TSTO型宇宙往還機の空中分離時における空力干渉に関する研究

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研究申込者

麻生 茂 (九州大学)

研究要旨

 TSTO(Two-Stage-To-Orbit)型宇宙往還機システムは、一般的に大気圏内で超音速領域まで加速する役割の母機と宇宙空間でミッションを行う役割の子機で構成される2機を用いるシステムである。大気圏と宇宙空間、それぞれで使用する機体を分けることによりシステムの複雑さを緩和することが可能であることから、有力な将来の宇宙輸送システムの1つである。しかし、この輸送システム実現のための課題の1つに超音速領域における2機体の分離が挙げられる。それは、互いに生じる衝撃波の入射や干渉によって機体姿勢が不安定にとなったり、機体への大きな熱負荷が与えられるためである。分離時おけるこれらの課題に対して、世界的なTSTO型宇宙往還機に関する研究焦点は、流れ場、空気力、そして熱負荷の予測である。本研究ではさらに、機体形状を工夫することにより衝撃波干渉を低減することを目指している。そのため、2機体のうち、母機の断面形状に四角形、円形、三角形を用いることによって衝撃波干渉低減に有効な断面形状を見いだす。

6 - a) 実験模型と実験パラメータ
 実験では、2つのOrbiter模型と3つの模型を用いた。Fig. 1は模型の上面と側面から見た概略図を示す。またFig. 2~5は後ろから見た図とOrbiterとBoosterを風洞に設置した時の写真を示す。さらに、Fig. 6とTable. 1とTable.2には実験パラメータを示す。











6 - b) 自由流条件と計測項目
 自由流マッハ数4.0, 全圧力5.0×105 Pa, 全温度299.2 Kである。計測項目はOrbiterの形状により異なる。Table. 3はOrbiterの形状による計測項目を示す。


6 - c) 計測結果
ア) OrbiterWing Body形状


 Fig.8 はOrbiterの垂直力係数(上向きを正)とピッチングモーメント係数(頭上げを正)を 示す。また、図中NBはOrbiterのみで計測した空気力係数を示す。垂直力係数では、2つの三角形モデル(B3, B4)はOrbiterのみで計測した値よりも小さいこと、また2つの四角形モデル(B1, B2)は最も値が大きいことが明らかとなった。さらに、四角形モデルと三角形モデルをみると、今回の模型では翼の有無は値の変化に影響しないことが言える。
 ピッチングモーメント係数では、Orbiterのみでは頭下げであるが、どのモデルも頭上げモーメントが生じている。これは反射衝撃波が下面に入射しているためと言える。


 Fig. 9 は模型周りの流れ場を示すシュリーレン写真である。上から四角形、円形、そして三角形モデルの順に示す。四角形モデルでは、Orbiter先端で生じた衝撃波による 反射衝撃波がはっきりと確認できる。円形、及び三角形モデルでは、はっきりと確認できない。これは、Booster上面が平面ではないことから、反射衝撃波は機体幅方向へより広がるためである。これより、三角形モデルはこのモデルの中で反射衝撃波を最も低減しているといえる。



イ) OrbiterがHemispherical Body形状


 Fig. 10 はBoosterの垂直力係数(上向きを正)とピッチングモーメント係数(頭上げを正)を示す。図中、赤線は三角形モデル、青線は円形モデル、そして緑線は四角形モデルを示す。前年度までの計測に加えて本年度の計測によりOrbiterの衝撃波の影響を受けるOrbiterとBoosterの間の高さの範囲を得ることが出来た。h = 120.1 mm程度でBoosterのみの空気力の値に近づくことが明らかとなった。さらに、三角形モデルはすべての高さにおいて垂直力は最も小さいことが分かった。ピッチングモーメント係数においても、h = 120.1 mmでBoosterのみ値に近づく。また、どのモデルにおいても高さを増加させると頭下げから頭上げモーメントに変化する。これは、Orbiterの衝撃波の入射位置が重心位置の前後で変化するためである。


 Fig. 11模型まわりの流れ場を示すシュリーレン写真である。Orbiter先端で生じた衝撃波は、クリアランス高さが増加することにしたがってBoosterの後方に入射することが分かる。このため、衝撃波下流の高圧領域がBooster後方に移動することにより、ピッチングモーメントが頭下げから頭上げに変化する。また、空気力係数がh = 80.1mm程度でBoosterのみの値に近づくのは、この高さからOrbiterからの衝撃波入射 がほぼなくなるためである。

6 - d) まとめ

 OrbiterをWing BodyとHemispherical Bodyの2種類、Boosterを断面形状が三角形、  四角形、そして円形の3種類を用いて計測を行った。
1) OrbiterがWing Bodyの場合について、Orbiter の空気力計測と気流可視化を行った。
 ・三角形モデルは、Orbiterのみの垂直力よりも小さい値を得た。
 ・四角形、三角形モデルにおいて、今回の模型においては翼のあるなしは空気力の変化に影響を与えない。

2)  2) OrbiterがHemispherical Bodyの場合について、Booster の空気力計測と気流可視化を行った。
 ・Orbiterの衝撃波の影響はh = 80.1 mm程度までである。
 ・三角形モデルのどのクリアランス高さにおいても、垂直力係数が最も小さい。
 ・ピッチングモーメントが頭下げから頭上げに変化するのは、Orbiterの衝撃波入射位置が重心位置の前後で変化するためである。

Key words

shock interaction, separation, supersonic, cross sectional configuration of a fuselage



2010年度の研究成果



利用期間

平成22年 9月13日 〜 平成22年 9月17日

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