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文部科学省スタート

 21世紀がスタートした2001年1月6日から,中央省庁が新しく生まれ変わり,旧体制の1府22省庁を再編し,内閣府を始めとする1府12省庁で発足した。宇宙科学研究所と最も関係の深い文部省と科学技術庁が統合して再編成され,「文部科学省」が設置された。

 本研究所の業務についてはこれまで旧文部省の学術国際局研究機関課が一体的に所管してきたが,今後は,大学共同利用機関としての側面は研究振興局の学術機関課の,また予算を含む宇宙科学プロジェクトの推進については研究開発局の宇宙政策課の所管となる。本研究所と関わりの深かった旧学術審議会は、統合により「科学技術・学術審議会」の中のひとつの「学術分科会」となる。

 また宇宙開発委員会の法的位置付けは文部科学省内に置かれる審議会と同様となり,宇宙開発事業団に係わる事項を処理することとなる。 なお,文部科学省の英語表記については,Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology(略称 MEXT)となった。


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第1回 BepiColombo ESA-ISAS Joint Meeting開催

 クリスマスの飾りが始まりつつあった2000年12月6〜8日にオランダのNoordwijkにあるESAESTEC(European Space Research and Technology Centre)にて標記会議が開催されました。初日は主にマネージメントおよびサイエンス,残りの2日間は技術的な問題について議論しました。初日はISASからは鶴田浩一郎,水谷仁,早川基各先生および小川博之氏と私,さらに京都大学からは松本紘先生の合計6名ESA側からはM.Coradini氏, P.Wenzel氏, R.Grard氏,G.Whitcomb氏,M.Novara氏,R.Bonnet氏の6名が参加し,2日目からは向井利典先生がSS-520-2号機の打ち上を終えてスバルバードから駆け付け,ESA側はさらに各サブシステム担当の13名が加わりました。

 BepiColomboについては2000年11月号の記事に譲りますが,ISASMMO(Mercury Magnetosphere Orbiter)のシステム設計・製作・運用を担当して,ESAのコーナーストーン・ミッションに本格的に参加する新しい形の国際協力の門出にふさわしい会議でした。なごやかにではありますが,朝から夕方までface-to-faceの議論を3日間連続で行うのはかなりしんどかったというのが本音です。この会議でお互いの顔と考えを知ることができ,いよいよ検討も本格化してきました。

(山川 宏) 


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「のぞみ」・太陽・地球・月が一直線に

 2004年始めに火星周回軌道投入を予定している探査機「のぞみ」は太陽を回る軌道上を順調に巡航中です。

 今年の1月10日早朝の皆既月食は記憶に新しいところですが,ちょうどこのとき「のぞみ」は地球から見て太陽の反対側にさしかかっていました。その結果,標記のようにつの天体(そのうちの一つは人工天体です!)が一直線上に並ぶという極めて珍しい配置が実現しました。もちろん,ノストラダムスならぬわれわれ研究者にとっては特別な意味はありませんが。

 しかし,「のぞみ」が太陽の反対側に位置したためにその雑音の影響で3週間ほど通信ができなくなりました。昨年12月28日を最後に,今年の1月20日まで「のぞみ」は音信不通となったわけです。これは天文用語で,「合」と呼ばれ,もちろん,軌道設計の当初より分かっていたことですからこの期間を無事に乗りきるため「のぞみ」プロジェクトチームはさまざまな準備を進めてきました。

 「のぞみ」に搭載した通信用のアンテナはビームが約1.4度と大変鋭く,しかもこの「合」の間に,姿勢を自律的に30度近く動かして,「合」明けにはピタリと地球方向を向く必要があります。万一この操作に誤差が入ると「のぞみ」との通信が回復しないことになり大変やっかいなことになります。

 姿勢制御グループの実力は誰もが疑っていませんでしたが,それでも3週間も放置された探査機が本当に無事に再捕捉できるか,1月20日の「合」明けは,チームにとっては大変緊張する瞬間でした。

 結果的にはこの日の朝,臼田局の64mアンテナは予測どおりの強度で「のぞみ」の信号受信に成功し,プロジェクトチーム一同,ホッとしました。姿勢制御の精度が再確認され,併せて探査機各部の健康状態も3週間以上にわたる「放置」の後も良好であることが確認されました。「かわいい子には旅をさせよ」ではありませんが「のぞみ」の運用への自信を深めることができました。

(中谷一郎) 


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第1回宇宙科学シンポジウム

 2001年1月11〜12日に第回宇宙科学シンポジウムが開かれました。今回のシンポジウムは以下のような形態で開かれました。宇宙科学研究所のそれぞれの研究分野の研究者が世話人となって開催する他の19のシンポジウムと異なり,将来計画のような所全体にかかわることについて理学,工学が一緒に議論できるように,全所的なシンポジウムとすることにしました。したがって世話人も理学,工学あわせて4人とし,講演募集も理,工学委員長名で行いました。理,工学委員会委員,運営協議委員会委員および客員教官の出席も事前に要請しました。

