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「かぐや(SELENE)」の運用状況と今後の予定

「かぐや」最新情報

「かぐや」は、2ヶ月にわたって行ってきた搭載機器(バス機器、観測機器)の初期機能確認を終了しました。
初期機能確認を行った15種類の観測ミッションの状況は下に示すとおりで、ほぼ計画通りの確認結果が得られたことから、12月21日に定常運用へ移行することを決定し、今後、10ヶ月間の定常運用より「月の科学」等のためのデータを取得していく予定です。

なお、一部で所期の性能が出ていない蛍光X線分光計および粒子線計測器については、引き続き原因究明を行うとともに、定常運用の中で対処していく予定です。(2007年12月25日更新)

初期機能確認結果

  1. 主衛星および子衛星の初期機能確認を予定通り終了した。
  2. 各観測ミッションについて、電気的、熱的および観測性能の評価を実施した。その結果を以下に示す。なお、一部の観測ミッションにおいて定常運用への引継ぎ事項が識別されたが、定常運用開始に影響がないと判断したことから、定常運用へ移行する。
観測ミッション 初期機能確認結果 定常運用への引継ぎ事項
蛍光X線分光計(XRS)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、通常観測モードでの利用を予定していた4つのCCDを用いた観測は計測ノイズが大きく、所期の性能が得られない可能性があることがわかった。このため、計測ノイズを地上で低減処理する方法について検討を進めている。また、観測に用いるCCDを1つにするとノイズの影響が改善され、空間分解能は半分程度となるものの目標とする元素分布の観測が見込める。
当面1つのCCDで定常運用を行うこととする。あわせて、事象についての原因究明を継続する。また、計測ノイズの低減処理についての検討を継続する。
ガンマ線分光計(GRS)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、正常に動作し、月からのガンマ線を検出し、元素分布の調査ができることを確認した。
なし
マルチバンドイメージャ(MI)
スペクトルプロファイラ(SP)
地形カメラ(TC)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、正常に動作し、月の地形データおよび分光画像・データを観測し、月の標高を含む地形および鉱物分布を調べることができることを確認した。
なし
月レーダーサウンダー(LRS)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、自然電波観測は地球オーロラキロメータ放射(AKR)や太陽と月の相互干渉による電波が受信できており、所期の性能を有していることを確認した。また、サウンダー観測では、月面エコー波を正常に受信できており、月の表層構造の調査ができることを確認した。
なし
レーザ高度計(LALT)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、正常に測距データを受信し、月の高度の調査ができることを確認した。
なし
月磁場観測装置(LMAG)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、LMAGは所定の分解能で、正常に磁場データを取得できていることを確認した。
なし
粒子線計測器(CPS)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、月面上のラドンが発生するアルファ線および月周辺の放射線環境を計測する高エネルギー粒子のプロトンと電子の検出ができることを確認した。一方、高エネルギー粒子のうち、高エネルギー重粒子、低エネルギー重粒子の検出については、検出開始から約2時間後に検出が困難となるという事象が見られる。これは、信号処理部の電圧制御回路の温度が高温になることにより発生すると推定される。したがって電圧制御回路が低温時には、高エネルギー重粒子、低エネルギー重粒子についても観測データの取得が見込める。
定常運用において、信号処理部の電圧制御回路の温度をモニタしつつ、定常観測を行う。あわせて、事象についての原因究明を継続する。
プラズマ観測装置(PACE)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、月面から飛来する電子および太陽風イオンを計測できていることを確認した。
なし
電波科学(RS)
  • (1)観測性能評価の結果、VRAD衛星(おうな)を使った電波科学のための観測ができることを確認した。
なし
プラズマイメージャ(UPI)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、2つのセンサ(TVIS(可視)、TEX(極端紫外線))は正常に機能し、可視光及び極端紫外線による撮像ができることを確認した。
なし
リレー衛星中継器(RSAT)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、月の裏側の重力場データ取得ができることを確認した。
なし
衛星電波源(VRAD)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、月の重力場データの取得ができることを確認した。
なし
高精細映像取得システム
(HDTV)
  • (1)電気的、熱的に要求性能を満たしていることを確認した。
  • (2)観測性能評価の結果、正常に動作して月面や地球を撮影し、その画像データを伝送できることを確認した。鮮明な画像が取得できている。
なし

月への道のり

日時 実施内容 図番号
9月14日10時31分01秒 打上げ 1
9月14日11時44分 太陽電池パドル展開 4
9月14日18時52分 ハイゲインアンテナ展開 5
9月15日1時32分 軌道投入誤差修正マヌーバ(ΔVc1)

※打上げ後投入された軌道の誤差修正、軌道面変更を目的とした軌道制御

6
9月16日8時0分 軌道制御誤差修正マヌーバ(ΔVa1)

※ΔVc1の軌道制御誤差を補正する軌道制御

7
9月19日9時52分 周期調整マヌーバ1回目(ΔVp1)

※軌道の周期を調整する軌道制御

8
9月20日4時59分 周期誤差補正マヌーバ(ΔVc2)

※ΔVp1の軌道制御及び軌道決定の誤差を補正する軌道制御

9
9月29日11時58分 周期調整マヌーバ2回目(ΔVp2)

※軌道の周期を調整する軌道制御

10
9月29日 ハイビジョンカメラ(HDTV)により、地球の動画像を取得 11
10月4日6時20分 月周回軌道投入マヌーバ(LOI1)月周回軌道への投入

※地球周回軌道から月軌道へ投入するための軌道制御

12
10月6日-7日 月周回軌道変更マヌーバ(LOI2,LOI3)

※投入された月周回軌道の高度を下げる軌道制御

13,14
10月9日9時37分 遠月点約2400kmの軌道において、リレー衛星「おきな」を分離 15
10月10日9時24分 月周回軌道変更マヌーバ(LOI4)

※投入された月周回軌道の高度を下げる軌道制御

16
10月12日13時28分 遠月点約800kmの軌道において、VRAD衛星「おうな」を分離 17
10月14日-18日 月周回軌道変更マヌーバ(LOI5,LOI6)

※投入された月周回軌道の高度を下げる軌道制御

18,19
10月18日 定常観測軌道(80km×120kmの極軌道)へ主衛星を投入 20
10月19日 月指向3軸姿勢制御、太陽電池パドル太陽指向制御を開始
10月20日 クリティカルフェーズ終了、初期機能確認段階開始

※日時は日本標準時

用語解説
ΔV :速度の変化量を意味する。デルタブイと読む。
HGA :地球と交信するためのアンテナ。ハイゲインアンテナ(高利得アンテナ:Hi-Gain Antenna)の略。
マヌーバ :操作(Maneuver)。ここでは進力を発生する装置 「スラスタ」を噴射して、機体の姿勢を変えたり減速したり加速したりすること。

ミッションプロファイル

2007年10月1日

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