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第87号 2001年1月17日発行

目次


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新年を迎えて

明けましておめでとうございます。

 昨年は Astro-E 衛星の打ち上げ失敗、巨大太陽フレアーによる姿勢擾乱に起因した「あすか」衛星の観測停止など、宇宙研にとっても、また PLAIN センターの事業計画にとっても大きな影響を与える出来事がありました。PLAIN センターでは昨年はこのような状況の中で、科学技術振興事業団(JST)の計算科学技術活用型特定研究開発推進事業(ACT-JST)の支援を得て、宇宙研の衛星で観測されたデータ資源をアーカイブデータベース(DARTS)として一般に公開する事業を大幅に推進する事が出来ました。また、計算機・ネットワークの維持・管理、工学データベースの構築、ネットワークセキュリティーの向上等にも努めて参りました。今年はいよいよ21世紀の幕開けとなり、Astro-F、Astro-EII、Solar-B など大型で大容量のデータを取得する衛星の打ち上げも数年後に迫って参りました。 PLAIN センターにとってこの21世紀の幕開けが実り多いものとなる事を願い、数少ないスタッフですが一同全力を尽くして、(1)計算機の維持・管理、(2)ネットワークの維持・管理、(3)データベースの開発・管理、等に取り組む所存です。今年もこれまで以上に皆様のご協力・ご支援をいただきますよう、よろしくお願い致します。

 まず、昨年1年間の当宇宙科学企画情報解析(PLAIN)センターの活動を振り返ってみますと、第1に上記 ACT-JST の支援による「宇宙科学データ解析研究のためのバーチャル・センターの構築」プロジェクトが、全国の関係大学・研究機関の協力を得て、次第に成果を挙げてきた事が挙げられます。宇宙研の衛星観測事業で取得されたデータを一般研究者の利用に供するためのデータアーカイブシステム DARTS (Data ARchives and Transfer System) 計画は 1995 年スタートしました。1998 年秋よりこの DARTS を拡充すべく、ACT-JSTのプロジェクト、「宇宙科学データ解析研究のためのバーチャル・センター構築」(DARTS-VDCと略す)が展開されました。このプロジェクトでは宇宙科学関連機関の協力を得て、(1)宇宙研の衛星観測データをアーカイブ化して DARTS-VDC 傘下で管理する、(2)その解析を支援するソフトウェアー群を整備し公開利用を可能とする、(3)海外の宇宙科学に関する主要データベースのミラーサイトを設置する、事を目指しました。この ACT-JST プロジェクトによる事業は平成13年度上半期で完了の予定ですが、これまでの成果については当ニュース本号に別項で報告致します。

 さて、昨年の引き続き私達を悩ませたのはネットワークの安全性の問題です。宇宙研では、従来は衛星運用 LAN などについては厳重なセキュリティの下で管理・運営してきましたが、研究用のネットワークについてはむしろ全国共同利用機関として全国の宇宙科学関連の研究者との密接な共同研究を推進するために、これら利用者にとってできる限り自由で便利なネットワークアクセスを原則としておりました。そのため前回の計算機リプレース時に導入したファイアーウオール設定などがやや後手に回り、昨年は随分と不正侵入/踏み台/メール不正転送などの攻撃に曝されました。幸い最近になって、各グループのサブネット管理者の組織も次第に整備され、サブネット管理者グループの協力を得ながら、ネットワーク安全性の向上が図られつつあります。今後ともネットワーク所内 LAN の運用については利便性と安全性の両面を追求し続ける所存ですので、皆様にも何とぞ十分ご協力頂きます様お願いします。  

 最後になりますが、宇宙研は一昨年より国立情報学研究所の学術情報ネットワーク(SINET)のノードとなり、宇宙研ネットワークの対外接続容量も大幅に改善されました。一方宇宙研が産出する衛星観測データ資源、スパーコンピューター計算資源も加速度的に増加しており、一層高速のデータ通信が期待されております。宇宙研に限らず、昨今は大量で多様な情報の利用のために、情報技術、情報産業の革新が進んでおります。情報研でも SINET をさらに高速化した毎秒 10 ギガビットの超高速通信ネットワークを主要大学・研究機関間の基幹ネットワークとする(スーパーSINET)計画が持ち上がり、平成13年度より実施される事になりました。このスーパーSINET 計画に合わせて、宇宙研でも平成12年度の補正予算で所内 LAN バックボーンの整備が認められました。スパーコンピューターは元より、各研究棟・実験棟の各フロアー末端まで1ギガビット通信が可能となるよう現在所内 LAN の整備を計画中です。調達日程に関する諸般の事情で機器の設置・稼動までには多少の遅れが予想されますので、3月末に竣工予定の新研究棟に関しては、移転時に暫定ネットワーク接続を行う予定であります。関係者の皆様には一時御不便をかけると思いますが、御協力をお願いします。

