英文を書く時、英語で思考して書ければ理想とは言われます。しかし、ではどうやってその境地に至るか、そしてそもそもAI時代にそれだけの努力は価値あるか、という問いもでてきそうです。 外国語学習の一つの大きな意義は、思考チャンネルを増やすことにあります。人間の思考は相当程度言語で規定されてしまう以上、母語とは異なる言語に習熟することは、自分が持っていなかった思考枠組みを手に入れることに等しいです。そのためには、英語で100%思考できる必要は必ずしもありません。習熟度に応じた進歩があるという意味で連続的で、やり甲斐があります。そうして自らの思考の幅を広げることができたなら、それは今現在取り組んでいる課題や論文執筆に役立つだけでなく、そして今後のAIの発展如何にかかわらず、人生の大きな財産となることでしょう。 本講演では、日本語との違いに留意しながら、英語という言語で特徴的な思考パターンを解説します。その際、日本語人の論文英語を数多く例に採り上げることで、論文ないし理系レポートを書く際の身近な実戦例にもなることをめざします。英国在住20年超、天文学の元研究者であり、過去10年間にわたり論文英語の校閲業を通して日本語人の思考パターンをよく知る講演者によるセミナーです。