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第10号 1994年7月13日発行

目次


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スーパーコンピュータとベクトル並列計算
第5回  並列(パラレル)計算機の登場

 すこし話が横道にそれますが、興味のある方もいらっしゃるでしょうから、これから2回にわたって計算機の動向についてお話ししてみましょう。前回お話ししたように、これまでのスーパーコンピュータ、特に国内メーカーのものは第1回の説明(b)のバケツリレー、すなわちパイプライン処理を利用することで高速化を図ってきました。しかし、それには限界があります。そこで、各プロセッサがバケツを持って消火作業をする、並列処理型の計算機が登場してきました。実用的なスーパーコンピュータの世界ではCRAYに代表される複数のプロセッサがメモリーを共有する方式(TCMP:Tightly Coupled Multi Processor)が最初に登場しました。前回までのベクトル処理を行うプロセッサを複数持つものです。この方式では多数に利用者がいる場合は各プロセッサを単独に、また、性能を出したい利用者は複数のプロセッサを(並列プログラミングすることで)同時に利用することができます。これからはスーパーコンピュータの世界も並列型のものに移行していきます。最近では、国産の日立、NECの最新鋭の機種は、複数のプロセッサがメモリーを共有するこの方式を採用しています。例えば、東大には8GFLOPSのプロセッサ4つから構成される日立3800/480が設置されています。しかし、この方式では、プロセッサの数を増やすことに限界があります。せいぜい16台程度(CRAYが計画しているTritonという開発機では32台がこの方式で並列化されるそうです)といわれていますから、単一プロセッサの10-20倍程度の性能しかでません。

 そこで登場してきたのが超並列型(MPP:Massively Paralell Processors)の計算機です。ほとんどのものが分散メモリー、すなわち、各プロセッサに比較的小さなメモリーが分散してついています。代表的な例はIntel社のIPSC, Paragon, Thinking Machines社のCM-2, CM-5そしてCRAY社のT3Dなどでしょう。さらに最近注目を浴びているのがPower chip を利用したIBMのSP-2です。MPPでは1つ1つのプロセッサ(PE:Processing Element)はスカラー演算機を利用していますからせいぜい50から100MFLOPS程度の性能でしかありません。しかし、ワークステーションやパソコンに利用されているものと基本的に同じものですから、安価ですし、スカラー演算器ですからベクトル化を心配する必要もありません。そしてこれを数百から数千個つなぐと、形式上では簡単に数十から数百GFLOPSの計算機ができあがります。しかし、現実はそんなに甘くはありません。次回はこのあたりとVPPとの話をしたいと思います。
(藤井 孝藏) 


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衛星運用と計算機(最終回)

 前回までは衛星テレメータデータの流れにそって,使用している計算機を見てきました。最後の今回はコマンドデータ系、軌道データ系についてです。

)コマンドデータ系
 コマンドデータ系には、衛星に対して送る予定のコマンド計画と、送出を終了したコマンド履歴と呼ばれる二種類のデータがあります。

 コマンド計画は相模原のM770/10#1(以下#1と略)に集められ、臼田内之浦各局の衛星管制設備に送られます。コマンド履歴は逆に局の衛星管制設備から#1に転送され、衛星が産まれてから死ぬまで送られた全てのコマンドが#1で保管されます。ここまでは「あけぼの」「ようこう」「あすか」「GEOTAIL」の各衛星に共通です。しかし、コマンド計画は#1で作られるのではなく、M770/10#2や衛星プロジェクトのワークステーションで作成され、#1に送られます。そのルートは衛星プロジェクトによって異なります。また、コマンド履歴データも#1から流れる先はそれぞれ異なりますので、詳細は、このPLAINセンターニュースで連載が予定されている「衛星をどのように運用しているのか(仮)」という企画で述べていただくことにしましょう。なお、MUSESーB運用システムはおもにワークステーションで構成されるため、#1の役割はUNIXファイルサーバが務めることになります。

 ここで、衛星管制設備のもつ機能を列記しておきます。
 a.
コマンド計画編集、
 b.
コマンド送出照合、
 c.
衛星状態監視(QL、入消感チェック)、
 d.
データ送受信(計画、履歴、局間通信)、
 e.
システム管理(各入出力、スイッチ、データ定義などの管理など)



。)軌道データ系
 「GEOTAIL」の軌道決定は宇宙研が行い、「あけぼの」「ようこう」「あすか」のそれはがするという違いはありますが、軌道データ系として扱うデータは軌道6要素(確定、DS用、南極用)、追跡データ(R&RR、アンテナ角度など)、アンテナ予報値、長期可視にまとめられます。その流れの系統を図2に示します。

 内之浦局で発生した「あけぼの」(10m系)、「ようこう」「あすか」(20m系)の追跡データは相模原のライン管制設備を経由して、NASDA(筑波)に送られると同時に#1に蓄積され1カ月は保管されます。この保管期間はNASDAと宇宙研との取り決めによるもので、1カ月前の追跡データをもう一度送り直すようにNASDAから要望されればそれに答えなければなりません(実際にはそのような事は起きませんでしたが)。このような場合は#1から再送しますが、それぞれの設備でも数日間のデータを蓄積しておりそこからの再送で対処しているのが実情です。一方、NASDAから提供される軌道要素、アンテナ予報値もライン管制を経由して、KSCの軌道データ管制設備、集中監視設備と#1に転送されます。

<おわりに>
 いつも原稿が〆切まぎわになりご迷惑をおかけした河田さんに、そして連載中に心あたたまる助言をいただいた上杉教授にこの場を借りてお礼申し上げます。
(周東 晃四郎)


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大型計算機に関するお知らせ

大型計算機の7月・8月の保守作業予定

M:システムメンテナンス

以上を予定しておりますので、よろしくお願いします。
(関口 豊)


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
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