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第39号 1997年1月20日発行

目次


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新年を迎えて

 新年、明けましておめでとうございます。

 これまでも度々繰り返してきましたように昨今の情報革命の進み具合には本当に目を見張る思いですが、当センターでもデータベースやネットワークの整備に向けてできるかぎりの努力をしてまいりました。インターネットの WWW 宇宙研ホームページも月間数万件の定常的なアクセスがあり、軌道に乗ってきました。昨年夏頃から特に力を注いできたのは、KSC内のLAN整備やその他の遠隔地にある宇宙研施設・観測所とのネットワーク接続と本格的な「科学衛星サイエンス・データベース」(DARTS;以下の記事参照)の構築です。なにぶんにも数少ないスタッフと予算でこれら全てをこなすには限度があり、未だ完成というまでには至っておりませんが、これらがなんとか機能する状態にまで漕ぎ着けたのは多くの方々のご協力のおかげです。ありがとうございました。本年もスタッフ一同、全力を尽くす所存ですので、引き続きご協力・ご支援いただくようよろしくお願い申し上げます。

 今年の2月にはいよいよM−V初号機の 打ち上げがあります。無事成功することを祈るとともに、今後の科学衛星からもたらされる桁違いに増大するデータに対するデータベース構築に対する対策も間近に迫ってきた感があります。一次データベースとしての SIRIUSはもとよりサイエンス・データベースに関しては、組織的にも予算的にも抜本的な対策が必要です。内外のご意見を参考に具体的方策を練っていきたいと考えていますので、よろしくお願い申しあげます。
(向井 利典)


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DARTS(科学衛星サイエンス・データベース)公開に向けて

 近年、宇宙研の科学観測衛星の取得したデータは、観測物理量の質の向上だけでなくデータ量も著しく増加しております。そのため、国内外の宇宙科学の研究者より、この貴重なデータを一般研究者にも利用できるようなデータベースを構築して欲しいという要望が強くなってきています。これを受けて宇宙研PLAINセンターでは、約1年程前から本格的に科学衛星サイエンスデータベース 「 DARTS」(Database for ARchives of Telemetory Science data)の構築を行ってきましたが、ようやく平成9年春より一部公開出来るところまで漕ぎ着けました。ここに、 DARTS公開に向けてその概要をお知らせします。

DARTSの特徴:

* 一般公開された宇宙研の科学衛星観測 データベース
* WWWを通したデータ検索・配信
* ネットワーク上でのデータ解析
* 解析ソフトの公開

 基本構成は、データ検索・配信計算機とデータ解析計算機の2台からなり、1)データ・アーカイブ装置として 4.8 TBの VHS テープライブラリ(ドライブ数: 8台、転送速度: 1 ドライブ当たり 2 MB、テープ交換時間: 最大 20 秒)、ダスト領域として 36 GB のハードディスクがデータ検索・配信ワークステーション配下にあり、また、2)データ解析を行う場合は、所内のデータ解析計算機(DECα8200/4)も利用できるようになっています。一般利用者は、WWWでデータ検索を行った後、各利用者の手元のワークステーションにデータを配信することも、また所内のデータ解析計算機にデータを転送することもでき、さらにデータ解析計算機上で可視化を含んだデータ解析がネットワーク上で容易に出来るようになっています。

 現在、基本システムの各モジュールの構築が終わり、また衛星データの登録作業も順調に進んでおり(本当はここまで来るのに色々苦労話もありますが)、平成9年春より科学衛星「ようこう」「あすか」のデータベースの試験公開ができる予定です。平成9年度中には一般公開されているデータのほとんどを登録できると思われます。より使いやすいスマートなデータベース・システム構築には、各衛星プロジェクト・チームはもとより一般利用者からの御意見が大切だと思われます。

 なお、今回は DARTS システムの基本的な構造について以下に説明します。使用法の詳細については今後のニュースで順次お知らせする予定です。この DARTS をより良いデータアーカイブシステムにするため、今後とも皆様のご協力をお願いいたします。
(星野 真弘)


