黄道光とは、惑星間空間に分布するダスト粒子(Interplanetary dust: IPD)による太陽光の散乱 成分であり、主に可視光と近赤外線の波長領域で観測される。そのスペクトルは、惑星間ダストの 鉱物組成や粒子サイズを反映することから、その起源や変成履歴を制約する重要な観測量である。 しかし、黄道光のスペクトルは可視光と近赤外線における連続的な波長で観測されたことはなかっ た。そこで本研究では、NASA観測ロケット実験CIBER-2 (Cosmic Infrared Background ExpeRiment 2) とNASA人工衛星SPHERExによる観測データから、可視光と近赤外線の波長域における連続的な黄 道光スペクトルを抽出することに成功した。また、得られた黄道光スペクトルから惑星間ダストの 鉱物組成に関する情報を得た。CIBER-2は特定の高銀緯の暗い天域において波長0.5-2.0umでの広帯 域撮像と狭帯域分光観測を行う実験である。その観測データには、黄道光(Zodiacal Light: ZL) に加えて星の積算光(Integrated Star Light: ISL)銀河拡散光(Diffuse Galactic Light: DGL)、 宇宙赤外背景放射(Extragalactic Background Light: EBL)、大気発光とロケットからの脱ガスに 起因する環境放射が重畳している。特に環境放射の影響が深刻であり、その除去が黄道光の抽出に は重要である。測光撮像データにおいては、環境放射が視野内で一様な強度分布をもつ一方、天体 放射は各成分に特有な分布を持つことを利用し、黄道光成分を抽出した。分光観測データにおいて は、環境放射をその特徴的なスペクトルから差引くことで黄道光スペクトルを得た。SPHERExは波 長0.75-4.5umにおける全天の分光サーベイ観測を行う衛星である。2024年5月以来随時更新されて いる公開データの中から高銀緯天域におけるスペクトルを抽出し、それらの黄緯変化から黄道光の スペクトルを算出した。これらの解析の結果、可視から近赤外にかけての黄道光スペクトルを広い 波長域で一貫して導出することに成功した。また得られた黄道光のスペクトルモデルと太陽スペク トルを用いて、惑星間ダストの反射率 (Albedo) を求めた。得られたスペクトルは、0.8 um-1.0 um付近で吸収の特徴が確認された。これは、惑星間ダストの起源天体に由来する吸収の影響を反 映している可能性を示唆する。