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エディントン限界光度

天体にはその質量から決まる、エディントン限界 (Eddington limit)と言う 限界光度がある。それ以上明るくなると、輻射圧によって星の大気が飛ばされてしまう。 宇宙にある元素の大部分が水素である。水素の質量を$m_H$として、重力と輻射圧のつりあいの式は以下のように書ける。

\begin{displaymath}
\frac{\sigma_T}{c} \frac{L_{Edd}}{4\pi r^2} = \frac{GMm_H}{r^2}.
\end{displaymath} (184)

ここで $\sigma_T 6.65 \times 10^{-25}$ cm$^2$トムソン断面積[*]で、 電子が光を散乱する際の断面積である。 これから、
\begin{displaymath}
L_{Edd} = \frac{4 \pi cGM}{\sigma_T/m_H} = \frac{4\pi c\;GM}{\kappa_T}.
\end{displaymath} (185)

$\kappa_T$はトムソン散乱によるOpacity(不透明度)で、$\sim$0.4 cm$^2$/gである。 よって、
\begin{displaymath}
L_{Edd} = \frac{4\pi c^3\;}{\kappa_T }\frac{GM_\odot}{c^2} ...
...times 10^{38} \left(\frac{M}{M_\odot}\right) \; [{\rm erg/s}].
\end{displaymath} (186)

白色矮星の最大質量(チャンドラセカール限界)は$1.4 M_\odot$で、それが中性子星の平均質量に対応している。 中性子星の最大質量は$\sim2 M_\odot$で、それより重いコンパクト星はブラックホールである[*]。 ブラックホールについては、(186)に従って、質量が大きいほど、明るく光ることができる。

前節で示したとおり、$\sim10^{18}$ erg/sで質量降着している中性子星はほぼエディントン限界で光っていることに 注意。これより質量降着率が大きくなっても、より明るく光ることはできない(物質は降着できずに、輻射圧で 跳ねとばされてしまう)。



Ken EBISAWA
2008-01-30