 シンポジウムは1日目全部と2日目の午前前半が数年以内に正式に提案されると思われる金星大気計画,水星探査(Bepi Colombo)計画,次期磁気圏衛星計画,次期X線天文衛星計画, 赤外天文衛星(SPICA)計画,次期スペースVLBI(VSOP2)計画,および次期月探査計画のつの探査計画についてそれぞれのワーキンググループの報告にあてられ,2日目の午前後半から午後にかけて,まだ上記ほど具体化しておらず,研究者の間で議論されはじめている将来計画に関する18件の講演,そして衛星基盤技術に関する5件の講演がなされました。これまでの衛星,および観測ロケットで得られた成果の報告は第1日目の夕方に予定されたポスターセッション(計44件)に組み入れました。

 2日間共に2階の会議室は立錐の余地なく,室外に人が溢れる程の盛況に加え,質の高い講演が多く為されました。部屋が挟隘なこと,口頭発表に押されてポスターセッションの時間にしわ寄せが行った事など,今後善処すべき点がいくつかありますが,延べ出席者360名以上で,第回目にしては総じて21世紀の初めにあたり,夢を議論するに相応しいシンポジウムであったと思います。第日目の夜に開かれた懇親会は所内外の理学,工学の諸賢が親しく意見を交す機会を与えてくれました。来年は更に充実した,楽しいシンポジウムとすべく,策を練りたいと思います。最後にこのシンポジウムを開くにあたって今回は特に多くの所内の事務官,研究者の手を煩わせましたこと,世話人を代表して心から感謝の意を表します。

(代表世話人 小山孝一郎) 


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田中先生米国天文学会のロッシ賞受賞

 宇宙研名誉教授の田中靖郎先生が去る1月11日に英国のファビアン(Andrew C. Fabian)教授と共に,米国天文学会よりロッシ賞(Rossi Prize)を受賞された。

 ブルーノ・ロッシ(Bruno Rossi)先生は元マサチューセッツ工科大学教授で宇宙線研究の先駆者であり,1962年にはロケット実験を指導して最初のX線天体(さそり座 X-1)の発見に導いた事で有名である。

 米国天文学会ではこのロッシ先生の業績と栄誉を讃えて,特に高エネルギー天体物理学の分野で独創的で顕著な業績を挙げた科学者を表彰するために,1985年よりこのロッシ賞を設立した。そしてこのロッシ賞は毎年1月に開催される米国天文学会において表彰される。これまでにスニャーエフ(Rashid A. Sunyaev),コルゲート(Stirling A. Colgate),シンプソン(John A. Simpson),フィシュマン(Gerald Fishman),リース(Martin Rees)等この分野の大家がこの賞を受賞している。

 今回田中先生とファビアン教授が共同でこのロッシ賞を受賞されたのは,日本のX線天文衛星「あすか」で観測された活動的銀河核のエネルギースペクトルから,相対論的な重力赤方偏移を受けて広がった蛍光鉄輝線を発見した事に因るものである。この結果は最初にMCG-6-30-15と呼ばれる活動的銀河核の観測から発見されたが,その後の「あすか」の観測で他の活動的銀河核からも続々と同様の広がった鉄輝線構造が発見された。この現象はブラックホール周辺の降着円盤の極内縁部に起因すると考えられ,活動的銀河核中心に巨大ブラックホールの存在を予言する理論を観測の面から強く支持することとなり,現代の天体物理学の発展に大きな貢献をするものである。「あすか」の観測成果が評価された事を共に喜び,お二人には心からお祝い申し上げたい。

(長瀬文昭) 

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宇宙学校

 1月28日(土)大雪。相模原市産業会館にて宇宙学校が開かれました。一人も聴衆は来ないのではないか,そんな思いに沈みつつ,40分程かけて車で会場に向かいました。普通は自宅から車で15分の距離です。会場は満員ではありませんでしたが,雪の中,集まってくださった特に熱心な聴衆に感激して6人の教官はこれまで以上に熱っぽく講演したように思えました。講演後の1時間の質問時間も瞬く間に過ぎてしまいました。田中助手の月探査計画のペネトレータの苦労話に感動が広がりました。黒谷助教授の重力を大きくすると双頭のオタマジャクシができる話は,驚きですが,無重力でも適当な調節で正常なオタマジャクシになるたくましさも不思議です。

 2時限目は的川教授の予想だにしていなかったMーVロケットのノズルの破壊,成功した話より聴衆は,より感動します。橋本助教授は衛星の自動故障診断のシステムについて話し,場数を踏んでいよいよ話がわかり易く子供たちにも興味が湧いたと思います。3時限の授業で高橋助教授は広大で静かと思われていた宇宙が如何に激しく変化しているかを自分で実感したことをデータで示しました。研究への情熱が聴衆へも伝わります。授業の最後は松岡助手です。プラズマが宇宙に普遍的に存在していることを話しました。

