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No.236 |
<研究紹介> ISASニュース 2000.11 No.236 |
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InFOCuS:
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4.InFOCuSの光学系,ゴンドラ,検出器来年夏の最初のフライトに用いられる予定の望遠鏡光学系,ゴンドラ,それに焦点面検出器の諸元を表1,2,3に示しました。
観測エネルギー帯は気球高度約40kmに対応して下限20keV,また多層膜の成膜の容易さを考え最初のステップとしては上限を40keVに設定しました。 多層膜スーパーミラーのX線反射率を考慮した有効面積は100cm2,また望遠鏡の視野は半値幅で10分角とASCA,ASTRO-Eよりかなり狭くなっていますが,これは観測エネルギー帯の平均のX線(30keV)に対する全反射の臨界角(Ptで約0.15°)にほぼ対応しています。 現在使う予定の望遠鏡の角分解能は2分角(HPD:点光源からのX線の半分が入る角度広がりの直径)でASTRO-Eと同様ですが,最終ゴールとして1分角以下にしたいと考えていますが,このプロジェクトの難しい課題の一つです。 ゴンドラ(図1)は8メートルの焦点距離を確保するために巨大なものになります。また焦点面検出器は最近急速に進歩してきた位置検出型のテルル化カドミウム亜鉛半導体検出器(CdZnTe)で,気球フライトでは全体が大気圧の容器の中に納められた状態で用いられます。この検出器については大気起源のバックグラウンド・データを得るため,検出器のみを搭載した気球実験がこの夏に行われています。
図1 InFOCuSプロジェクト:
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5.硬X線望遠鏡の製作多層膜スーパーミラーの製作工程を簡単に説明しましょう。この工程はレプリカ・フォイルミラーの製作と多層膜スーパーミラーの成膜の2つに大別できます。成膜についてはレプリカ・ミラーの製作後これにコーティングする場合と,レプリカ・ミラーの製作工程の中に組み込んで行う場合(これを直接レプリカ法と呼んでいます)の二つの方法があり,現在は前者の方法をとっていますが今後メリットの大きい後者の方法に移行する予定です。
図2 レプリカ・フォイルミラー用
図3 多層膜成膜装置
図4 多層膜成膜装置
図5 レプリカ用マンドレルヘの
図6 白金・炭素多層膜スーパーミラー表面を持つ
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6.スーパーミラーのデザインと成膜の実際・性能評価最初のステップとして目指す20〜40keVのエネルギーをカバーするスーパーミラーとして,どんな多層膜を成膜するか,その物質(重元素,軽元素),周期長とその奥行き方向への最適分布などは,多数の多層膜の試作と予想反射率の計算機シミュレーションをもとに決めました。InFOCuSの望遠鏡では半径の異なる255枚の共焦点ミラーがありますが,多層膜のパラメータとしてはこれを半径の近い13のグループに分けそれぞれに,周期長と層数の組みを決めています。多層膜物質は白金と炭素で周期長は2.9〜9.0nm,層総数は最内側・最外側のミラーに対してそれぞれ15および60層になっています。私たちのグループで担当するスーパーミラーの製作枚数1020枚の内,現在までに約1/4の製作が済んだところです。作られたスーパーミラーの性能評価は,単一エネルギーのX線に対する反射率の角度依存性と実際に用いられるエネルギー範囲での反射率のエネルギー依存性の測定により行われています。これまでのところ目標の80%の有効面積が得られるような単体のスーパーミラーの反射率が得られています。
7.今後の進め方当面は来年夏のフライトに向けて引き続き多層膜スーパーミラーの製作を進めるとともに,8mX線ビームラインの整備とこれを用いた望遠鏡としての総合的性能評価を行う予定です。また65〜80keVのエネルギー帯をカバーする第2ステップのフライトに向け多層膜スーパーミラーのデザインや成膜工程の確立,それに望遠鏡角分解能の一層の改良も進めていく予定です。多層膜スーパーミラーの原理的な説明については1999年7月のISASニュース「宇宙を探る」欄にも書きましたので併せてごらん下さい。また私たちの研究室のホームページ http://www.u.phys.nagoya-u.ac.jp/index.html でも関連情報がごらんになれます。 (たわら・ゆずる) |
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