No.196 |
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さて広大なプラズマ宇宙の構成要因である荷電粒子「イオン」や「電子」の個々の運動の様子を見てみましょう。複雑な現象を生むプラズマ過程も,個々の粒子の振る舞いは,私たちが学校で学んだ電磁気の性質に従っているだけです。もし「電場」があると「イオン」は電場方向に「電子」は反対方向に運動し「電流」を作りますが,その粒子の運動によって作られる電流は元の電場を打ち消す方向になっています。また「磁場」が存在すると「イオン」は時計回りに「電子」は反時計回りに旋回運動し,この場合も粒子は元の「磁場」を打ち消す方向に運動しています。(どうも荷電粒子は保守的で現状維持を好むようです。)もう少し専門的に言うと,「イオン」や「電子」の粒子は,マクスウェル方程式とローレンツ方程式と呼ばれる非常に簡単な式に従って運動しているだけです。しかし,これらの個々の粒子が一丸となって織り成すプラズマ集団運動は,個々の粒子の運動だけからでは想像もつかないまったく新しい現象を作ります。1928年に Langmuir が,現在プラズマ振動として知られているプラズマ中での縦波の波動現象を初めて発見しプラズマ状態の重要性を指摘し,また1942年には Alfven が低周波の横波の波動(アルフベン波)を理論的に予想し電磁流体力学の基礎を作りました。これらのプラズマ集団現象に伴う波動現象を媒介として,ある状態になるとプラズマに貯えられていたエネルギーを爆発的に開放することがあります。また宇宙線などの超高エネルギー粒子を作ることもあります。(集団現象となると現状維持を好むわけではないようです。人間社会で一人一人の性格からは考えられないことが,集団行動になると現れるのと似ていませんか。)これが華 やかな宇宙プラズマ現象となって我々の興味を引きます。
華やかなプラズマ集団現象は,理論的にはいくつかの素過程に分類されます。ビ ーム不安定などの様々なプラズマ不安定を初め,磁気リコネクション,衝撃波などの素過程が基本であると認識されており,これらの素過程は色々な天体現象に適用されて現象の理解が進んできました。例えば,磁気リコネクションは太陽コロナの活動的な現象を生むことが「ようこう」衛星の観測で明らかになってきており,また地球の夜側磁気圏ではオーロラの起源となる高エネルギー粒子が磁気リコネクションで作られていることが「ジオテイル」衛星のプラズマ直接観測で明らかにされてきています。しかし,我々のプラズマ集団現象に対する素過程の理解は,まだ観測結果を十分に説明するには至っていません。
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自然界でのプラズマ物性は,観測的には地球磁気圏や惑星磁気圏でのプラズマの直接観測によって最もよく研究されていると言ってよいでしょう。宇宙研では,地球磁気圏を観測している「ジオテイル」「あけぼの」衛星をはじめとして火星大気・磁気圏を観測する「PLANET-B」計画などがあり,これらの観測研究では,個々の地球物理的プラズマ現象の面白さからくる探求だけではなく,広大な宇宙で演じられているのと基本的に同じ素過程を詳しく研究するという位置づけもあります。宇宙での不思議なプラズマ集団現象の研究は,理論的にも観測的にも今後新しい発展が期待される分野だと思います。
(ほしの・まさひろ)
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