衛星の中を常に一定の温度にするため,衛星にはラジエターが付いていて,機器が発する熱を排出しています。今までのラジエターは,熱をできるだけ多く排出するようになっているため,温度が高いときだけでなく,低いときも熱を排出していました。温度が低くなり過ぎると電気ヒーターで温めるのですが,そのときでさえ,ラジエターから熱を排出していたのです。これでは電気がもったいないでしょう。
SRDの材料は,ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持ったマンガン酸化物です。温度が高いときは電気抵抗が大きく,低いときは小さいという特徴があります。電気抵抗が大きいと輻射(ふくしゃ)率が大きく,つまり熱をたくさん排出することから,ラジエターに使えるのではないかと考えたのです。この材料を宇宙で使ったのは,私たちが世界で初めてです。シンプルな構造のSRDは,有望な新型ラジエターとして海外からも注目されています。
SRDを実用化するには,もう少し性能を高める必要があります。温度が高いときと低いときで熱の排出量の差が大きく,さらに,ある温度を境に急激に変化するものが,理想的なラジエターです。そのために,いろいろな材料を合成して特性を調べています。軽量化にも取り組んでいます。小型衛星INDEXへの搭載は決まっていますが,ほかの衛星にもぜひ使ってほしいと打診しているところです。