No.199
1997.10


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平成9年度第2次大気球実験

 平成9年度第2次大気球実験は,平成9年8月31日から9月22日まで三陸大気球観測所において実施された。放球した気球は,B5型1機,BT15型1機,BT5型1機,BT1型1機,EV1型1機の計5機であった。尚,当初予定していたB150-1号機は台風19・20号のため待機中に上層風が長時間観測・回収に適さなくなったため中止とした。

 BT5-14号機では,東北大学が開発した太陽紫外光の吸収を利用した光学式オゾンセンサーを用いて成層圏上部までの夏期オゾンの高度分布と経年変化の観測が行われた。本実験により,4年連続同時期におけるデータの取得に成功した。

 BT15-2号機は,東京大学が開発した観測器によって35kmから43.7kmの高度領域における酸素原子・オゾン密度の同時観測に世界で初めて成功した。その結果,この高度領域におけるオゾン光化学を理解するための貴重なデータが取得できた。

 BT1-1号機は,國學院大学と国立極地研究所が開発した2波放射計を用いて成層圏二酸化窒素の高度分布を測定に成功した。さらに,レベルフライト時に日没をむかえたため,その影響による密度変化の測定も行うことができた。この型の測定器による二酸化窒素の観測は初めてであり,成層圏オゾンの経年変化を研究するうえで貴重なデータが取得できた。


 EV1-1,B5-137号機は,将来の長時間観測用気球として開発を行っている圧力気球の飛翔性能試験であった。前者はエバールフィルムを用いラップシール法で製作した気球であり,後者は排気口に取り付けたマグネット磁石によって自動的に気球内圧力を調整する気球であった。前者は予定高度まで上昇し,予想破壊圧を示した。このエバール気球は従来の10倍の大きさがあり,エバール気球の実用化・大型化にむけた第一歩である。後者は気球内圧力が予定の値に達せず所期の目的を果たすことができなかったが,2機の実験により圧力気球の開発に新たな発展をもたらすことになった。
    薄型高高度気球の放球

(山上隆正)

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MT-135打上げ


 66号機は9月8日,67号機は9月9日の11時に鹿児島宇宙観測所より発射された。7日夜の嵐のような風雨に明日の天候が心配されたが,両日とも風のな[写真説明]MT-135-66号機発射の瞬間い穏やかな日となった。両機ともに,飛翔は正常で,66号機については高度50kmから,67号機については,52kmから5kmまでのオゾン密度,風向,風速および気温の観測データを得ることが出来た。
   MT-135-66号機発射の瞬間

 両機のかみ合わせ試験を7月29日〜8月1日に行った。その結果,いくつかの不具合が発生し,それらを修理,または破損部品の交換を行って,8月18日〜19日に再度,かみ合わせ試験を行った。振動,衝撃試験とパラシュートとオゾン観測器に100Gの衝撃試験を行ったが,何の問題もなく無事に終了した。


 MT-135の今後の打上げは,なるべく観測所の職員に行ってもらうことになった。そのためには,まずロケットをよく知ってもらわなければならず,かみ合わせ試験にも参加してもらった。

 MT-135は,小型ロケットながら,脱頭,パラシュート放出,温度センサー放出等の複雑な機構を有するため,ネジ一つ締めるにも,丁寧に作業を行っていた。こうした積極的な参加のためであろう,打上げ後のどの職員の顔にも生き生きとした表情が見られたのが忘れられない。

(中村良治)

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スエーデン科学アカデミー Fredga 前総裁来所


 スエーデン科学アカデミーの前総裁で,現宇宙科学部長の Kerstin Fredga 博士(写真中央,黒いドレス)が9月17日に来所された。今回の来日は学術振興会の招待によるもので,東大など多数の機関を駆け足で訪問する忙しい日程の一部である。スエーデン科学アカデミー総裁といえばノーベル賞の元締めということであろうが,もともと天体物理学を専門にしておられた方なので,奥田教授等が宇宙研の赤外線,X線,および電波天文学の最近の成果をご紹介し,また鶴田教授がPLANET-Bなどにおける宇宙研とスエーデンの協力についてお話しした。スエーデンの宇宙科学者はオーロラ現象だけでなく惑星プラズマの研究にも立派な実績があり,協力の成果が期待される。

