは12月28日(木)17:00でクローズします。


3.計算機登録予算の移算締切りについて

 前年度と同様、今年度も下記日時で計算機登録予算の移算処理を締め切らせていただきます。

締切日 平成 12 年 12 月 22 日(金) 15:00
 尚、上記日時以後も予算追加は出来ますが、その追加予算は翌年度移算となりますので、配当が確実なものに限ってください。

(三浦 昭 )


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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