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第90号 2001年 4月 13 日発行

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目次

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赤外線天文衛星IRTSのデータベース化とデータアーカイブ


 赤外線望遠鏡衛星IRTSは、1995年に打ち上げられた日本で最初の赤外線観測衛星です。 その後数年にわたりIRTSチームを中心として装置の較正作業・データの解析が進められ、 様々な天文学的成果は論文として公表されています。しかし現在この衛星で得られたデータのすべてが公開されているわけではなく、全データの早期解析・公開が待たれている状況 でした。この度、科学技術振興事業団の計算科学技術活用型特定研究開発推進事業による「宇宙科学データ バーチャルセンター構築」プロジェクトの一環として、この衛星データのカタログとしての 完全整備化・一般公開のための検索システムの開発整備が行われ、これらは宇宙科学研究所の宇宙科学データアーカイブシステムDARTSの中で公開されることになりました。今回は衛星および 得られたデータの概要と公開にあたってのユーザーインターフェイス等の環境整備状況、 またデータベース化されたもののうち、赤外線点源カタログ(PointハSource Catalogue)、 赤外線空間強度分布図(Spatial Intensity Image)を中心に紹介します。

1. 赤外線望遠鏡衛星IRTS

 IRTS (Infrared Telescope in Space)は、高感度の赤外線観測を可能にするために超流動液体ヘリウムによって冷却された日本で初めての天体観測用赤外線望遠鏡です。1995年3月30日から4月26日までの間に、全天の7%にわたる領域のサーベイ観測を行いました。望遠鏡の口径は15cmで、焦点面には赤外線の全域をカバーする4つの観測機器が搭載されていました。

◆ 近赤外分光器:NIRS(Near-Infrared Spectrometer)
◆ 中間赤外分光器:MIRS(Mid-Infrared Spectrometer)
◆ 遠赤外ライン撮像装置:FILM(Far-Infrared Line Mapper)
◆ 遠赤外測光器:FIRP(Far-Infrared Photometer)

2. IRTSデータアーカイブ

 今回データベースとして公開されるのは、「赤外線点源カタログ(Point Source Catalogue)」と「赤外線空間強度分布図(Spatial Intensity Image)」の2種類です。この他、衛星・観測装置、観測の概要、データベースの内容・検索方法、関係論文リストについての解説ページもあり、必要に応じてこの衛星ミッションのすべてを知ることができます(図1)。

図1 

図1:IRTSデータベース検索システム概念図

2-1. 赤外線点源カタログ(Point Source Catalogue)

  赤外線点源カタログ(Point Source Catalogue)は、NIRSとMIRSで同定された赤外線点源のスペクトルデータです。波長1.4-4.0mmを波長方向に24要素、4.5-11.7mmを32要素に分割した計56点で構成されています。対象天体は主に銀河系内の恒星が中心で、その数は約600天体あります。この波長帯のスペクトル情報はUIRバンドやシリケイトの吸収、ダストに特徴的なスペクトルを示すことなどから、星の詳細な分類を可能にしています。
  Point Source Catalogueの検索画面の例を図2に示します。個々の天体のデータを得る最も簡単な方法は「天体リスト」(図3)から任意の天体を選択する方法です。リストではわからない場合は検索フォームにおいて「Object名+検索カタログ名」、或いは「分点年+天体座標」を入力することでも得ることができます。最終的にはその天体の観測・固有データの詳細、スペクトル図、データのテーブルがブラウザ上に表示されます(図4)。

図2:MIRS-NIRS Point Source Catalogue検索ページ

図をクリックすると拡大図が表示されます

図3:天体リスト

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図4:カタログデータの一例

図をクリックすると拡大図が表示されます。

2-2. 赤外線空間強度分布図(Spatial Intensity Image)

 赤外線空間強度分布図(Spatial Intensity Image)は、4つの焦点面装置各々の波長バンドで得られたマップです。観測領域は衛星の運用上の理由により、南スキャンと北スキャンの2つのスキャンパスがあり、マップは南スキャン52領域、北スキャン36領域に分割されファイル化されています(1つのマップあたり約13度角)。
  特定のマップを見るには、検索ページ(図5)においてまず焦点面装置を選択します。さらにチャンネル(波長)、南北スキャン、マップ番号(或いは座標)を入力するとマップが表示されます。また「Scan path(図6)」からも検索することができます。任意のポジション或いはマップ番号を選択すると、その領域にあるマップのリストが表示されるので(図7)、見たいマップを選択します。最終的にブラウザ上に表示されるマップの一例を図8に示します。このマップには、1. 補間データ、2. 未補間データ、3. エラーデータ、4. Sampling Number データ(そのポジションで何回観測を行ったか)があります。

図5:Spatial Intensity Image検索ページの一例(NIRS)

