今までの質問と答え
衛星からテザー(ひも)をつけた孫衛星を投げ出すとしたら、どのような問題が考えられますか?

2000.7 H.M. 10歳・男・千葉市

うーん、いい質問だね。実は私たちも高度200km以下の大気の観測に興味を持っているんだ。これくらいの高度は、大気が濃くて抵抗が大きく、衛星が長い間にわたって観測できないので、これまでに観測されたデータが少ないし、また大気が他の現象に対して大きな影響を及ぼしているので、ぜひとももっともっと調べたい高度なんだよ。
だから大きな母船から長さ約100km、直径約2〜3mmくらいのひも(これをテザーと呼んでるんだ)の先端に小さな孫衛星をぶらさげて、高度約120km辺りをずっと探査したいと思っている仲間もいる。その計画について少し話すことにするね。

この観測のためには、孫衛星を母船から地球に向けて放出する必要がある。まずはじめは、孫衛星につけた窒素ガスのジェットで地球の中心に向け衛星を放出する。すると衛星は母船より前に進む。この時点でひもを少しひっぱると孫衛星は減速され、遠心力より地球の重力が大きくなるので、衛星はますます地球に引っぱられて落ちてゆく。この研究は「はじめ」がかんじんなんだ、はじめに繰り出すときに、ひもを慎重に制御して、母船にぶつかることを避けないといけないからね。母船にぶつからないように慎重にある程度まで繰り出されると、後はかなり速く降下させることができるんだよ。でも完全に降下し終わるまで10時間〜20時間ぐらいは必要なんだ。目標の120kmに近づくと、大気の抵抗のために孫衛星は、45度くらい母船の後ろに位置するようになる。もっとも夜と昼では大気の密度が違うから、この角度も一日の間に変化していく。
実は120km以下も研究したいんだけど、大気抵抗のためにひもが切れてしまったり、孫衛星の温度が上昇してして測定器が溶けてしまったりするので、この方法による研究は、120kmが最低高度だろうね。
そうだ、大事なことを言い忘れていたよ!今まで言ったのは赤道上空でひもをのばしていく場合だけど、南極や北極などの極域では、進行方向の力にくわえて、横からの風の影響も考える必要があり、ひもの制御はさらに複雑になるからやっかいなんだ。



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