舵面とエンジンを有する小型超音速飛行実験機の空力特性の計測

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研究申込者

棚次 亘弘(室蘭工業大学)

研究要旨

 1.エア・データ・センサに関する研究
 開発中の小型超音速機の飛行実験を行う際、機体の地面に対する位置・姿勢や速度を算出するGPSや加速度センサ等に加え、機体の対気姿勢・対気速度を算出する必要がある。本研究では飛行中にこれらの情報を取得するためのエア・データ・センサ(ADS)として、円錐状の先端部をもつプローブを製作し、遷音速風洞を用いてその特性を把握する実験を行った。図1に今回の実験で用いた風洞模型を示す。模型はφ15のADSと、機体の先端部分を模擬したφ100のノーズコーンから構成されている。
 図2に、機体の迎角を計測する際に必要となる、ADS先端部における上下の表面圧力差とマッハ数との関係を示す。機体がある迎角をもつと、先端部の円錐の上下で表面圧力に差を生じる。ADSではこの圧力差により機体の迎え角を算出する。今回の実験では先端部の円錐の半頂角を16と40の二種類を用意して様々な条件下で通風を行うことにより、遷音速領域(M=0.3〜1.3)では半頂角が16の円錐を用いた方がADS全体としての精度がよくなることが明らかになった。

   

      図1:ADS風洞模型      図2:先端部の上下の表面圧力差とマッハ数の関係


2.翼前縁を模擬した斜め円柱境界層遷移計測と主流の気流変動評価
 室蘭工大航空宇宙機システム研究センターで開発中の小型超音速無人機主翼の表面操作による動的空力特性制御の前段階として、翼前縁を模擬した斜め円柱境界層遷移計測と主流の気流変動評価を実施した。 図3はオイルフローを用いた主流に対して60度後退させた直径40mmの円柱表面の可視化写真である(マッハ数0.7, Po=150kPa)。主流は写真の右から左である。間隔が1mm以下の筋状の痕跡が多数確認される。これらの筋は、後退翼固有に現れる境界層の不安定(横流れ不安定)から成長した縦渦の存在を示唆しているが、このような比較的明確な痕跡はいつも得られたわけではない。その原因を調査するために、模型を取り外して模型指示棒に熱線風速計を固定し気流評価を実施したところ、マッハ数にもよるが主流に重畳した1.4%程度の残留変動が確認された。変動の大きい流れに晒された境界層は、微小攪乱から成長する飛行形態とは異なり、縦渦が十分形成されない、所謂バイパス遷移過程をとるものと推測している。


図3:後退円柱表面のオイルフローの結果(スケール位置が付着線)



Key words

Air Data Sensor, Transonic, Laminar Flow



2010年度の研究成果



利用期間

2010年11月 1日〜2010年11月12日

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