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松尾弘毅所長が宇宙開発委員会へ


 2000年1月以来宇宙科学研究所の所長として私たちを率いてくださった松尾弘毅所長が,さる4月6日付けで本研究所の所長を退任され,4月8日に宇宙開発委員に着任されました。1962年4月に当時六本木にあった東京大学生産技術研究所の糸川英夫先生の門をたたかれてから40年の長きにわたったロケットの現場から,感慨に浸るまもなく去られる慌しさでした。

 松尾弘毅所長は,1939年2月18日に満州でお生まれになりました。大学院時代に,糸川先生の指示のもとで秋葉鐐二郎,長友信人両先生と書かれた『人工衛星計画試案』は,日本最初の人工衛星「おおすみ」を生み出す理論的先駆けをなした文献で,いかにお若いうちから日本のロケット開発の中枢的役割を果たされていたかを物語るものです。軌道工学とそれをベースにした宇宙システム工学を専攻され,常にミュー・ロケットの開発とわが国の科学衛星計画のリーダーシップをとって頂きました。

 もちろん1964年に宇宙航空研究所が創設されると駒場に移られ,1981年には宇宙科学研究所への移行と運命をともにされました。きらびやかなご経歴のどれをご紹介すればいいのか迷うほどですが,宇宙科学研究所や東京大学(併任)の教授という「本職」はともかくとして,着任された公職は数知れず,たとえば,旧文部省の科学官(1986−1994),宇宙開発事業団の理事(1992−2000),宇宙科学研究所副所長(1996−2000),国際宇宙航行連盟IAF副会長(1996−1998),日本航空宇宙学会会長(1997−1998),国際宇宙航行アカデミーIAA評議員(1999−),日本ロケット協会会長(2000−2002),学術会議会員(2000−),国際宇宙大学アドバイザー(2000−),国際宇宙航行アカデミーIAA副会長(2001−)と並べると,まぶしくなるほどです。

 このような役職は,ご本人にとって無数の思い出の発信源でもありましょうが,私たちにとっては,松尾先生は常にミュー・ロケットのリーダーであり,ともにハレー彗星や火星・金星を夢見た懐かしくも偉大な先輩であり,宇宙科学研究所の野球チームのエース・ピッチャーであります。次号に先生ご自身の「さよなら」とどなたかの「送る言葉」を掲載させていただくことになりますが,とりあえずご一報いたします。

(的川泰宣) 

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KM-V1 SIM大気燃焼試験

 国内初の月探査機「LUNAR-A」(ルナ)を打ち上げるM-V型ロケットのキックモータ燃焼試験が2003年3月11日,能代ロケット実験場において行われました。

 ルナ2004年度以降に打ち上げが予定されています。実験ではルナを月遷移軌道に投入する動力となるキックモータKM-V1のノズルスロート部の耐熱性などを調べました。

 2000年2月M-V型ロケット4号機の打ち上げ失敗が1段モータのノズルスロート部の破損が主原因だったことを踏まえ,宇宙科学研究所では,スロート部の材質を従来のグラファイト材から熱構造強度の高い次元織りカーボン・カーボン複合材に改良する研究が進められてきました。今回の試験は同型ロケット2号機に関する最終試験となりました。

 当日の気温は0度。曇り空に時々雪の舞うような天気でした。高校入試の時刻に配慮して午後4時30分に点火時刻を設定しました。寒い中を約50名の市民が見守ってくださる中カウントダウンが進みました。点火のアナウンスと共にモータはやや緩やかにごう音とオレンジ色のせん光を発して,もうもうと白煙を噴き上げながら,約1.3トンの推進薬を約90秒間燃焼させました。

 試験は順調で,計測されたスロートの焼失率は予測と良く一致し,材料の熱構造安定性も良好であり,所期の目的を達成することができました。関係各機関ならびに能代市浅内をはじめ地元の方々のご支援に感謝いたします。

(嶋田 徹) 


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再使用ロケット実験機・第5次地上燃焼試験

 2001年6月に第回の離着陸実験をやってから早くも1年半以上が経ちました。この間は極低温燃料タンクの複合材化やこの複合材タンクのヘルスモニタを目指した光を用いたひずみ計測,さらには機関連携運営本部の仕事としてエンジンの高耐久性を目指した電鋳製造によるインジェクタなどの新しい要素の基礎研究を宇宙研の外へと研究サークルを広げながら行ってきました。今回の実験ではこれらの成果を採り入れた形で次の飛行実験を行うべく,再び飛翔形態のシステムを組み上げてエンジン燃焼実験を行いました。機体は飛行範囲を拡大して繰り返し飛行の実験をするため上記の新しい研究成果に加えて軽量化や搭載機器の更新なども施されています。冬と春の天気の変わり目に翻弄されながら,まだ残る冷たい風やアラレの舞う中,年度末の後ろなしの実験でしたが合計6回の燃焼実験を計画通り行い,次の離着陸実験に向けたデータ取得と機能確認ができました。複合材タンクに水素を入れてエンジンに火をつけたのは勿論はじめてでしたが何とかしのげました。

