プロミネンスの爆発的上昇とコロナの物質放出
コロナの中に浮かんでいるプロミネンス(紅炎)をHαで観測していると、
1〜2ヶ月ほど安定な姿を保っているかと思うと、突然爆発的上昇を開始して
見えなくなってしまいます。
このプロミネンスの爆発的上昇にともなってコロナの中を高速で伝わって行く
球面波状の構造が観測されますが、これはコロナの物質放出(CME)と
呼ばれる現象です。2〜3日後には地球にその衝撃波がやってきて磁気嵐や
オーロラを発生させることもあります。
上の図は1992年8月28日に太陽の縁で発生した、プロミネンスの上昇
の軟X線写真です。(細かい構造を見るためネガ写真にしています。)
プロミネンス本体は温度が低い(約1万度)のため上の図では
写ってはいませんが、21時32分と22時16分の絵ではプロミネンスを
取り囲む磁力線を示す、奇妙にねじれた線が何本も写っています。
そしてその外側には、望遠鏡の視野の限界を越えて膨張しつつある、
半球状のCMEが見事に撮影されています。太陽の縁に近い明るい部分は、
プロミネンスの上昇を伴って発生したフレアで、惑星間空間に向かって
飛んでいくプロミネンスの下側で磁場のエネルギーの解放が起きている
ことを示しています。プロミネンスの爆発的上昇にともなうX線コロナの
構造がこれだけ細かく撮影されたのは初めてで、
プロミネンスの上昇の原因やCMEが形成されるプロセスを解明する上で貴重な
データとなるでしょう。