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第51号 1998年1月8日発行

目次


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新年を迎えて

 明けましておめでとうございます。

 これまでも度々繰り返してきたことですが、情報革命の進行はますます加速度的に勢いを増している感があります。本年もスタッフ一同、全力を尽くす所存ですので、引き続きご協力・ご支援いただくようよろしくお願い申し上げます。

 昨年の当センターの活動を振り返ってみますと、ATM の導入と DARTS (Database for Archives of Telemetry Science data)の公開が大きなイベントでした。特に、これまでも本ニュースで宣伝しておりましたように、 DARTS 公開には力を注いできましたので、そのデータ公開が軌道に乗ってきたことにスタッフ一同自信を深めています。その売りは WWW を通したデータ検索・配信システムで、解析ソフトの公開と併せて宇宙研の計算機を用いてネットワーク上でデータ解析が可能なことです。これは従来の米国などのデータベース・システムにはなかった最新の機能で、公開を始めた「あすか」、「ようこう」の DARTS に国内の大学・研究所だけでなく、米国などの研究者からもインターネットを通して多数のアクセスがあります。本年には、引き続き「GEOTAIL」、「あけぼの」のデータについても DARTS システムを構築していく予定です。また、衛星の共通的な工学データベース( EDISON : Engineering Database for ISAS Spacecraft Operation Needs)についても検討を開始しました。

 近年、宇宙研の科学衛星が取得したデータはその質・量ともにそれぞれの分野で世界のトップレベルをいくものです。この貴重なデータを、衛星プロジェクト関係者だけでなく、一般研究者にも利用できるようなシステムを構築して欲しいという要望が国内外の宇宙科学の研究者から寄せられていました。もちろん、これは大学共同利用機関としての宇宙研の責務でもあります。上記の DARTS は、そのような要望に応えるべく、衛星プロジェクト側のデータ較正が終わり公開が許されたデータを引き取り、ユーザフレンドリーなデータベースを目指しています。今のところ研究用というのが主目的ですが、絵となった観測結果、例えば「ようこう」が観測した太陽の写真など、専門家以外の一般人が見てもけっこう楽しいものもあります。一度のぞいてみて下さい。

 折しも、新年早々の1月6日に行われた「システム計画研究会」では「宇宙科学と情報システム」がテーマに採り上げられました。そこでは、上記の DARTS の現状の他にも、インターネットを利用した現在の衛星運用計画立案、データ処理・解析システムと並んで、将来の衛星ミッションから要求される情報システムや一般への情報公開の問題点などが活発に議論されました。私が痛感したのは、将来の衛星が生み出すデータの質もさることながら、量の桁違いの増大です。例えば、ASTRO-F では1年間に百万個の星のカタログ作りを目指しており、いくら計算機やネットワークシステムが発達しても従来型の衛星プロジェクトの枠を大きくはみ出しそうです。また、数人でやってきた DARTS でも手に負えるものではありません。相当の人手、しかも、ある程度の専門知識を有する研究者の数が必要なことは目に見えています。同様なことは、多少の中味の違いがあるにせよ、他の衛星ミッションにもありそうです。今後は、いままでにないカテゴリーのデータ処理・解析の専門、例えば「データ処理物理学」とでも名付けられる分野を専門とする人が必要になってくるのではないかと思います。しかし、現実にスタッフの数を増やすことは容易ではありません。実際に人手が必要な時期は衛星打ち上げ後2〜3年までがピークで、その次には別の衛星ミッションの人が必要になってきます。そこでは、したがって、ポストの流動性というものが鍵を握ることになり、これは宇宙研だけで解決できる問題ではありません。現在の当センターの枠を大きく越えた新しい組織が必要になるでしょう。

 情報革命の進行はいまや大きな流れとなり、インターネットは一般社会でも不可欠となっていくでしょう。宇宙情報システムもこれからどのような様変わりを見せるか、これは我々自身がみんなで考えて作っていかねばなりません。今後ともよろしくお願いいたします。
(向井 利典)


