No.260
2002.11

ISASニュース 2002.11 No.260

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見学案内あれこれ

平 田 安 弘  

 定年退職を機に第二の人生と言うならば,まだその人生の設計もままならないうちに,見学者への説明案内を主とする仕事に従事することになるとは思ってもいませんでした。

 私がこの仕事に就く以前までは,見学者の訪問時間に都合のつけられる教官がこれに対応をしていましたが,宇宙開発事業団には見学案内を専門とする部署があり,研究所としてもこの機会にテストケ−スとして設けたものと思っております。昨年長きに亙り努めたロケット稼業を,定年退職した後に引き続きやらせて頂いている見学者への対応も,こんにちで既に回を数えるほどとなりました。

 在職中は試験棟であらゆる衛星・探査機やロケットの諸試験の実施に従事してきましたので,その間に職種柄多くのメ−カ−の技術者や,大学関係者と出会うという恵まれた機会を得ることができました。

 そして現在,見学の当日などは対応に入る前に試験棟へ出向いて,かって共に仕事をした仲間やメ−カ−の方々に会い,たとえ短時間でも見学者の人数や時間帯について知らせ,あわせて作業内容の把握をといった事前の下見に快く協力して頂いてますが,それは見学者に対する案内を効率よく行うための礼儀でもあると共に,この仕事をやっていく上での大いなる助力となっております。とはいえ長年やってきた技術的な仕事と違って,当初は老若男女といった幅広い層に対しての説明案内は,全くの素人でしたから正直なところ大いに戸惑いました。そして本格的にこの仕事に臨むと決めるにあたり,2回ほどは要領を掴むためにかっての仕事仲間の案内に同行させてもらいました。

 説明案内としては,研究所の活動内容や成果を収録編集したビデオで紹介した後,試験棟へ案内して作業状況を実際に身近で見て頂きながら説明をしております。さらには見学者が中学生の場合にはロケットや衛星の案内の他に,カエルやイモリなどの生物が宇宙環境での形態形成や,宇宙機材料をも研究する教官の協力で講話を盛り込むこともありました。

 また,小中学校の総合学習に向けて先生方の研修もさることながら,校外学習で訪れる生徒たちにとって,未来はあらゆる可能性を持っており,その中で少しでも宇宙を身近に思う豊かな感性を抱いて帰ってもらえるように,宇宙に関連するニュ−ス・話題で案内の仕方に工夫を取り入れるようにしています。

 見学者から企画・広報係に提出される「見学依頼書」に記載された見学の要旨は,どのような団体でどんな希望をもって来られるのか,あらかじめ考えておく上で必要かつ大事な情報です。私としてもこの依頼書に記載された要望に添えるような案内を心がけていますが,郵送されてきた質問・疑問内容についての回答は宇宙関係の雑誌や経験からと,また,時には理工の教官の知恵をお借りすることもあります。

 今までに訪れた主な団体は,小中学校の他に,警察,消防,電力,硝子,無線,敬老会,市議会,火薬学会,機械学会など国内は元より台湾,アメリカといった国外からの見学者もあります。在職時に多くの人々との出会いがあって,こんにち新たに宇宙について学ぼうとする人々とのふれあいの中で,特に小中学生には宇宙への夢を育ませてあげたい気持ちでおります。そして,‘また今度来るよ’‘またおいでね’などと云った帰り際の言葉のやりとりからは,私自身実に遣り甲斐のある気分にさせてもらっています。

 いつの日にもいかなる出会いをも大切にすることを教えてくれる仕事が,この見学案内への対応かと思っております。

(ひらた・やすひろ) 


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