No.213
1998.12

ISASニュース 1998.12 No.213

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初めての国際会議に出席して

北原 勇 


 西田所長より,スイスのベルンでIACGが開かれるが,次年度開催の担当は本研究所なので是非部長に会議の雰囲気を見てもらいたいがどうか,と話があり,まだ本研究所に赴任して間もない小生は直ちに,出席させて下さいと云ってしまいました。

 その後冷静に考えてみたら,初めての国際会議への出席,もちろん会話は English どうしよう 管理部内の8人会(メンバーは小生,連携協力企画官,各課長の8人# 私が赴任してから各課の連絡を密にしようと毎週月曜日に開催することとした打合せ会# )に相談したところ,国際会議の窓口でもあり英会話に自信のある国際調整課の鎌田補佐と一緒に出張したらどうかと,暖かい進言を頂き一件落着。

 それと前後して西田所長,対外協力室の的川教授よりスイスに出張するのだから,ESAの施設であるESTEC(欧州宇宙研究技術センター)を訪ねたらどうかと,これまた暖かいお言葉を頂き,オランダ・スイスの二ヵ国の出張となりました。

 まずIACGとは何か。的川メモより:ハレー彗星を接近観測するために,世界の科学者が協力する目的で,つの機関(NASA・ESA・Intercosmos・ISAS)がハレー彗星に探査機を送り,探査ミッションの連携協力を協議するため宇宙科学関係機関連絡協議会(IACG:Inter - Agency Consultative Group )を始めました。

 第一回目の協議会は,パドヴァ(イタリア)で開催され,原則として4機関の輪番で開催を担当することとなっています。

 1986年にハレー彗星が去った後の第六回目の協議会(パドヴァ・ローマで開催)終了後,ローマ法王パウロ2世が出席者全員をヴァチカン宮殿に招待したことは,有名な話です。この会議で今後も宇宙科学の領域で協力の柱を定めてIACGを続けることとなり,Group の後に for Space Science として現在のIACGがスタートしました。協力の柱は「太陽地球系科学」(宇宙プラズマ物理学)でした。世界中の太陽地球系科学ミッションが一段落した1996年ケープカナベラル(アメリカ)で開かれたIACGにおいて,次の協力の柱を「惑星探査」にすることが決定されました。

 現在のIACGの組織は総会と重要な協力テーマを議論するつのワーキング・グループ(WG - 1:太陽系探査,WG - 2:太陽地球系科学,WG - 3:データ・アーカイヴィング,WG - 4:ネットワーク)とつの小委員会(P - 1:高エネルギー天体物理学,P - 2:赤外線・サブミリ波天文学,P - 3:電波天文学)から成っています。

 宇宙科学では各国が激しい競争の中で国際協力が飛躍的に進んでいます。日本の宇宙科学をバランスよく発展させるためには,世界各国の動向を的確に把握しておく必要があります。そのためにはこの協議会を通じて正しく認識できることは最大の成果となっています。

 又日本の宇宙科学は,予想よりずっと早く世界的なレベルに達し,すでにX線天文学,宇宙プラズマ物理学,太陽物理学,電波天文学の分野のように世界をリードする実績をあげています。今後も惑星天文学,赤外線天文学等の分野でも観測ロケットやSFUなどの成果を基礎にした意欲的な計画が準備されていて,宇宙科学研究所には,単にIACGのメンバーというだけでなく,ますます強力なリーダーシップを発揮するため国際的に大切な役割があると言えます。今回のIACG(メンバーは,NASA,ESA,RSA,ISAS)にISSI(国際宇宙科学研究所)の全面的な協力を受けて開催されました。

 この国際会議に参加させて頂き各機関の研究者が緊張しているものの昔からの知人のように熱心に明るく協議している様子は,私の想像した重々しい国際会議と違い,研究者が,各々の研究の競争の中で真に心を許した友人として討議をしておられました。このような会議が本当の国際協力であり,宇宙科学の飛躍的発展に寄与するものと確信しました。

 このほかにESA1施設であるESTECの博物館を訪れ,解り易く整然と陳列され全部見学するのに半日以上は必要な程の内容の充実に驚きました。又ESTECに隣接してゴルフ場があり広大な敷地と研究者用宿泊施設の中にバス停が複数あるなど大変羨ましく思いました。

 最後にIACG出席の本研究所の先生方とレセプション叉は夕食の際色々と話しをさせて頂きありがとうございました。又ISSIの事務局の皆様お世話になりました。私とお話をしてくださいましたISSI Dr. V. MannoNASA Dr. C. PilcherDr. J. Green 氏サンキュー。

 個人的にはオランダでは車庫入列車乗車,防寒用品調達,飾り窓,観覧車搭乗事件等,スイスでは請求書置き忘れ事件,又出張を通じて二人の美人遭遇等エピソードが楽しい思い出となって残りました。

   ―来年の沖縄開催の成功を祈念して―

(きたはら・いさむ)


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