No.291
2005.6

ISASニュース 2005.6 No.291

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ウィーンの国際学会に参加して リフレッシュ! 

宇宙プラズマ研究系 高 島 健  

 オーストリアで行われるEGU(European Geophysical Union)学会に,水星探査衛星(MMO)に搭載する高エネルギー粒子検出器の発表で参加することとなった。ポスター発表の代打ではあるが,初めて訪れる国なので,二つ返事でOKした。


ログスケールの地図を片手に

 オーストリアの空港に着いて,無事に入国。空港から列車と地下鉄を乗り継いで,宿泊先のホテルがある駅に到着。ホテルのホームページにあった“地図”を片手にホテルへ向かう。航空機での運動不足解消に散歩も兼ねて,とゆっくり歩いていった。人通りも少なく,ゆったりと市街地見物。古いヨーロッパ風建築物やドナウ運河を眺め,忙しい日本での生活を忘れ,ゆっくりとした時間の流れに包まれ,心休まるひとときを過ごすことができた。

 が,ホテルは見当たらず。ウィーンの街に日暮れが訪れ,多少焦り始める。ホテルの住所を確認して,観光ガイドブックを開いてみる。ホームページにあった“地図”が,ホテルを中心とするログスケールで描かれていることに頭を抱えた。その後,どうにか無事,ホテルにチェックイン。

 翌朝は,地下鉄を3駅ほどで,8時過ぎに学会会場へ到着。会場では,すでに多くの人々が受付のために長蛇の列を作っていた。その長蛇の列を乗り切って講演会場へ。最近の学会ではパラレルセッションが多く,興味のある講演が複数の部屋に分かれて行われることが多い。プログラムをチェックして,その日のスケジュールを組み,移動・移動・移動。移動時間と講演を聞いている時間の割合に疑問を覚えながらも,エキサイティングな講演を楽しく回った。

EGUの会場となったウィーン市民会館の入り口

両面テープと呼び出しメモ

 3日目,いよいよポスター発表。8時30分からの2時間がコアタイム。聴衆はこんなに朝早く本当に来るのか? という心配を抱きながらポスター会場へ。移動時の利便性を考えてA4でポスターを作成したことを,会場で後悔することになった。ポスターパネルへの掲示が,ピンではなく両面テープ。それも,会場係が気を利かせて一生懸命,両面テープを3cmぐらいに切ってテーブルの端に並べている。会場ではA0ポスターが90%を超え,1人当たり4〜6個のテープを持っていってポスターを掲示している。私は,テープを切る人と会話を交わすほど仲良くなれた(1回にすべての指にテープを付けて,それを3回もやれば話題の中心。笑顔もこぼれる)。

 9時を過ぎて聴衆も増えてきて,ポスター本番の雰囲気に。コーヒーをもらいに席を外して戻ってくると,ポスター掲示の真ん中にメモの紙が貼ってある。熱心な聴衆が質問を置いていったと思い込み,ちょっとうれしく思いながらメモを眺める。“投稿料を払ってないから,このままだとはがすよ。受付に来てね。”という内容。コーヒーの力を借りることなく,時差ぼけの頭はすっきり。慌てて受付へ向かう。向かう途中,今回の申込者である立教大のH助教授に心の中で嘆く。“払っておいてくれるか,払うように教えてくれー!”。

 投稿料を無事に払い込み,ポスターをはがされる事態は避けられた。その後は,複数の人と議論ができて,充実感をもってポスター掲示を終了した。


生活の一部としての絵画

 発表も終わり,学会の空き時間を使って美術館と街の散策に出掛ける。どの美術館もフレスコを中心とする宗教画が多く,美術館に作品を集めたというよりは,フレスコ画のある場所が美術館になったという雰囲気。日常生活の中に溶け込んだウィーンの美術館と,収集した作品だけが展示されている日本の美術館との違いをあらためて感じた。生活の一部として絵画が存在していることが,うらやましく思える。

 学会開催地のおいしい食べ物を味わえることも,国際学会に参加する楽しみである。ウィーンのザッハトルテを味わい,わずかな酸味とチョコレートの甘さに満足。学会に子育てのため参加できなかった奥さんへの感謝と罪滅ぼしに,ザッハトルテをお土産に買って観光は終了。学会も終了し,議論した内容のメモ整理や送付を頼まれたポスターのファイルを編集しながら,帰路に就いた。

(たかしま・たけし) 


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