No.220 |
ISASニュース 1999.7 No.220 |
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話の中心は,「最近のNASAは先端技術開発に非常に力を入れており,本当に驚くばかりだ。今,日本は従来の(技術的)財産を食い潰して何とかやっているが,このままだと益々差がついてしまう。NASAを始めとする外国は宇宙(科学)にとって協力者でも勿論あるが,競争相手でもある。もうISASだNASDAだなんて云々している時ではないと思う。そのためには,NASAなどと比べ資金・マンパワーに限りがあるから,総花的でない重点主義的なシナリオを協力して作っていく必要がある」という主旨の危機感を含んだものでした。宇宙に携わる人の特性として「心意気は少年,行動は老練な政治家」が必要であるとの持論を持っていますが,少年のように真摯(しんし)に日本の宇宙の行く末を憂う先生方との会話は涼風にも似たさわやかさを与えてくれました。
その時,普通なら苦笑を誘う話を旧海軍航空隊にいた親父から聞いたことを思い出しました。「海軍と陸軍とは仲が悪く,強力すぎる連合軍との負け戦の中でも,喧嘩しないように,軍事予算を半々にし,アルミなどの航空機資源も半々に分けるというお粗末なことをした。また,少なくとも同じ会社内ならば海軍機と陸軍機は部品や運用方式を規格化すべきなのに,別会社のような感があった。どっちが敵なのか判らないような縄張り争い的な戦い方であり,敗戦直前に協力しようとしたが既に遅く,負けて当然だったと云える」この古い話を笑える人は我々の中で何人いるでしょう。
ところで,月探査のための周回衛星(SELENE)の開発をISAS/NASDA共同プロジェクトとして現在実施しています。正直言って,従来の両者の関係は必ずしもスムーズなものではなかったことは多くの人が知っています。しかし,このプロジェクトが本格的に始まって約3年が過ぎましたが,手前味噌的ながらNASDA側のまとめ役である私から観て,お互い楽しくやってきています。少なくとも不愉快な思いをしたことは一度もありません。これは,次の理由によると云えます。
(1) お互いが築き上げてきた文化(方法)を押し付けるのではなく尊重し,要は「形式的でない効率的・合理的なもの作り」を目指し,両者の文化の融合・発展を構築するように努めている。
(2) 「金は天下の回りもの」と考え,お金の出し方で発言や権利などを制約せず,参加者は組織を極力意識せず,チームの一員として行動するように努力している。
(3) 特に,科学ミッション機器については,従来の方法(PIをリーダとした実験物理屋的な方法)を基本とし,今までのモラルを維持するよう留意している。
(4) 要はチームを構成する人が決め手である。ISASの鶴田・水谷・中谷・佐々木の諸先生方を始めとする皆さんの人柄と高い見識に負うところが多い。
ところが,「今は初期段階だから問題ないが,何時かは喧嘩をするに決まっている」とか「烏合(うごう)の衆の集まりだからプロジェクトは失敗するだろう」,「相手のやり方に毒されてしまい,操(みさお)を売ってしまっている」などの声をチーム以外の人達から聞くことがあります。彼等が心配してくれていることも解りますし,謙虚にその意見を聞きたいと思いますが,どうか温かい眼差(まなざ)しで見守って頂くこともお願いいたします。今後,省庁合併などの問題からもISAS/NASDAの関係は様々に議論されていくでしょうが,このSELENE計画の成否は,これからの両機関の付き合いの雛形(ひながた)の一つになると信じており,チーム一同楽しく頑張りたいと思います。
(ながしま・りゅういち)
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