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「SOLAR-B」熱構造モデルの熱真空試験




 「SOLAR-B」熱構造モデルによる熱真空試験が10月16日から10月30日まで宇宙環境を模擬した大型スペースチャンバにおいて行われた。この衛星にはバス部を取り囲むように可視光,X線を観測する2台の大型望遠鏡と極紫外線を撮像する分光装置が搭載されている。したがって熱設計ではバス部と各望遠鏡や分光装置との熱結合を如何に調整するか,また,各望遠鏡内の熱をどのように排熱するかが設計の狙いどころとなった。熱解析はシステム部で約1000ノード,望遠鏡や分光装置部では約1500ノードの計2500ノードの熱数学モデルを構築して行われている。その設計の良し悪しがこの熱真空試験で問われている。試験では太陽光による熱入力と搭載機器の発熱を模擬したヒータを約200チャンネル,温度計測に約600チャンネルが準備された。試験は11項目について行われ,システムの設計評価に止まらず,望遠鏡等についても詳細な設計の検証が行われた。表紙の写真はチャンバ内に収められた「SOLAR-B」熱構造モデルである。写真は中央の可視光望遠鏡(上)と箱型のバス部(下),それを取囲むように左から可視光望遠鏡の一部である焦点面検出装置と中央に黒い円筒のX線望遠鏡を示す。右の写真の黒色の箱は可視光望遠鏡を背にした極紫外線撮像分光装置を示す。

(大西 晃) 


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世界宇宙会議2002展示会

 第34回COSPAR第53回IAFの合同の世界宇宙会議(World Space Congress)2002と展示会が,10月12日から19日までテキサス州ヒューストンで開かれ,2万人もの参加者でにぎわいました。

 展示会は32,500m2の広大な会場で行われ,350の会社,機関からブースが出展されました。中でも会場の半分を占めるNASA関連のブース群にはスペースシャトルのエンジンや宇宙ステーションのモジュールのモデルなどが持ち込まれ,NASAのすべてのフィールドセンターが展示するなど,さすが地元という展示風景でした。また,会場の中央にはライト兄弟の飛行機の復元模型も展示され人目を引いていました。

 宇宙科学研究所は,昨年のIAF同様,宇宙開発事業団,航空宇宙技術研究所と一緒に日本ブースという形で展示に参加しました。展示期間は10月14日(月)から19日(土)で,前半は会議関係者や関連企業の営業活動が盛んで,一般への公開は最後の2日間だけでした。ヒューストンという土地柄,今さら宇宙といってもあまり興味が無いのか,一般公開日の入場者がそれほど多くなく今まで参加した各国の展示会に比べて寂しく感じました。恒例のようになっている折り紙のデモンストレーションには興味を示す人が多く,ミニ折り紙教室となる場面もしばしばでした。展示会への総入場者数は7,000人でした。

(周東 三和子) 




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コズミックカレッジ開かれる

 コズミックカレッジのアドバンストコースが,8月7日から12日までの6日間にわたって開かれました。場所は筑波エキスポセンターでした。子供たちは,全国から集まった約30人の組がふたつで,総勢約60人,全員全日泊まり込みです。

 交流,講義,実験,体験などが織りまぜられました。講義は,飛ぶ科学,調べる科学,宇宙と人間,進化する生命とおおきく分けられました。学長は宇宙研の的川さん,副学長に全日本中学校理科教育研究会顧問の宮崎總一氏。講師陣は教授という肩書きでしたが,小中学校の熱心な先生方と,宇宙研から的川,黒谷,平林とが,あい勤めました。実験,体験としては,熱気球とばし,探査機つくり,筑波宇宙センター見学,化石探し,スターウォッチング,研究発表と盛りたくさんです。スターウォッチングでは,軌道予測に基づいて,筑波の空に衛星イリディウムの光を見ることができました。これは,思わず歓声が上がるほどに迫力がありました。

 小中学校の先生方の授業をみていて,おもしろいのです。こういうところに出てくる先生は,活きがいいです。それから,何十年も子供たちを相手にしている専門家と,いわゆる科学の専門家で子供たちを教えることに慣れていない私たち,うまく言葉にできませんが,どこか違います。先生たちは授業の組立ということをよく考えてしています。私たち研究者は,そこをうまく取り入れた上で,自分のいいところを出せばいいのでしょう。

 開催に先立って,「宇宙へのとびら」という読本(リーダー)をつくりましたが,これはなかなかの力作となりました。以前に使われていたものに較べて,カラー版になり,内容も,より魅力的になりました。このコズミックカレッジだけで使うのはもったいないという意見が多く出ているほどです。ホームページに載せようという話も出ました。

 コズミックカレッジは,すでに何年も続いていますが,アドバンストコースは今年が初めてでした。コズミックカレッジはおもしろい枠組みでおこなわれてきました。NASDAと宇宙少年団(YAC)とが構想と資金と陣容とを受け持ち,宇宙研は構想と講師陣提供とで,協力してきました。コズミックカレッジの発足には,NASDAYACの渡邊勝巳氏,秋葉倫子氏の情熱が引き金となり,的川さんは,初回以来ずっと学長として勤めてきました。誰よりも若々しい感性の人たちによって始められ,おなじような人が集まって続いてきていると,私は見ています。

