No.197 |
ISASニュース 1997.8 No.197
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衛星「はるか」の8mアンテナが受信したデータは,西バージニア州グリーンバンクのテレメトリー局に中継されました。共同観測局としてVLBA(8000kmにひろがるVLBI専用電波望遠鏡群の25mアンテナ10局)が使われました。天体1519ー273の観測実験では,VLA(ニューメキシコ州の25mアンテナ27基がまとまって130mアンテナ相当として稼働)も,参加しました。各局で記録された受信情報をもとに,アメリカ国立電波天文台ソコロ(ニューメキシコ州)の相関装置が,データの合成(相関)を行い,電波画像つくりに成功しました。
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観測された天体は,どちらもクェーサーで,遠い活動的な銀河の中心核です。
PKS1519-273では,赤方偏移が測られておらず距離が不明ですが,中心部分が非常に狭く,ほとんど分解されないことがわかります。見えている形は,全体のシステムで決まるビームの形と同じです。
この天体は以前からとてもコンパクトな天体である事が知られていました。このため,1986年に米日豪のチームで行われた,TDRS衛星を使った初のスペースVLBI予備実験でも,この天体が観測されました。中心部は1兆度を超える輝きです。いちばん最初に,このように観測しやすく,システムの性能が見やすい天体を選ぶ事が重要です。
これにたいして2番目に観測されたJ1156+295では,(宇宙論のモデルによりますが)距離が60億光年ほどです。左上に(天球上で北東に)むかって中心からカーブを描いて間欠的に,250光年ほどの距離まで,ものが飛び出しているように見えています。これは薄いプラズマが中心の明るいところから飛び出しながら電波で光っているのだと考えられます。
どちらの場合も,中心にひそむ巨大ブラックホールが関与していると考えられています。今後,VSOP計画が狙う大きなターゲットです。
「はるか」を除いた地上の電波望遠鏡だけでも画像をつくる事ができます。こうして画像を比較すると,解像度が数倍にあがり,細かな構造が見えるのがわかります。表紙の4組の画像では,「はるか」が参加した今回の結果(右図)と較べるために,「はるか」のデータを除いたもの(左図)と比較しています。
今後の課題は,より高い周波数での観測を成功させる事,衛星,テレメトリー局,参加電波望遠鏡,相関局がスムースに運用される事,これらを結ぶデータの流れと処理が確立する事です。
5GHz帯でも干渉実験に成功しました。続いて映像もでました。最高周波数の22GHz帯では,7月に入って「はるか」が天体からの水蒸気のメーザーの電波を受信できました。こちらは,干渉,映像が困難で大きな課題です。
今後,より短い波長での観測により,最高では波長1.3cmで,更に13倍に解像度があがります。その時には,ハッブル宇宙望遠鏡の1画素を170万画素に分解するという性能が実現します。
これは人類が平和的につくる巨大な電波の瞳です。世界5ヵ所のテレメトリー局,世界40局,15ヵ国の電波望遠鏡群,世界3ヵ所の相関処理センターというひろがりをもつ,国際的な試みです。今回参加したVLBA10局の例では,今後のVSOP計画に30パーセントの時間の参加を表明しています。
(ひらばやし・ひさし)
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「はるか」,VLBA,グリーンバンク,テレメトリ局の協力によるクェーサーの観測
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