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DARTS データ検索システム

 「あすか」などの天文観測衛星のデータを検索する場合、衛星を選び(現在はX線天文衛星の「あすか」と「ぎんが」のみ)、天体名または天体の座標を入れて検索を行ないます(図1)。



図1 検索画面

入力された天体名は、後述のネームリゾルバーにより、赤道座標(J2000)に変換され、その座標を用いてデータを検索します。これにより、観測時に目標とし、観測データベースに登録されている天体だけでなく、観測の視野に入った全ての天体の検索が可能となります。また、月や彗星など、座標が確定しない天体のデータも検索出来るように、天体名で直接検索する事も可能です。

 データ検索は、天体名や座標以外にも、観測時期や観測の主提案者により行なうこともが出来ます。また、「あすか」に関しては、公募観測のサイクル、活動銀河核や銀河団などカテゴリーでも検索可能です。

   ネームリゾルバーは、国立天文台のデータ解析センターの協力を得て独自に開発しました。現在、登録されているカタログが少ない事から、広範囲の天体名には対応していませんが、今後、より多くの天体カタログを登録することにより、多くの天体に対応できるはずです。このようなカタログの不備などにより、座標に変換できなかった場合は、選ばれた衛星の観測データベースに登録されている天体名からデータ検索を行ないますので、カタログの不備により、登録されているはずのデータが検索できないという事もありません。また、このネームリゾルバーを用いて、天体名や任意の座標系での座標から、1950, 2000 年分点での赤道座標と銀河座標を得る事も出来ます。

 データの検索は、各衛星毎の観測テーブルなどを元にしたデータベースに対して行なわれます。「あすか」においては、プロポーザルテーブル、観測結果を記したテーブル、データの公開日を記したテーブルより、検索条件に合うデータが選び出され、各観測毎にその概要が表示されます(図2)。
 

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データ転送の本文へ戻る

図2 検索結果

利用者は、公開されたデータについては、利用可能な種々のデータ(ファイル)の一覧を得ることが出来ます。そして、利用者は、その中で必要なものを FTP で各自の WS に転送したり、DEC 8200 でオンライン解析を行なうことになります。

 「ようこう」のデータは、データが週別に各ディレクトリに保存されている事もあり、観測日時によりデータを検索します。そして、対応する期間のデータが表示されます。その後の処理は、上記の天文データベースの処理と同じです。2月には、米の「ようこう」データベースの管理者と会合を持ち、さらに利用しやすい検索システムを導入する予定です。

 以上のように、DARTS のデータ検索システムは、ネームリゾルバーを備え、他のデータベースにはない幾つかの機能をそなえた本格的なものです。また、リレーショナルデータベースの仕様も確立しており、あらゆるタイプのデータ(複数のテーブル)に対して検索が可能であり、今後の拡張性に富んでいます。
(根来 均)


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DARTS データ転送・解析システム

 ファイル転送は大きく分けて2通りの方法があります。一つは FTP サービスです。普通の FTP サイトにアクセスする要領で DARTS のFTPサーバを利用できますので、例えば「ようこう」のデータのように、目的のファイルがどのディレクトリに納められているか予め見当が付いている場合に便利です。

 もう一つの方法は、データ検索システムの結果を元にしてファイル転送を行なうものです。一般に公開されているデータには、図2のように、検索結果の中に転送用のボタンが表示されます。ここで転送したいデータを選ぶと確認用のページが表示されます。ここでは、転送したいデータの確認をしたり、転送の方法を選択したりできます。また、予めデータ解析計算機のユーザ登録(後述)を済ませている利用者は、選択したデータを各自のユーザディレクトリにコピーして解析することもできます。

 データ解析計算機にユーザ登録すると、短期間(1週間程度)有効のアカウントとそのアカウント用のユーザディレクトリが発行されます。また解析システム上には解析用のソフトが提供されていますので、利用者は自分で解析ソフトを用意することなく、発行されたアカウントを用いてDARTSシステム上のデータの基本的な解析ができるようになります。ユーザディレクトリに蓄えられたデータは、WWWの画面を用いて、ファイル操作や利用者の計算機への転送等ができます。
(三浦 昭)

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図3 ユーザ登録画面


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図4 DARTS システム構成


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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