 開催後も,NASDAに集まって,反省会がおこなわれましたが,講師陣のほとんどが集まって,実のある総括がおこなわれました。なんだか職員室に坐っているような気分です。授業を受け持つ,先生方の授業を参観する,子供たちの様子を見る,総括に参加する,これは,なかなかの経験になると思います。私自身は,初回に参加して以来の2回目,参加も一部期間だけという中途半端なことでしたが,今後,いろいろな人が講師として参加してみるとよいでしょう。

 年々模索を重ねて,いい方向をめざして,このような教育活動が続けられてきました。宇宙機関統合が1年以内に迫りましたので,そのなかで,よりよい方向への舵取りが大事な発展の時であると思います。

(平林 久) 


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新宇宙機関個別法「独立行政法人宇宙航空研究開発機構」国会上程される

 昨年8月に遠山文部科学大臣から宇宙3機関統合の方針が示され,それ以後青山副大臣主宰の統合準備会議等で統合後の新宇宙機関の目的,機能,組織等について議論がされてきました。その結果が独立行政法人通則法にそった個別法として法律化され,10月半ばから始まった臨時国会に上程されました。

 法律の名称「独立行政法人宇宙航空研究開発機構」からわかるように,新機関の名称は「宇宙航空研究開発機構」です。この機構の目的,業務の内容等が法律に書かれていますが,当然ながら,これまでの宇宙3機関の目的,業務を引き継ぎ,宇宙科学,人工衛星の開発・打ち上げ・追跡・運用や宇宙航空に関する基盤的研究開発等について詳しく記述されています。宇宙科学にかかわる項としては,新機関の目的に「大学等との共同等による宇宙科学に関する学術研究」が第一にあげられており,業務としても「大学等との共同その他の方法による宇宙科学に関する学術研究を行なうこと」とともに「大学の要請に応じ,大学院における教育その他その大学における教育に協力すること」と書かれています。なお,ここで言う「宇宙科学」は,宇宙理学及び宇宙工学の学理及びその応用」とされており,科学衛星開発は宇宙科学の業務の範囲となります。また,学術への配慮についても文部科学大臣が中期目標を通じて「研究者の自主性の尊重その他の学術研究の特性への配慮」を指示することとされています。これらの点から,これまで統合に際し宇宙科学研究所が主張してきた“大学共同利用機関の性格を維持し,研究者の自主性にそった学術研究を進めること”また“東大,総研大等を通じての大学院教育の実施”等の主要な点が法律に盛り込まれているといえます。

 新機関全体としてかかわることの一つに宇宙開発委員会の役割があります。これまで宇宙開発委員会は宇宙開発事業団のみをその所掌範囲としてきましたが,今回の法律では主務大臣は宇宙開発委員会の議決を経て主務大臣が定める「宇宙開発に関する長期的な計画」に基づいて中期目標を定める,とされています。この結果,宇宙科学についてもその長期計画について宇宙開発委員会が責任を持つことになります。宇宙開発委員会において科学の評価を可能とするシステムを考える必要があるものと思われます。

 法律では新機関の目的,業務等について書かれていますが,内部組織については一切書かれていません。理事長の裁量によって内部組織は決められるという通則法にのっとっているためです。このため,宇宙科学研究所,宇宙開発事業団,航空宇宙技術研究所の宇宙3機関では各機関の代表によって構成される幹事会を中心に事務局,各種ワーキンググループを組織し新機関の組織,制度等について以下のような検討を進めています。

 独立行政法人は文部科学大臣が指示する中期目標に基づいて中期計画を定め,独立行政法人評価委員会の評価を受ける必要があります。中期計画には当然衛星計画が含まれますから,新機関としても国民に対する説得力のある計画を作り,その重要さを訴える必要があります。また,現宇宙3機関は人事・給与制度,年金制度等が異なっており,統合後の新機関においては一体となった制度を設計する必要があります。さらに,事務・管理組織の効率化を図るとともに,活力ある組織作りが求められています。宇宙3機関側としては,このような課題に対しての検討結果を年内を目処にとりまとめ,文科省,宇宙開発委員会との協議を進めるとともに,新機関執行部にできるだけ早い時期にその作業を引き継ぐことできるよう,検討を進めています。

 国会審議が順調に進めば,年内には法律が国会を通り,新機関発足は2003年10月1日と想定されています。新機関発足まであと一年を切る状況となりました。このスケジュールに対応し,組織設計を行うことはかなり厳しい状況ではありますが,後世に誇る事ができる「宇宙航空研究開発機構」設立に向け,皆様方の協力を得て一層の努力して行いたいと思います。

(松本 敏雄) 

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ISASニュース No.260 (無断転載不可)