No.227
2000.2

M-V-4/ASTRO-Eの打上げ失敗について
ISASニュース 2000.2 No.227

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 2000年2月10日(木)午前10時30分に,鹿児島宇宙空間観測所から打ち上げられたM-Vロケット4号機は,第1段モータの燃焼中に生じた異状により,X線天文衛星ASTRO-Eを所定の軌道に投入することができませんでした。

 ロケットは第1段の点火後,予定された飛翔経路に沿って順調に飛行をつづけておりましたが,打上げ後41.5秒第1段モータの内圧が急激に低下し,同55秒に大きな姿勢の乱れが発生して軌道が予定より高くなり,第1段燃え終わりの速度が計画を下回りました。

 その後第2段第3段は,内之浦の地上局から誘導指令電波を送り,第1段の速度不足を補うために懸命の努力をしましたが,十分に回復することができず,ついにASTRO-E衛星を所定の軌道に投入することができませんでした。

 現在,所外の専門家を含む「M-V-4号機調査特別委員会」を設置し,詳細な調査と徹底的な原因究明及び今後の対策についての検討を開始しています。

 すでに国内外の多くの人々から,同情と激励の手紙が届いています。とりわけ有り難いのは,ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の科学計画局長ロジェ・ボネ博士から
1999年12月に打ち上げたヨーロッパの線天文衛星(XMM‐ニュートン)の観測時間の一部を日本の研究者に使って頂きたい」という涙の出るような申し出があったことです。これは日本の線天文学の高いレベルに対する最高の敬意であると考えます。

 日本の線天文学とそれを支えるロケット・グループは,1976年の「コルサ」衛星の打上げ失敗にもめげず,不死鳥のように再起し,わずか3年で「はくちょう」(1979年)によって雪辱を果たした歴史を持っています。以来,常に世界の線天文学をリードし,アメリカ・ヨーロッパ・ロシアの国々の科学者とともに宇宙の謎に挑戦しつづけてきています。

 世界の科学者は,互いにライバルであると同時に,宇宙の謎を解く事業における同志でもあります。ボネ博士の提案のような暖かい申し出は,こうした科学者同士の固い団結と高い連帯の精神の発露です。

 ISASニュース編集委員会は,今回の打上げ失敗が宇宙科学研究所の甦りの契機になることを心から期待しています。


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