昨今の機械学習を支える技術の一つとして、連鎖率を用いて複雑な関数の勾配を計算してくれる自 動微分がある。宇宙科学分野のデータ科学的手法においても、自動微分を用いたDifferential Programming (DP)を行うことにより、勾配ベースの最適化はもとより、HMC-NUTSによる高効率(高 信頼)なMCMC、規格化流を用いた変分推定などにより、これまでは実装が難しかった推定や解析が、 きわめて容易になってきている。自動微分を確率プログラミング言語(PPL)と組み合わせることで、 我々は現象のモデルをDPするだけで高度な推定・解析を行うことができる。今回のセミナーでは、 オパシティ計算と放射伝達をDPした系外惑星・恒星の自動微分可能なスペクトルモデルExoJAX (https://github.com/HajimeKawahara/exojax) の開発の中で学んだことを中心にお話ししたい。 ExoJAXは, Autodiff+XLAをGPUバックエンドで使えるJAXを用いている。10年前はGPUを使うには CUDAなどを勉強するところから始めないとならなかった。今はまるでアマチュア無線がスマホになっ たかのように誰でも気軽にGPUの計算力を利用可能になっていることもご紹介したい。