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図6:Scan path

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図7:マップリストの一例

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図8:Spatial Intensity Imageの一例

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3. データベースの今後

  データ、カタログについては今後も解析が終了したものから順次追加・アーカイブしていきます。このデータベースは平成13年度初旬から一般公開を開始する予定になっており、さらに多くの天体カタログからの検索、DARTSの他のデータベースとの相互リンクなども考えています。今後新しく解析されたデータの随時追加や新規情報などは「What's New ?」にて公表していきます。このデータベース・検索システムのURLは下記の通りです。

http://www.darts.isas.jaxa.jp/astro/irts/index.html

またこのデータベースに関しての詳細・ご質問は、下記まで問い合わせください。
科学技術振興事業団/名古屋大学 高橋 英則 nori@u.phys.nagoya-u.ac.jp

高橋 英則

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平成12年度宇宙科学企画情報解析センター運営委員会

上記委員会を平成13年3月29日に宇宙研A棟5階会議室において開催した。出席者は長瀬文昭、松本敏雄、橋本正之、松方純、星野真弘、松田卓也、芝井弘、荻野瀧樹、荒木徹、三浦昭、笠羽康正の11名であった。当日はPLAINセンターの平成12年度の運営・事業・開発研究に関して下記の8項目の報告が行われた。また、平成13年度の事業計画等下記の4項目の議題につて審議を行った。

報告

  1. 大型計算機運用状況
  2. 大型計算機共同利用
  3. JSTプロジェクトとDARTSデータベース開発
  4. ネットワーク・セキュリティ管理
  5. 新A棟ネットワーク整備
  6. 所内LANギガビットイーサーネット整備
  7. 工学データベース(EDISON)
  8. 平成12年度シンポジウム報告
議題
  1. 平成13年度事業計画概要
  2. 平成13年度大型計算機共同利用
  3. 平成13年度シンポジウム計画
  4. 次期委員の選出について

 報告の中では、大型計算機運用とその共同利用は順調に進められた事、科学技術振興事業団プロジェクトによりDARTSデータベースは大幅に増強された事、Firewallを導入して1年を経過したが、おかげでネットワーク・セキュリティ管理は相当向上した事、所内LANは各棟各フロアーに至る全てのネットワークバックボーンを高速化(ギガビットイーサーネット)する整備が進行しており、平成13年9月には完成予定である事、工学データベース構築開発は順調に進行しており、現在は一部衛星で定常運用に入っている事などが報告された。

 議題1の審議では科学技術振興事業団(JST)プロジェクトによるDARTSデータベース開発の完成と所内LANギガビットイーサーネットバックボーンの整備が主要事業となる事が確認された。議題2では大型計算機共同利用の公募と審査のあり方が議論され、次年度以降は計算時間の随時追加、共同利用の随時応募を可能とする方向で検討し、この方針に沿って計算時間の当初配分を行う事を確認した。また、議題3のシンポジウムについて来年度は久しぶりに、「宇宙理工学における数値実験」(仮題)をテーマとして過去数年間に行われた大型計算機共同利用の成果を聞くシンポジウムを開催する事となった。

長瀬 文昭

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大型計算機に関するお知らせ

1. 大型計算機の4月・5月の保守作業予定

GS8300/10Nは、5月21日(月)8:00〜13:00に定期保守 を行います。

2.大型計算機4月・5月連休の運転予定

ホスト名 4月 5月
28日〜30日 1日, 2日 3日〜6日 7日
土〜月 火・水 木〜日
VPP800/12 自動 連続 自動 連続
GS8300/10N 自動 連続 自動 連続
自動:自動運転. 連続:連続運転

その他のUNIX系サーバは、連休期間中も連続運転を行います。

3.大型計算機関係の相談窓口について

 大型計算機関係の相談窓口は、原則として高橋氏・梶沼氏(内線8391)が 受け、相談内容の切りわけにより各担当者が対応しますのでご協力お願いします。

4.大型計算機の登録予算及び端末台数の確認について

 大型計算機の課題登録・更新処理にご協力いただき大変ありがとうございまし た。おかげさまで年度末処理も無事実行できました。
 平成12年度の各研究室の使用料金と年度収支報告と共に、平成13年度の大 型計算機登録予算及び端末台数の確認書(返送用)を同封しましたので、必要事 項をご記入の上 4月19日(木)までにシステム管理・三浦宛(A棟2F庶務 ポスト:7B大型計算機)にご返送ください。
また記入上不明な点がございましたら三浦(内線8386)にご連絡ください。

文部科学省宇宙科学研究所 大型計算機室 (三浦先生)

三浦 昭


編集発行:文部科学省宇宙科学研究所
宇宙科学企画情報解析センター
〒229-8510 神奈川県相模原市由野台 3 -1-1 (Tel 042-759-8352)