58イオンエンジン Yoshino-1(110秒)

1988年ごろ、宇宙科学研究所で大学院生の実験に使われた最初のマイクロ波放電式イオンエンジンで、宇宙研の所在地・由野台(よしのだい)にちなんでYoshino-1(よしのわん)と名付けられました。

イオンエンジンは、推進剤をプラズマ化してプラスとマイナスのイオンに分け、プラスのイオンを静電気の力を使って加速させるエンジンです。

通常のイオンエンジンは放電によってプラズマ化してイオンを生成しますが、このイオンエンジンはマイクロ波という電波を使った放電によってプラズマ化してイオンを発生させます。

Yoshino-1は、マイクロ波でプラズマを発生させた場合の耐久性やコストを研究するために製作されました。

マイクロ波を出す電子管は、安価で入手が簡単な中古の2.45ギガヘルツマグネトロンが使われました。2.45ギガヘルツという周波数は、電子レンジと同じ周波数です。

エンジンの円筒形の部分は内径が208ミリメートルあり、内側の壁はマイクロ波の壁面損失を減少させるために金メッキされています。

円筒の出口部分にはグリッドと呼ばれる2種類の電極が取り付けられています。

この2枚のグリッドは簡単に手に入り、安価なパンチングメタルが使われました。

エンジン内部のイオンの状態を調べるため、グリッドに直径10ミリメートルほどの穴が開けられています。