「おーい,液体酸素行くぞ,志田君は
「今 電話してます」

 タンクに液体水素を充填してから酸素を注文していた志田君,スタンド点の寒さをため息で本部にアピールしていた徳留君,工場で指令電話を切らずに作業して存在を知らせ続けた鈴木君,タンクの水素漏れと格闘した竹内君,終始デレデレしていた(アツアツの)餅原君,あらゆる事の世話にかり出されるエンジン班の皆さん,何でもすぐ作るスタンド班の皆さん,ご苦労様でした。これから6月末に再び飛ばすための準備にかかります。

(稲谷 芳文) 


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LUNAR-Aプロジェクト

 LUNAR-Aプロジェクトは,2004年度以降の打上げを目指して,ペネトレータ搭載通信系の調整等を進めている。本年5月には,改修型月震計の耐衝撃性を確認するための貫入試験がアメリカで実施される。また,初秋には,通信系の総合試験が,能代実験場の特設ドームで実施される予定である。前回は,縮尺モデルを用いたアンテナの試験であったが,今回は,フライトモデル相当のペネトレータを使用して,全機テストが行われる。

 このペネトレータは,通信系試験終了後,最終的な貫入試験(QT)に供され,その結果を見て,実際にLUNAR-A宇宙機に搭載されるペネトレータのポッティングが行われることになっている。

 母船の総合試験は,今秋からの再開を計画しており,久しぶりにプロジェクト全メンバーの顔が揃うことになる。スケジュールに関しては,余裕があるとはとても言えない状況ではあるが,プロジェクトメンバーの協力を得て,是非とも打上げまで持って行きたいと考えている。

(中島 俊) 

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ASTRO-F頭胴部噛み合わせ

 宇宙赤外線望遠鏡「IRTS」に次いで,赤外線観測を目的とした科学衛星「ASTRO-F」の頭胴部噛み合わせがIHIエアロスペース富岡工場に於いて行われました。これは,ロケット「M-V型6号機」と衛星との機械的インターフェースについて,設計通りであるかを,実機を用いて確認するために行われたものです。具体的には,衛星と第段モータとの結合部分の寸法や噛み合わせ,また,ノーズフェアリング内壁と衛星構体や搭載機器とのクリアランス,つまりスタートラッカ,パドルヒンジ部,アンテナ等がロケット打ち上げ時にフェアリング内壁に接触しないか,さらには,フェアリング内に納められた衛星をアクセス窓を通して作業が可能か等について調べられました。作業は3月18日から4月1日まで行われ,予定通りの日程で,大きなトラブルもなく進められました。写真はノーズフェアリングを背にした「ASTRO-F」です。

(大西 晃) 


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報道関係者との懇談会

 さる2月28日に科学記者との懇談会,3月13日に論説委員・解説委員との懇談会が開かれました。前者には17社(23人),後者には10社(20人)の出席を得,宇宙研からは所長,管理部長をはじめ主幹会議のメンバーを中心に参加しました。

 宇宙研からは,所長からの挨拶,機関統合の現況報告(松本企画調整主幹),科学衛星の現状(それぞれ的川,中谷),PLANET-C計画(中村正人)についての報告がなされ,活発な質疑が行われました。来る10月1日に迫った宇宙機関統合に関しては,統合後も宇宙科学の世界的に高い貢献をぜひ維持して欲しいとの嬉しいエールが送られました。科学衛星の現状については,やはり打上げを5月に控えたMUSES-C,特にサンプルの地球帰還の技術に関する質問が相次ぎました。また,この野心的な計画の成功か否かの評価をめぐる質問が出されましたが,宇宙研としては,MUSES-Cは工学実験用の探査機であり,その特徴である

・イオンエンジン,
・自律航行,
・小天体からのサンプル収集,
・惑星間空間からの地球帰還

というつの要素のどれか一つが達成されても,世界の惑星探査への大きな貢献であるという考え方が示されました。いずれにしても,MUSES-Cミッションへの期待が大いに表明され,身の引き締まる思いがしました。現在世界唯一の金星ミッションであるPLANET-Cについても,惑星気象学の嚆矢となることへの意義が理解していただけたと思います。

