20世紀最後の皆既日食は、
大西洋からヨーロッパ・東欧・中近東にかけて見る事が出来ます。
太陽観測衛星「ようこう」も、
皆既帯の上空は通過するのですが、
衛星が通過する時刻と月の本影が通過する時刻が異なるため、
「ようこう」では皆既日食を観測する事ができません。
しかし、X線で見る部分日食を観測する事ができます。
下の図は、日食の予報情報と衛星の軌道データを使って予想した、
「ようこう」から見た月の中心の軌跡です。
中心の円が太陽を表し、
アスタリスク付きの実線*が月の中心の移動を示しています。
地球を周回する衛星の速度は、月の影の移動速度よりも早いため、
衛星からは2回部分日食を観測することができることがわかります。
太陽の右上(日本時間17時50分頃)と左上(日本時間21時50分頃)で
太陽と月の中心の軌跡が接近している時に、
「ようこう」から部分日食が観測できます。
日本時間17時50分頃に観測された部分日食のデータは20時30分に、
日本時間21時50分頃に観測された部分日食のデータは22時10分に
鹿児島宇宙観測所(KSC)
へデータが転送されました。下の図が、そのデータです。
17時50分からの部分日食は、 「ようこう」が地球の陰から出てきた時にはすでに始まっていました。 そのため、欠けた太陽から普通の太陽に戻っていく様子を「ようこう」は観測しました。 ムービーの最初の画像の太陽がすでに欠けているのは、このためです。
*:アスタリスクが付いていない所は、 「ようこう」が地球のうしろにいる時間の月の運動を示しています。 そのため、線が太陽と接近していて部分日食が起きていても、 「ようこう」は日食を観測することが出来ません。