No.199
1997.10

ISASニュース 1997.10 No.199

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最強の液体燃料

森本雅樹

 鹿児島は「うちゅうけん」です。ISASの「宇宙研」とは違います。宇宙基地が二つとも鹿児島県にあるから「宇宙県」です。県都鹿児島の中心「天文館」は薩摩藩の天文台があり独自の暦を編纂したり,かなりのレベルであったようです。天文館通りを歩くと道に敷いたタイルやアーケードの天井に星座の絵柄がありなるほど宇宙県,と納得できそうです。

 が「しかし」です。天文館が昔の天文台と知る人は少ないし,跡地には小さな石碑と立て札があるだけです。県内産業に特に宇宙指向はありません。中高校などの宇宙教育も特にこれといったものはなく,鹿児島大学でも理学部物理科学科の軒を借りて「宇宙コース」が今年からやっと細々誕生という程度です。

 「しかし」の次は「ところが」です。全国星空コンクールでは殆ど毎年鹿児島県のどこかが日本一,ベストテンに必ず2〜3カ所入ります。「宇宙少年団」活動も活発,星空観望会どこでも大入り,宇宙関連の講演会や催しもいつも盛況です。かく言うおじさんも産業廃棄物協会に PTA連合会総会,志布志メダカの学校,星が峯小学校創立何十周年記念式典,看護婦初任者研修会等々あらゆる会合で「宇宙の話を」とよばれます。「政治」「産業」「教育」といったお上からの筋では「宇宙県」は「しかし」でも草の根の方から見れば「ところが」なんです。

 鹿大の教養科目は「うちゅう」で一杯です。「宇宙科学」「宇宙論」はもちろん「宇宙と生命」「宇宙旅行」しまいには「焼酎(しょうちゅう)」まで,年間13コマ出ています。もちろんどの講義も学生の人気は上々です。講義の一部は複数学部の教官が交代で出講する形式です。企画立案,講義の進行,レポートの処理と成績評価などなど大変ですが,自分の聞きたい話が聞ける,結構おもしろいレポートが出てくるなど労力に対する見返りも上々です。交代で講義を担当した教官の間でも好評です

 さてこの宇宙と焼酎,共通点は「うちゅう」の音,鹿児島に関係,だけではありません。まずロマン,それもとらえどころのないロマン,透明だが含蓄ありなどなど一杯です。さらにどちらも科学,技術,産業,文化,社会,歴史などなどいろんなとらえ方ができ,それぞれに広く深い展開があります。教養科目には最適の主題である,ということができるでしょう。鹿大教養科目は「うちゅう」で一杯です。

 焼酎を飲むと心は宇宙へ,足も宇宙歩行になり,それも飲む場所は県内最大の繁華街「天文館」です。おじさんはあちこちでの講演で,宇宙でガスの雲が収縮して星が出来る過程をエチルアルコールの分子式から説き起こすことにしています。題は「焼酎が星を作る」です。宇宙と焼酎の接点,宇酎に一杯ですね。

 1993年には鹿児島で日本天文学会が開かれました。「宇宙に関連の銘柄の焼酎を提供いただきたい」と県内の酒屋さんにお手紙を書いたところ「里の曙」「七夕」「宝星」「天文館」「芋ねぇちゃん」などたくさんの寄付があり懇親会は大盛況,でも半分も飲みきれずおみやげに出したほどです。ISASニュースの読者にもこの懇親会を覚えておられる方があるのではないでしょうか。

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 エッ何で「芋ねぇちゃん」が宇宙に関連?お酒屋さんいわく,「それは宇宙人のことだ」ってさ。

 「いも焼酎」万歳,宇宙研もご愛用「最強の液体燃料」万歳!
 ウかんむりにチュウこれは「うちゅう」とよみます。

(鹿児島大学教養部 もりもと・まさき)


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