AOGS(Asia Oceania Geosciences Society)という新しい学会の年会が,7月5日から9日までの日程でシンガポールにおいて開催された。51の国と地域から1100人の地球惑星科学研究者が出席し,7つのセッション(Nonlinear Geophysics,Natural Hazards,Biogeoscience,Interdisciplinary Working Group, Planetary Science, Solid Earth, Ocean & Atmospheres)で約1100の講演があった。
主催者のデータによると,研究者の構成は70%がアジア・オセアニアからで,ヨーロッパから13%,アメリカ合衆国・カナダから16%であった。もちろんこれは全体での割合であって,セッションによっては大きく構成が異なっていた。筆者の出席したPlanetary Scienceの探査を中心としたセッションでは,ヨーロッパと日本が半々で,ほかの地域はパラパラという状態であった。月探査では中国とインドが間もなく新規参入を果たしそうな勢いであり,今回の会議での講演が期待されたが,両国とも見送りであった。計画担当者としては中国からの1人の参加があったのみで,インドからの参加はなかった。
数ある国際会議の中で
2週間後パリで開かれたCOSPAR(Committee on Space Research)では,インドの月探査計画の詳細が公表され,ヨーロッパの研究者による複数の観測機器の搭載も検討されていた。今年の11月にインドで開催されるILC-6(6th International Lunar Conference)を前に,公表に踏み切るサプライズの場所としてCOSPARを優先させたのであろう。国際社会への参加により秘密は保てなくなる。中国の月探査の詳細の公表はまだであるが,インドを強く意識しているので公表に踏み切る日は近いであろう。研究者間の議論や研究協力に早くさらされることを期待したい。
AOGSは,来年6月に今回と同じ会場で第2回年会の開催が予定されている。また,EGU(European Geoscience Union)年会が4月にウィーンで開催される。参加者の構成は異なっているものの,セッション構成は同じである。新規のAOGSはEGUの規模を小さくしただけのようにも見える。同様の会議にWPGM(Western Pacific Geophysical Meeting)というAGU(American Geophysical Union)の分科会がある。今年も8月にホノルルで開かれ,約1000件の講演があった。8月16日から20日という時期の悪さもあるが,筆者の周りで出席者はない。
研究の動向は時間的に変化し,興味やメリットも変化していくので会議への対応も変わっていくのは当然であるが,意識と覚悟を持って会議に参加していくことが必要であろう。この点で,ヨーロッパの研究者のしたたかさは目をみはるものがある。覚悟のほどは分からないが,意識ははっきりしている。
冷房の国シンガポール
北緯1度という赤道直下のシンガポールは太陽が真上にあり,やはり暑い。日本も暑かったが,もっと蒸し暑い。ホテルの部屋のクーラーは動きっ放しである。ホテルから会場のサンテック国際会議場へは徒歩で20分。会議場がある高層ビル群が間近に見えるので歩き始めた。すぐに後悔することに。汗だくである。一歩会場のビルに入るとひんやり,冷房が極めてよく効いており,軽装では寒いくらいになる。ガイドブックにある「冷房注意」は,うそではない。温度設定が22度になっていて正(盛)装でも過ごせる。この会場はピカピカのビル群から成る巨大モールの中にある(写真の中央が会議場)。