たびたびご無沙汰しております,Y2です.
月1回ペースで何か書くと宣言していましたが,かなり日が経過して
更新を年度末ギリギリまで引き延ばしてしまいました.申し訳ありません.


さて,下記のJSPECホームページにて
「IKAROSデモンストレーションチームの解散」についてお知らせしております.
http://www.jspec.jaxa.jp/hottopics/20130328.html

IKAROSの次の計画である「ソーラー電力セイルによる外惑星領域探査計画」を加速するため,
一度IKAROSの成果を整理してまとめる必要があり,終了審議という形をとりました.
ここでまとめた成果も反映させて,次期ソーラー電力セイル計画に向けた研究開発を
今後IKAROSチームのメンバーを中心としてさらに本格的に進めていきます.

この次期計画の研究開発の中においてIKAROS運用の継続は非常に大きな価値を持っており,
次年度でも引き続き研究ベースで実施するため,現在調整を進めています.

初夏に予想される二度目の冬眠明けで再び電波を捉えられれば,
ビーコン運用により,さらに長期的な姿勢・軌道情報の取得が期待できます.
さらに電波状態がよくテレメトリデータを取得できる状態になれば,
セイルの画像や薄膜太陽電池の発電性能などの詳細なデータを取得できる可能性もあります.
前回の冬眠明けの運用では取得できなかったこれらのデータが取得できれば,
これまで打ち上げから約1年分しか評価できていなかった
セイル膜面の機械的な劣化・形状変化や薄膜太陽電池の発電性能の経年変化が
一気に約3年分まで評価できることになります.
約15年の長期にわたるミッション期間を想定している次期計画において
このような長期にわたったデータの評価は重要な情報となります.

世界で唯一無二のソーラー電力セイルから少しでも発展的な情報を引き出し
次期計画に反映するため,IKAROS運用はぜひとも継続したいと考えています.


次期ソーラー電力セイル計画に向けた研究開発については,
これまでも運用と並行して着々と進めてきてきました.
その主な活動の一つとして,次期計画に向けたセイル・展開機構などの試作を進めています.
外惑星探査に向けたソーラーセイルのサイズはIKAROSの約15倍となり,
薄膜太陽電池がセイルのほぼ全面にわたって貼り付けられることになります.
これらの違いによって新たな対処すべき課題がいくつか出てきており,対策が必要となります.

・IKAROSではベースとなるポリイミドフィルム上に
 薄膜太陽電池などの搭載デバイスを部分的に配置していく方法をとりましたが,
 搭載デバイスが大部分を占める次期セイルでは,これらのデバイスをユニット化して
 ユニット同士をパッチワーク的に接続していくようにするほうが作業ロスが少なくなります.
 このような方法で,製作精度を保ちながら大型セイルを製作する手順を確立するため,
 まずはIKAROSクラスのサイズで試作を行っています.

・IKAROSに対してさらに薄膜太陽電池の軽量化を進めていますが,
 それでも次期セイルの重量はIKAROSの15倍以上の重量になる見込みです.
 打ち上げ時の加速の中でもこのセイルを保持し,
 さらに軌道上で確実に展開するための「展開機構」の改良も進めています.

・セイルのサイズ・折数が増えて,さらに薄膜太陽電池の厚みの影響が出てくると,
 セイル収納時に「巻きつけの内外周差」の問題が出てきます.
 カレンダーをくるくる丸めると先端の位置がずれてきますが,
 これを蛇腹状に折り畳んだセイルでやってみると,先端位置ではなく折線がずれるのです.
 (ペーパークラフトをお持ちの方は,ぜひ試してみてください.)
 このような折線のずれを抑えながら巻きつける方法を,大きなセイルを使って実験をしながら
 いろいろ検討してきました.この検討に基づいて新たなセイル収納装置を開発し,
 試作したセイル・展開機構と合わせて,今後本格的に巻きつけ実験を進める予定です.


研究以外の話題も日記っぽくいくつか紹介しておきましょう.

・「ソーラーセイルによる深宇宙探査・航行技術の実証的研究」という研究題目で
 津田さんが宇宙科学振興会の「第5回宇宙科学奨励賞」を受賞されました.
 授賞式にはIKAROSチームメンバーも連れだって参加させていただきました.
 授賞式の後に久しぶりにチームメンバーで飲みに行けたのが個人的には嬉しかったです.
 はやぶさ2等で非常に多忙なメンバーが多い中,奇跡的な人数の揃いっぷりでした.

・TVの取材で,セイル折りたたみの作業風景の撮影やインタビュー撮影などがありました.
 IKAROS特集を組んでいただいており,4月中旬に放送される予定です.たくさん噛みました.

・IKAROS打ち上げ時に在籍していた川口研究室の学生さんは,みな卒業となってしまいました.
 長く一緒に頑張ってきた同志でもあり,ついついしんみりしてしまいます.
 卒業してもみな宇宙開発関係の道に進むそうで,
 IKAROSの経験を生かして大活躍してくれると確信しています.
 残った学生さんたちにも,セイルの製作・取扱いのノウハウなど,しっかり引き継いでいます.


あと,遅くなりましたが,前回話題にしましたバレンタインデーの贈り物の紹介がまだでした.
↓ ↓ ↓
20130330-Valentine2013_1.jpg
お手紙もたくさんいただきありがとうございました.じっくり読ませていただきました.
20130330-Valentine20132.jpg
みなさま本当にありがとうございます.
箱を開けたらイカロス君たちがいっぱい,みたいなチョコとかいろいろあったのですが,
写真におさめる前に私たちの胃におさまってしまいました.申し訳ありませんm(_ _)m


みなさまの応援もぜひ今後とも継続していただけますと幸いです.
そのためにも,当ブログで定期的に情報発信していければと考えております.
私ばかり書いてもつまらないですし,Oさんを見習って
「あ,あのぉ,ちょっといいですか?」とチームメンバーにお願いしていこうと思いますので,
みなさま,ブックマークは消さないようによろしくお願いします!(Y2)


3/29のIKAROS
太陽距離: 1.00AU
地球距離: 282,764,318km, 赤経=-8.2°, 赤緯=-5.8°
金星距離: 0.60AU(89,339,026km)
姿勢: スピンレート=**rpm,太陽角=**°

Today's IKAROS
Sun Distance: 1.00AU
Earth Distance: 282,764,318km, RA=-8.2deg, Dec=-5.8deg
Venus Distance: 0.60AU(89,339,026km)
Attitude: Spin Rate=**rpm, Sun Angle=**deg