ISAS流 パソコン活用術 1997.3 No.192

No.192
1997.3

ISASニュース 1997.3 No.192

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その五 実験室における活用

斎藤義文

 我々の実験室はD棟の3階(新D棟)にあり,この実験室のクリーンルーム内で様々な実験装置の制御やデータ収集を行うためにパソコンを使用しています。我々の実験室では,衛星やロケット搭載用の低エネルギーの荷電粒子や中性粒子の観測器の開発を行っています。これらの搭載機器を開発するためには,実験室で実際に荷電粒子を測定器に入射してその特性を測定するための較正実験装置が必要ですが,主にこの較正実験装置のコントロールをパソコンで行っています。具体的には荷電粒子を発生させるためのイオンソースのコントロールに1台(写真 右),真空チャンバー内に置いた観測器の制御とデータ収集のために1台(写真 左),そして最近実験室に導入したCAMACデータ収集システムの制御用に1台の計3台のパソコンを使用しています。

 イオンソースのコントロール用パソコンは,主にイオンソースに供給する8つの電源のコントロールに用いているのですがこれに用いているのはなんと今では殆ど見かけなくなってしまった8インチのフロッピーディスクドライブのついた初代PC-9801で,一時期よく使われていたTURBO PASCALで作成したプログラムが今でも元気に走っています。昔からあるもう一台のパソコンは真空チャンバー内に置いた観測器に与える電圧の制御,観測器の方向を変えるための回転台の制御,そして取得したデータの表示,ファイルへの保存などを行います。このパソコンは先のイオンソースコントローラに使っていたよりは新しい80286マシンのPC-9801RXを用いています。このパソコン上で走っているプログラムはGEOTAIL衛星に搭載した低エネルギー粒子観測器(LEP)の準備を行なう直前に私の先輩と,私の二人で作りました。プログラムはTURBO Cを用いて作ったのですが,最近のようにGUIが簡単に使えるわけでもなくかなりの作業量になりました。急いで作る必要があったため,徹夜作業でプログラムをした覚えもあります。最近導入した3台目のパソコンは80486DX2 66MHzのPC/AT互換機でWindows3.1上で作製したプログラムを用いてCAMACデータ収集システムのコントロールに使用しています。さすがに昔からある2台のパソコンよりは速いのですが使っているOSも同時に重くなっており,もう少し速いパソコンを使いたいところです。

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 さて,このようにして用いてきた我々の実験室のパソコンですが、最近のパソコンの進歩は目まぐるしいものがあり,特に日本におけるPC/AT互換機のここ数年の普及は少し前には考えられなかったぐらいです。これだけ高性能のパソコンが近くに現われてくると,実験室の制御用パソコンにもより高性能なものを用い,制御システムもより使いやすいシステムに変えていきたいという欲望にかられてしまいます。その上,そろそろ老朽化のため,イオンソースの制御システムを新しいものに置き換える必要がでてきました。そこで現在我々は,今回お話しした昔からある2台のパソコンを最近の高速なPC/AT互換機パソコンを用いて1台に統合し,より操作性のよいシステムを作るべく作業を進めています。最近ではWindowsなどのように,少し重いのが難点ですが手軽に操作性のよいプログラムを作ることのできるGUIを備えたOSがありますので今度はこれらを用いてより使いやすいプログラムを開発していく予定です。さらに我々の実験室にはクリーンルームの中までイーサネットのケーブルがつながったため,これの有効利用も考えています。従来,取得したデータはフロッピーディスクに入れてA棟まで運びそこでデータ処理をするというようなことをしていましたが,今後はイーサネット経由でデータを運ぶことができるようになる予定です。また,長時間データを監視する必要があるような場合に,A棟の研究室に居ながらにしてリアルタイムでデータを取得することも可能になります。このようにパソコンの進歩に応じて実験室における機器制御もより使いやすく便利なものになっていくものと期待しています。

(さいとう・よしふみ)


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