 久しぶりの校長先生役で,ここ数年の宇宙学校の雰囲気がわかりませんが,今回大人がほとんどで子供が少なかったのは大雪のせいだと思います。相模原市のグリーンロータリークラブが,宇宙少年団結成に動き始めて,授業の最後に少年団への加入を呼び掛けました。今後,相模原市,市教育委員会,ロータリークラブ,およびアマチュア天文クラブなどと連携すれば更に素晴らしい宇宙学校になるでしょう。授業が終わっても雪はまだ降り続いていました。理科好きの子供達を育てるため,宇宙学校が少しでも役に立てたらいいなー。こう思いながら大雪の16号線をスリップしないようにゆっくりと帰途につきました。いつものことながら,企画・広報係をはじめとする管理部の皆さん,相模原市,市教育委員会など,この宇宙学校を一生懸命支えて下さった多くの皆さん,お疲れ様でした。

(小山孝一郎) 

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M-V型ロケット新1/2段接手の分離試験

 現在,M-V型ロケットの高性能・低コスト化を目指した改良が進行中です。その一環として,開発中の新1/2段接手の分離試験を,1月24日から2月2日まで鹿児島宇宙空間観測所で行いました。今回の試験の目的は,分離機能の確認と分離時に発生する非常に大きな衝撃の計測です。改良型のM-V型ロケットでは,従来は第2段ノズルまわりに搭載されていた姿勢制御装置SMSJを,この新1/2段接手2段側グリッド構造外面に位置を変更することになっています。したがって,衝撃発生源の分離面から近くなるために,衝撃を緩和するショックマウントを介してSMSJを取り付けています。今回の衝撃計測では,このショックマウントによってSMSJ が壊れない程度まで衝撃が緩和されているかどうかも,重要なポイントでした。

 試験は,新1/2段接手の上側に構造機能試験棟に展示してあったM-14モータケースNo.1セグメントの開発モデルを結合して,整備塔のクレーンでつり上げた状態で行いました。凄まじい爆音と閃光とともに,無事,1段目グリッド構造が落下し,試験は成功しました。衝撃データも収録できており,これから詳細な解析を行います。これで,昨年8月M-V事情で紹介した静荷重試験に続く,一連の開発試験は終了しました。また,本試験は,今まで種々の試験にご尽力下さった橋元さんと喜久里さんにとって最後の大規模試験になりました。長い間,ご苦労さまでした。

(峯杉賢治) 

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用語解説
カスプ
SS-520-2号機観測結果速報

 昨年12月4日,待ちの態勢に入って10日目,太陽風の条件はこれまでで一番。ロングイヤーベンでレーダ観測をしている藤井良一さん(名大STE研教授)からイオンの上昇流が活発という情報。ただ,ロングイヤーベンもニーオルスンも雪が降っている。地上からの光学観測は無理だが,POLAR衛星が撮影したオーロラ画像(Webpage上で30分程度の遅れで見える)によれば,カスプはちょうどいい所に来ている。このロケット実験のために現地まで駆けつけてくれたオスロ大学のモーエン教授や藤井さんと議論。いよいよ,決断。保安主任からは「ホントにいくのか…」と意味不明な電話。わずか2km弱しか離れていない射点が大雪とは知る由もない。

 仰角86°の打ち上げ,テレメータ・QLデータ監視室の窓から見たロケットは真上に飛んで行った。飛翔は正常,テレメータの受信状況もいい。観測センサーの展開,アンテナ伸展,種々の高圧電源,すべて正常。しかし,カスプ特有のイオンの降り込みは弱々しい。事後の解析によれば,ロケットはわずかに西に逸れてカスプをかすめて飛んだようである。一方,降下粒子やプラズマ波動のデータには予想外に細かな構造が観測され,現在解析中である。

 今回のロケット実験では,高時間分解能の粒子観測,デジタル制御型のプラズマ波動受信機,酸素イオンの極端紫外光観測など,世界的にも最新の観測技術の開発が行われてきた。開発に携わった学生の一人は博士論文に初期結果をぎりぎりで間に合わせることができ,少なくともあとつの博士論文が出るものと期待している。

 打上げ翌日からは暴風だった。15日間もウィンドーを取っていたのに,あれがワンチャンスだったとは。奇しくも,「あけぼの」衛星がロケットの打上げと同時にやや南側を通過し,ロケットと衛星の同時観測という副産物をもたらして,実験は無事終った。最後になりましたが,この3年間,所内外,メーカー,国内外の多くの方々にご支援,ご協力をいただき,本当にありがとうございました。

(向井利典) 

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