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月探査シンポジウムが開催される

 アメリカの新宇宙政策や中国、インドの月探査計画の発表など、国際的に月探査への関心が高まっています。一方、日本も探査機「ルナーA」と「セレーネ」を打ち上げる計画です。国内、国際的な月探査の流れの中で、日本の月探査を今後どのように捉えていくべきか、月面活動は人類にどんな未来を拓くのか。1月23日、東京・大手町の経団連会館で、このようなテーマを議論するシンポジウム「月で拓く新しい宇宙開発の可能性と日本」が開催されました。

 当日は平日、しかも底冷えのする1日であったにもかかわらず、500人近い方のご参加を頂きました。改めて関心の高さを認識した次第です。プログラムは、最初に間宮馨・JAXA副理事長の開会挨拶があり、続いて五代富文・前IAF会長による基調講演「日本における月探査と将来展望」が行われました。これは日本の月との関わりを、遠く平安時代から遡って未来まで展望した講演でした。

 第1部「世界の月探査と将来戦略」では、アメリカ、ヨーロッパ、インド、中国の、現在月探査計画を進めている(実施している)国および国際機関から、実際の計画の責任者が出席し、最新の情報を説明しました (中国からは、残念ながら都合により出席ができなかったため、講演内容の代読となりました)。アメリカの新宇宙政策発表直後ということもあり、アメリカを含めた世界の月探査計画への関心は高く、参加者が熱心にメモを取りながら講演に聞き入る姿がみられました。

 午後に入り、第2部は日本の月探査計画の紹介になりました。水谷仁・JAXA宇宙科学研究本部教授からはルナーA計画の紹介が、JAXA宇宙科学本部の滝澤悦貞氏からはセレーネ計画が、松本甲太郎・JAXA総合技術研究本部チーフマネージャからは将来の月探査計画などについて、現状と最新情報が紹介されました。

 第3部、最後のセクションは、パネルディスカッションでした。「今なぜ再び月を目指すのか−日本の選択は?」というテーマの下に、科学、技術だけでなく、文化や経済という観点からも月探査を考えていこうという、このシンポジウムのいちばんのポイントになるコーナーです。パネリストは井田茂・東京工業大学助教授、海部宣男・国立天文台長、川勝平太・国際日本文化研究センター教授、野本陽代・サイエンスライター(宇宙開発委員)、松本信二・CSPジャパン社長、吉田和男・京都大学大学院教授。的川泰宣・JAXA広報統括執行役が、進行役を務めました。
 このパネルディスカッションでは、まず各パネリストが、月探査についてどのような意義を考えているかについて短く一人一人のプレゼンテーションが行われたあと、議論となりました。議論の大きなポイントとして、月を目指すという日本の国家戦略をどう立てるべきであるかということが話題になりました。その中で、有人を目指すのか無人で行くのか、また国威発揚ではない宇宙開発はどのような目標を持つべきか、と行ったような議論が次々に起こり、月探査という枠を超えて、宇宙開発全体の中で月探査をどのように捉えるか、パネリスト間で活発な意見交換が行われました。また会場からの質問も寄せられ、コストの限界がある中での宇宙開発をどのようにすべきか、といった議論が行われました。議論はさらに発展し、月探査や科学の具体的な意義や成果をもっと広報すべきであるというコメントもありました。
 最終的には、コーディネータの的川氏が「月を皮切りに、国民的な宇宙開発や宇宙科学への関心が一つのベクトルとしてまとまっていくようにしたい。そのためには、大学・産業界を含んだ質の高いメッセージを発信し、それを国民が支えていくムード作りが大切」という提言を行い、ディスカッションが総括されました。この議論を受けて今後、日本の月探査、宇宙開発がどうあるべきか、という議論が、一層広く沸き起こるのではないでしょうか。

 なお、下の「シンポジウム」のページでは、この講演のレポートや講演で提示された日本の月探査についてのプレゼンテーションなどをご覧いただけるように、現在準備を進めております。既にお申し込みが締め切られていた、遠方であった、あるいは平日だったためにお越しになれなかった皆様も、ぜひサイトにアクセスしていただき、一緒にこれからの月探査について考えていただければと思います。

2004年2月2日

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