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IACG 会議に参加して

 新年明けましておめでとうございます。本年も PLAIN センターニュースを御愛読賜わりますようお願いします。

 さて、私は昨年12月にモスクワで開催された IACG (Inter-Agency Consultive Group for Space Science) 会議に Data Archiving に関するワーキンググループ (WG3) 担当として参加する機会がありました。この会議は米・欧・日・露の主要宇宙科学研究機関 (NASA, ESA, ISAS, IKI) の代表者が集まって宇宙科学、宇宙開発の国際協力について話し合うもので、その下に3つのパネルと3つのワーキンググループが置かれています。WG3--Data Archiving Working Group (以下 DAWG と略す) は前年の IACG 会議で設立され、今回からスタートしたものです。会議は第1日目に各パネル・ワーキンググループ毎の分科会、第2、3日に全体会議が持たれました。 DAWG は当面各機関の長によって指名された Joe Bredekamp, Jim Green (NASA), Tevor Sanderson (ESA), Ravil Nazirov (IKI) と私によって構成され今回から活動を開始することになりました。 Joe Bredekamp がこのワーキンググループの座長ですが、今回は欠席であったので Jim Green が司会を代行しました。この DAWG の目的は科学データのアーカイヴィング活動の基本方針、標準化、手続きおよび実際の作業に関する勧告を行ない、IACG 傘下の関係機関が協力してその科学研究活動の組織化を促進することです。そしてこのグループは IACG の指導力の下で 関係機関傘下で作成されたアーカイブデータおよびその提供サービスを機関間相互に簡単にアクセス出来るよう各機関のデータアーカイビング活動を支援・促進することです。

 このワーキンググループは本来太陽・惑星間物理研究グループから派生したものですが、グループの使命としては宇宙空間科学全般にわたるデータアーカイブ活動を支援すること、各機関傘下のセンター等の活動状況を調査すること、既に活動しているデータセンター等との連絡を密にすること、各機関のデータベース構築を効率的に行なうために相互のデータ交換の促進をすることなどを当面の活動目標とすることを確認し合いました。そして、各機関からそれぞれ2、3名の委員にこのワーキンググループに参加してもらい、これらの委員で活動を始めることを、全体会議に提案しました。Jim Green は今年日本で開催される地球磁気圏国際研究会や COSPAR 総会の折りに集まれる委員で早速作業を始めようと張り切っていました。宇宙研では DARTS システムが完成し、一部「ようこう」や「あすか」のデータの公開を始めましたが、 GEOTAILの アーカイブデータの公開は国際的に強く望まれているので、今年はこれを PLAIN センターの最重要課題として取り組まねばならないと思います。      
(長瀬 文昭)


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平成9年度 宇宙科学企画情報解析センターシンポジウム

「スーパーコンピューティングと高速ネットワーク利用の現状と展望」プログラム

開催日:平成10年1月13日(火)
会場 :宇宙科学研究所 本館2階大会議場

【座長:星野 真弘(宇宙研)】 10:00〜12:00

10:00〜10:40 「スーパーコンピュータの現状と次世代への期待」 *荻野 竜樹(名大・STE研)

10:40〜11:00 「並列スーパーコンピュータで解く惑星間空間物理学」 中村 雅夫(名大・STE研)

11:00〜11:20 「遠隔可視化のための時系列三次元データ高効率転送」 長澤 幹夫(超高速ネットワーク・コンピュータ技術研究所)

11:20〜12:00 「神戸大学の新システムについて」 *松田 卓也(神戸大理・地球惑星)


昼休み (12:00〜13:00)


【座長:三浦 昭(宇宙研)】 13:00〜15:00

13:00〜13:40 「高エネルギー物理学実験におけるネットワーク利用」 *藤井 啓文(高エネルギー加速器研究機構)

13:40〜14:00 「NTからVX/2まで」 西川 進栄(千葉大工・機械工学)

14:00〜14:20 「サンプルリターンカプセルの空力加熱環境シミュレーション」 鈴木 宏二郎(東大工・航空宇宙)


14:20〜14:40 「形成期に惑星が獲得する自転角運動量の数値計算」 大槻 圭史(山形大理・情報処理センター)


14:40〜15:00 「モンテカルロ法による電子オーロラの解析」 恩田 邦藏(東理大基礎工)


休憩 (15:00〜15:20)

【座長:長瀬 文昭(宇宙研)】 15:20〜17:00

15:20〜15:40 「通総研の超高層大気観測マルチメディアバーチャルラボ計画について」 亘 慎一、加藤 久雄、五十嵐 喜良、巖本 巖(通総研)、小山 孝一郎(宇宙研)

15:40〜16:20 「スーパーコンピュティング環境としての高速ネットワーク」 *平木 敬(東大理・情報)


16:20〜17:00 「学術研究支援のための超高速ネットワーク」 *松方 純(学術情報センター)


講演時間15分+質疑応答時間5分
(*印は招待講演 講演時間30分+質疑応答時間10分)

(篠原 育)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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