原著論文

  1. -論文名:「天の川銀河中心の超大質量ブラックホールのスピン測定」

  2. -原題:「Measuring spin of a supermassive black hole at the Galactic centre -- implications for a unique spin」

  3. -著者:加藤成晃(JAXA宇宙科学研究本部)、三好真(国立天文台)、高橋労太(理化学研究所)、根來均(日本大学)、松元亮治(千葉大学)

  4. -掲載誌名:イギリスの学術雑誌”Monthly Notices of the Royal Astronomical Society” 第403巻の第1号に掲載

 

 ブラックホールの性質は、質量、スピン、電荷という3つの物理量で表現されることが知られています。このうち質量はブラックホール周辺の星やガスの運動から測定されています。スピンもいくつか測定されていて、不確定要素が多いものの、巨大ブラックホールのスピンは大きな値を持つと今まで考えられていました。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究本部の加藤成晃(かとう・よしあき)研究員を中心とする研究グループは、これまでの方法の問題を解決するため、ガスがブラックホールへ落下する時にできる回転ガス円盤(降着円盤)の共振現象に由来する光度変動を測定することでブラックホールのスピンを求める新たな方法を考案し、銀河系の中心にある巨大ブラックホール「いて座A」のスピンを求めることに世界で初めて成功しました。

 巨大ブラックホールのスピンの値は多くの研究者の予想よりもかなり小さいもので、巨大ブラックホールの自転エネルギーが抜き取られて、宇宙ジェットなどの他のエネルギーに転換された可能性があることを示しています。

 なお、この成果は2010年3月発行のイギリスの学術雑誌"Monthly Notices of the Royal Astronomical Society"の第403巻の第1号に掲載されます。

 

プレスリリース

降着円盤振動の想像映像

プレスリリース 詳細説明 用語解説と補足 著者紹介

中心にあるブラックホールによって、その周囲には強い重力が加わります。 色は振動の振幅を表していて、振動数はブラックホールの重力の強さで決まります。ここをクリックすると高解像度のスナップ画像が見れます。