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第54号 1998年4月6日発行

目次


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宇宙運用システムの新技術
(第2回 パケットテレメトリの伝送方法)

 前回はパケットテレメトリという新しいテレメトリ伝送技術を紹介しました。今回はパケットテレメトリを使った場合のテレメトリ伝送方法の中身についてお話しします。

 パケットテレメトリでは、テレメトリをパケットという可変長の箱に入れて伝送しますが、一つのパケットには意味的にまとまったデータを入れます。例えば、ある時点でサンプルされたHKデータの集まりとか、画像の一ラインとかが一つのパケットに入れられます。

 パケットには共通の名札を付けます。この名札はヘッダと呼ばれます。ヘッダにはどこから出てきたデータかを表す識別子やパケットの順序番号などのデータを入れます。データの発生元の識別子は APID と呼ばれていますが、これは Application Process ID の略です。また、パケットのヘッダにはデータの発生時刻を付加することもあります。

 衛星と地上との間の無線回線においてパケットを伝送するときは、パケットをさらにフレームという固定長の箱の中に入れて送ります。これは信頼性の低い(すなわちビット誤りの多い)無線回線によって送られてきたデータに対して正しく同期を取ったりビット誤りを訂正したりするのに固定長のフレームを使うと便利だからです。パケットテレメトリで使われるフレームは、従来のテレメトリにおけるマイナーフレームと大体同じものです。

 パケットは可変長なのにフレームは固定長ですから、パケットの切れ目とフレームの切れ目はたいてい一致しませんし、一つのフレームに複数のパケットが入ったり、一つのパケットが複数の連続したフレームにまたがって入ったりすることもあります。

 フレームを衛星から地上に送るときに、いくつかの別々のフレームの列をまぜて送ることもできます。この場合の各々のフレーム列は仮想チャネルと呼ばれます。仮想チャネルの混ぜ方に一定の決まりはなく、そのときの判断で必要な仮想チャネルを送ることができます。例えば、一つの回線でリアルタイムデータと再生データを混ぜたい場合は、それぞれのデータを別々の仮想チャネルを使って送ります。この場合、リアルデータと再生データの混合比は自由に設定することができます。あるいは、大きな搭載機器に専用の仮想チャネルを割り当てるというような使い方もできます。それぞれの仮想チャネルには番号が割り当てられますが、これは VCID(Virtual Channel ID の略)と呼ばれます。

 パケットテレメトリのデータを使うときは、まず VCID と APID によってパケットの種別を指定し、得られたパケットの中から必要なデータを取り出すということになります。従来のテレメトリのようにフレーム番号とワード番号を指定するのとはかなり異なります。



(山田 隆弘)


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PLAIN センター運営委員会報告

 PLAIN センター運営委員会が、3 月 20 日に開かれました。当センターの関わるセンター計算機、ネットワーク、データベース、計算機共同利用研究、シンポジウムなどの活動・運営を所内外の16人の先生方および管理部の方2人から構成される委員により審議していただくのがその目的です。

 まず、センター計算機については、平成10年度末にスーパーコンピューター、その半年後にそれ以外の汎用計算機のリプレースが予定されています。今後の汎用のセンター計算機に関しては、衛星の実運用に現在使われている旧来システムの継承の問題がありますが、一方、低価格のワークステーションや PC の能力が最近大幅に上がってきており、中央の高速計算機の必要性が議論になりました。同様の問題は大学の計算機センターでもあるようで、貴重なご意見をいただきましたが、高速計算機サーバーをセンターに備えることの必要性はユーザーの問題でもあります。所内の計算機運営委員会でも議論されていますので、読者の皆さんからのご意見を本センターのスタッフあるいは運営委員の方々にお寄せいただきたいと思います。

 ネットワークについては、懸案の日米回線が学術情報センターの国際回線増強によってだいぶ緩和されたこと、また、衛星プロジェクトなどから要望のあった専用国際回線についても 6 Mbps の帯域が宇宙研パケットに専用的に割り当てられ、一息ついた感じがしました。

 データベースについては、サイエンスデータベース ( DARTS ) の稼動が始まり、工学データベース ( EDISON ) の検討も進み出したので、本センターのスタッフもだいぶ自信がついたようであります。しかし、将来の衛星、特に赤外線天体のサーベイ観測を行う計画の「 ASTRO-F 」などに対してはこれまでのやり方では対応不可能であり、現在検討中の「科学衛星データ解析研究センター」の構想が紹介されました。データセンター構想は学術会議の幾つかの研連(地球物理研連、天文研連、宇宙空間研連、等)でも検討されています。それぞれの検討の中で、データ処理物理学とも名付けるべき専門家集団とサービス業務的な研究支援体制の両方が必要なことは一致しているところですが、そのニュアンスは微妙に違っているように思います。今後、お互いに意思疎通を諮って協力しながら全体的に盛り上げていくことが肝要との指摘がありました。

 その他にも貴重なご意見を多数いただき、運営委員の先生方にはこの場を借りて感謝するとともに、今後ともよろしくお願い申し上げます。
(向井 利典)


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大型計算機に関するお知らせ

氈D大型計算機の 4 月・ 5 月の保守作業予定

※1M:システムメンテナンス
※2VX のクローズ処理を 8:00 から行いますので、それまでにジョブは終了してください。


.大型計算機 4 月・ 5 月連休の運転予定


。.システム.プログラムの相談窓口について

 システム.プログラムの相談窓口は、前年度も何回かお知らせしたとおり、原則としてSE高橋氏(内線2063)が受け、相談内容の切り分けにより各担当者が対応しますのでご協力お願いします。


「.大型計算機の手引書について

 大型計算機を利用するためのルール及び操作方法についての手引書がありますので希望される方は申し込んで下さい。

発行日
 1)計算機利用の手引 規則編(ネットワークの利用も含む)`98.3
 2)VPP 500 利用の手引 操作編`96.2
 3)計算機利用の手引 操作編 MSP`96.6
 4)計算機利用の手引 操作編 UNIX サーバ群`96.6

」.FMV 端末の貸出しについて

 研究室で FMV 端末の利用を希望されたい場合は向井委員長に申し込んでください。但し原則として 1 研究室 1 台の条件があります。又、年額 5 万円の経費負担が必要です。
(関口 豊)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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