(西田篤弘)

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宇宙推進研究施設安全祈願祭

 駒場キャンパスの耐爆実験関連施設が,東京大学より「駒場IIキャンパスの施設整備についての協力依頼」の要請に基づき,あきる野市菅生の細谷火工(株)所有地の一部へ移転することとなり,8月下旬にこの施設のための工事契約を締結し,9月19日(金)に工事の安全と建物が無事完成することを願い「安全祈願祭」が現地で行われました。


 前日までは台風20号が直撃する天候でしたが,関係者の普段からの熱意が通じたのか当日は式典前に雨も上がり上々の式典日和でした。式典は施工業者をはじめ,宇宙科学研究所からは西田所長,高野雅弘教授,松本管理部長,新谷主計課長,佐藤施設課長等の列席のもと,西田所長の鍬入れや玉串奉奠等により厳かに行われました。なおこの施設は敷地面積約2,000F,建物床面積約700Fで平成10年3月末に完成予定です。


あきる野市の移転予定地  

(沢口忠司)

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飛翔体環境試験棟床面改装工事完了

 ロケットや衛星の機械環境試験,組立試験,熱真空試験等でお馴染みの飛翔体環境試験棟(C棟)内の3つの試験室の床面改装工事が完了した。長年にわたっての使用で,塗装面の劣化が進行し,年々厳しくなる衛星等からの清浄度要求に耐えられなくなったため実施したもので,本工事により塵埃の発生がかなり改善されるものと期待される。同種の改装は衛星組立試験室(クリーンルーム)と衛星制御系試験室で実施した経験があり,そのときのデータではクリーン度(一定体積内の塵埃の数)が約一桁改善されている。実際に達成されるクリーン度は清掃の頻度や入室管理などに大きく依存するが,一方では維持管理に必要なコスト低減や利用し易さも重要で,今後の使い方については関係者間で合理的に決める必要がある。

(橋本正之)



 実施担当の施設課と研究部門との打合わせでは施工時の埃対策が心配であったが,施工会社に飛翔体環境試験棟での試験目的などを十分に説明した結果,埃対策から工期に至るまで満足の行く工事が実施された。これは施設課と研究部門の密接なコミュニケーションの賜物で,施設課も少人数で頑張ってはいますが,何分業務量が多いため今後とも色々と各方面のご援助を頂くことも多いと思います。良い環境で研究・実験を行うためには予算を確保しなければならず,このためには宇宙研のアピールも重要な要素となります。飛翔体環境試験での実験・研究により対外的にもアピール出来る成果が生まれることを期待します。

(石井一生)

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VSOPチーム, 波長6cmで クェーサー核の撮像に成功

 電波天文衛星「はるか」は,波長6cmの電波で,世界の電波望遠鏡群と組んで,クェーサー核の画像を作り出すことに成功しました。これによって,7月初めに発表した波長18cmのものに較べて,更に3倍の解像度(十万分の33秒角)を達成しました。今回の解像度は,ハッブル宇宙望遠鏡の0.1秒の解像度の約300倍の性能がありますので,ハッブル宇宙望遠鏡の1画素を10万画素まで分解できるという事です。

 実験は,7月5日,電波望遠鏡衛星「はるか」とアメリカのテレメトリー2局(西バージニア州グリーンバンクと,カリフォルニア州ゴールドストーン),VLBAという電波望遠鏡群(8000kmにひろがるVLBI専用電波望遠鏡群の25mアンテナ10局)との間で行われました。

 観測天体は,へびつかい座のクェーサー1741-038です。60億光年ほど遠方の活動的な銀河の中心核ですが,電波でみた強烈な輝きは,中心にひそむ巨大ブラックホールからのジェットを直視していると考えられます。このような天体は,今後,「はるか」のVSOP計画が狙う大きなターゲットです。

(平林 久)

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