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「KSC科学衛星追跡管制設備」の総称のもと,「科学衛星追跡用大型アンテナ設備」と「S/X帯追跡管制設備」という二つの設備の製作が1996年に始まりました。KSCにおける衛星追跡を本格的な2局体制にすることを目指すものです。設計に当って,深宇宙探査機に対応するための機能ももたせました。テレメータ台地の 18m アンテナを撤去し,その跡に建てることにしました。大がかりだったアンテナ建設工事も,台風に妨げられることもなく,無事に終わりました。去る11月末には全設備の立合検査が行われました。引続き,ジオテイルを使った追尾等の試し運転が始まっています。
この工事に先立って解体した 18m アンテナの銘板には,1962年12月という数字が刻まれていました。この新たな 34m アンテナ追跡局も,宇宙研の科学衛星を,今後永く支えていくものと確信しております。
(廣澤春任)
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(稲谷芳文)
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しし座流星群(レオニード)の人工衛星への影響が心配されていたことは,11月号の ISAS事情欄でも紹介されている。相手はたかだか大きさ1mm 以下の“ちり”であり,人工衛星に当たる確率は極めて低いとはいえ,万が一当たった時にはその相対速度は 70km/s もあり,最悪の場合は衛星が制御不能に陥る可能性もあると警告されていた。
宇宙研の飛翔中の全衛星は安全のため高圧電源を切り,姿勢によって危険度が減ると考えられる場合には事前に姿勢の変更を行なった。X線観測衛星「あすか」は長い筒のような構造をした望遠鏡であるがその開口部を流星の到来方向とは逆向きに,太陽観測衛星「ようこう」は太陽電池パドルが流星の到来方向に対して横を向く姿勢をとった。7月に上がったばかりの火星探査機「のぞみ」は,地球からおよそ 150万km の距離にあり,流星の来襲を受けるのは他の衛星の一日遅れとなった。前回(11/4)の軌道制御の際に,「ようこう」と同様太陽電池パドルが流星の到来方向に対して横を向く姿勢に変更し,流星に備えた。
さて日本中が流星ブームにわく数日が経過したが,幸いなことに宇宙研の衛星への流星の衝突は無かったようである。関係者が流星に「当たりませんように!」と願いをかけたお陰と思うが,いかがであろうか。
(松岡彩子)
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今回の試験は,12月に予定している DOM-3 真空スピン燃焼試験を前に,ロケット燃焼時における設備機能の確認を主目的として行われました。供試ロケットとして用意されたのは,推進薬量 17.1kg,最大推力約 300kg,燃焼時間約 20sの本格的な TM-250EB モータです。メンバーも,任意参加であったにもかかわらず,NTC の地燃で活躍している本格派が勢揃いしました。
燃焼試験は,11月13日15時30分の点火で行われました。取得された圧力,温度データから,モータの着火・燃焼および設備の機能は正常で,HATS のガス力学的作動特性も良好であることが確認されています。
お忙しい中,長距離通勤や残業に耐えて参加していただいたメンバーの皆様方,本当にお疲れさまでした。
(徳留真一郎)
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(高野雅弘)
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今回の実験は,スペースプレーンの推進システムとして期待されている ATREXエンジンの空気取り込み,水素ラム燃焼,排気ノズルから成るシステムの制御に関するものである。また,排気ノズルに用いられる炭素・炭素複合材製のプラグノズルの材料面からの耐久試験も行った。
ATREXエンジンでは,地上・静止状態からマッハ6程度までの飛行中に大気から吸い込まれた空気は,インテークによって亜音速まで減速,圧縮され,ラム燃器で水素と混合,燃焼し,プラグノズルによって膨張,加速し,その排気ジェットによって推進力を得ている。亜音速ラム燃焼エンジンでは,インテークのスロート下流に垂直衝撃波が生じるが,この垂直衝撃波の位置は不安定で,僅かな圧力変動によっても振動が生じる。特に,着火,燃焼による流れの擾乱が大きくなると,衝撃波の振動はエアーインテークの全圧回復性能を低下させ,エンジン推力が低下したり,エアーインテークの不始動が起こり,全システムの機能が大きく損なわれる可能性がある。そこで,スロート面積を変化できる構造のプラグノズルを用いて,エアインテークの垂直衝撃波の位置を常に最適な位置に止める制御が必要である。
燃焼を伴わないエアインテークとノズルから成る空気流だけの制御システムに関しては,相模原の超音速風洞において,その制御試験に成功している。今回の実験では燃焼を伴う制御方法を確立するため,能代ロケット実験場で行った。試験日程は,予定通り,1998年11月17日から27日で,この時期としては記録的な大雪の中で試験を行った。最初に,燃焼当量比を下げて着火できる加減を調査した後,システムの制御試験を行った。試験装置や計測系に不具合が生じたとは言え,予想された通り燃焼を伴うシステムの制御はかなり難しいことが認識された。プラグノズルの制御システムは,多少の改良点はあるものの,燃焼火炎中においても正常に作動することや,衝撃波の位置の検出方法は確認できた。試験装置を改修し,近い将来,改めて制御試験を行う予定である。
炭素/炭素複合材を用いたプラグノズルを燃焼ガス流中に曝して,その損傷を調査する試験を行った。燃焼当量比が1近辺のかなり強力な燃焼火炎にプラグノズルを曝したが,燃焼時間を長くできず,炭素・炭素製プラグの温度は計画したような高温度まで上昇せず,耐酸化コーティングの劣化はほとんど認められなかった。しかし,プラグを後方から支持していたステンレスが溶融,飛散し,また,燃焼室を簡易に水冷却したが,長時間の試験には耐えないと判断した。今後は,飛翔試験と同程度の長時間の燃焼に耐えるよう試験装置を改修し,炭素・炭素複合材製プラグノズルの耐久性を確認する必要がある。
大雪の中,短期間に合計26回の試験を行うことができ,関係各位に感謝します。
(棚次亘弘)
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