本研究ては,CdZnTe の赤外線吸収要因と,イマーションクレーティンク (IG) 材料への適用可能性を調査するため,既存の測定系と独自に構築した測定系を用いて極低温(T=8.5K)ての波長 520 μm吸収係数を測定した. 我々は,中間赤外線高分散分光観測(10-18 μm,R=λ/λ=29,000)の実現のため,人工衛星搭載を目指したIGの開発を進めてきた.IGは回折面か高屈折率物質(n)ててきており,従来の回折格子の1/nサイスに小型化可能な回折素子てある.光が高屈折率物質中を通るため,材料は低吸収である必要がある(要求値:α<0.01 cm^{-1}).先行研究より,極低温用1018 μm IG材料候補は低抵抗/高抵抗CdZnTeてある(Kaji et al. 2014, Sarugaku et al. 2017).低抵抗/高抵抗CdZnTe結晶 (10^2, 10^{10} Ωcm) の吸収係数を極低温て調へるため,(1)収束光FT-IR測定と(2)ランフ光源コリメート光とハントハスフィルタての透過率測定を行なった.高屈折率の厚いサンフルのため,収束光実験(1)ては焦点すれによる系統的な誤差か生しうる.実験(2)は限られた波長ての測定たか,焦点すれによる誤差かない.この2つの実験の組合わせて,高確度て吸収係数を推定する. 吸収係数評価の結果,低抵抗CdZnTeでは低温ほと吸収率か大きく,IG材料として不適てあることか判明した.さらに,吸収モデルを仮定して吸収係数の温度依存性fittingを行うことにより,CdZnTeの吸収要因の特定を行なった.このfittingにより,低温では不純物準位に束縛されたホールによる吸収が支配的であることを明らかにした. また,高抵抗CdZnTeは極低温でも低抵抗型より低吸収であり,吸収係数の上限値が得られた(α<0.1 cm^{-1}).上限値のみのためIG要求値と直接比較はできない.しかし,今回明らかにした吸収要因の議論から,高抵抗CdZnTeはIG要求を満たすことを間接的に示した. 本研究により,極低温IGに適する材料を明らかにし,中間赤外線高分散分光観測の実現への道を開いた.