(的川 泰宣) 

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体験学習「第1回・君が作る宇宙ミッション」


 宇宙に関心を抱く高校生20名(男16,女)を相模原キャンパスに集めて,「君が作る宇宙ミッション(通称“きみっしょん”)」が3月28日(金)〜31日(月)に実施されました。本体験学習は,施設見学や実験体験といったお仕着せの結果に満足させるのではなく,研究者が普段行っている研究過程そのものを体験してもらえるように企画されました。すなわち,参加した高校生には“自ら考え・作る”といった作業に主体的に取り組んでもらい,その過程を通じて科学に対するアプローチといったものを学び取ってもらうことが本体験学習の目的です。各班4人つのグループに分かれた参加者は,まず研究テーマと研究目的を自ら設定し,その後は文献調査や計算・議論を重ねて自らのミッションを創り上げ,最終日に研究発表を行いました。わずか4日間ではありましたが,参加した高校生が目を見張る成長を遂げ,最終日の研究発表会で輝く姿を見ることで,我々スタッフ一同も大きな充実感を感じることができました。

 今回は第回ということもあり試行錯誤しながらの運営となりましたが,結果的には大きな成果をあげることができました。しかし,今回の運営に携わった30名弱のスタッフの三分の一は所外の大学生・大学院生であり,200人以上の教官・大学院生が在籍する所内からの協力者が少なかったことは残念でした。所内の教官スタッフの皆様方のさらなるご理解とご協力を頂ければ,体験学習の内容を発展させることも可能です。研究・開発機関であると同時に教育機関でもある宇宙科学研究所のプログラムとして,“自ら考え・作る”体験学習が今後も継続できるよう,発起人より皆様のご支援をお待ちしております。

 最後に,準備段階から多大なるご協力を頂いた,小山孝一郎先生をはじめ,ご多忙な日程を割いて講義を行ってくださいました,橋本正之先生,矢野創先生,井上一先生,当日の受付から事務的な作業でバックしてくださいました秘書の矢島さん,石川さん,会場のパソコン設営で協力して頂いたPLAINセンターの三浦昭先生,様々な支援・協力をしてくださいました対外協力・連携推進室や管理部,観測部企画管理課,庶務課企画・広報係の皆様方に心よりお礼申し上げます。本体験学習は,財団法人・宇宙科学振興会,宇宙科学研究所・生活協同組合,株式会社啓林館からの援助を受けています。

(惑星研究系,阿部新助・はしもとじょーじ) 

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  MUSES-C 月報−4


MUSES-C総合試験終了

 MUSES-Cの総合試験は,3月上旬に終わり,3月12日には探査機を相模原から鹿児島の射場に向けて搬出し,無事3月15日に現地に到着しました。総合試験の終わりには,重量,慣性モーメントなど慣性諸量の測定が行われ,当初の積み上げ重量と整合していることが確認できました。

 最終整備日に近づくと,だんだん世の中の報道でも漏れ聞こえることが多くなったようで,見学者が大勢いらっしゃるようになりました。見学の第一印象は,だいたい「あ〜。」というものです。たぶん,アクロバットに近い数々の難題を切り抜けるので,きっともっとかなり大きいものだと想像しているのだと思われます。しばらくすると,印象はもう少し細部になり,

「意外といろんなものが外についているんですね。。。。」

という感想に変わっていきます。とくに,外部の金色でおなじみの,MLI (Multi-Layer-Insulation)をみて気がつかれるらしく,

「ところどころ,金属光沢を示す部分とか,黒っぽい部分がありますが,...

という質問が出てきます。とてもよい質問で,MUSES-Cで実証される,目立たないながらも,従来にない熱制御技術がそこにあります。大いに関心をもっていただきたいところでもあります。

 3月末から4月はじめまで,鹿児島でキセノンガス60kg強の充填が行われました。高価なガスなのに,ボンベの色が窒素と同じなのが,なんとなくシャクにさわったのは了見がせまいのでしょうか。新型イオンエンジンは,大気へ自由に暴露できるため,作業はとても順調です。4月下旬からはロケット系の最終整備が予定されています。

 宇宙観測の特徴は,虎穴の虎児を求める点にあります。何回も磨いているとだんだん虎児の顔が出てくる分野との大きな違いです。世界並かどうかを糺す減点法の質問がまだまだ多いのですが,挑戦を歓迎する加点法へと変わってきているようです。ぜひ追い風をうけて打ち上げたいと考えています。

(川口 淳一郎) 

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