(長瀬 文昭)


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DARTS バーチャルデータセンター

 科学技術振興事業団(JST)の計算科学技術活用型特定研究開発推進事業(ACT-JST)の平成10年度採択基本型プロジェクトの研究開発中間報告会が、去る平成12年12月4日に科学技術振興事業団東京本部地下大ホールで開催された。ここでは、物質・材料分野5プロジェクト、生命・生体分野4プロジェクト、環境・安全分野4プロジェクト、地球・宇宙観測分野4プロジェクトが報告を行った。我々が ACT-JST の支援の下で展開している「宇宙科学データ解析研究のためのバーチャル・センター構築」(DARTS-VDC と略す)プロジェクトも地球・宇宙観測分野の1つとしてここで中間報告を行った。この機会に JST 中間報告会の資料を基にして、DARTS-VDC の開発の現状を報告する。

 DARTS-VDC プロジェクトの骨子は宇宙科学関連機関の協力を得て、(1)宇宙研の衛星観測データを一般研究者が容易に利用で来るデータに変換したアーカイブデータベースを作成しDARTS-VDC 傘下で管理する、(2)DARTS-VDC 傘下のアーカイブデータベースを利用する研究者に、その解析支援ソフトウェアー群を整備、提供する、(3)国内研究者の総合的解析の便宜を図るため、海外の宇宙科学に関する主要なデータベースを集約したミラーサイトを DARTS-VDC 傘下に設置する、ことである。本研究は宇宙科学研究所(ISAS)宇宙科学企画情報解析(PLAIN)センター(プロジェクト代表者: 長瀬)、東大理学部(共同責任者:寺沢)、東工大理学部(同:長井)、名大理学部(同:芝井)、京大宙空電波(同:橋本)、理化学研究所(同:河合)、国立天文台(同:近田)が中心となって研究開発に当たっている。もちろんその背景には、宇宙研及び国内外の関係大学・研究機関で構成される各衛星プロジェクトの実験・運用班による、較正された観測データや解析ソフトの提供を始めとする多大な協力がある。さらに海外からは、米国 NASA /Goddard Space Flight Center 等の協力も得ている。このようにして宇宙研と関係大学・研究機関が連係して開発・作成した宇宙研の衛星観測データベース、その解析支援ツール、関連した宇宙科学ミラーデータは宇宙研の DARTS システムに集約され全国、全世界に公開される。このプロジェクトにおいて科学技術振興事業団で雇用され各機関に依託された JST 若手研究員は、本研究開発の推進に当たって中心的な役割を果たしている。

 以前から公開していた「あすか」のX線天文データベース、「ようこう」の太陽物理データベース、Geotail の磁気圏プラズマデータベースは本プロジェクト期間に一層改訂・増強された。それに加え(1)Geotail 衛星磁場データベース、(2)「あけぼの」衛星地球磁気圏データベース、(3)IRTS 赤外線天体カタログデータベース等が新たに構築され、DARTS-VDC を経て公開される運びとなった。また当初計画した「多波長観測データ可視化ツール開発」等の解析支援ツールの開発も順調にすすんでいる。さらにミラーサイトには太陽地球系物理学データベース(CDAWeb)、X 線天文データベース(ROSAT 全天サーベイデータ)が組み込まれ既にデータ中継サービスを開始した。これら全体の詳細を紙数の限られた本ニュースで紹介する事は不可能であるから、ここでは現在開発を終了または開発中のデータベース、解析支援ツール、ミラーサイトについて、その項目のみ紹介する。

1. データベース開発・構築
(1)「あすか」X線天文データベース(再較正した第2版を公開開始)
(2)「ようこう」太陽物理(公開データの追加継続中)
(3) GEOTAIL 磁気圏プラズマデータベース(公開データの追加継続中)
(4) GEOTAIL 高時間分解能磁場データベース (新規作成公開開始)
(5)「あけぼの」地球磁気圏データベース(新規作成一部公開開始)
(6) IRTS 赤外線天文データベース(新規作成現 在試験中:近日公開)
(7)「ぎんが」 X 線天文データベース再構築(開発中)
(8)「はるか」電波干渉計相関データのアーカイブ化(開発開始)


2. プログラム開発・製作
(1)多波長天文画像データ検索・閲覧サービス(MAISON)(第1版公開)
(2)多波長天文画像データ検索・閲覧サービス(MAISON-II)(第2版開発中)
(3)ジオテイル衛星・プラズマ速度データ可視化システム(開発中)
(4)ジオテイル衛星・プラズマ波動可視化ソフトの開発(開発中)
(5)γ線バースト速報・光同定システムの開発(開発中)
(6)「ようこう」 X 線動画像閲覧システム(Solar Theater)(開発中)


3. ミラーサイトの構築
(1)CDAWebー太陽地球系物理学データベース(中継サービス開始)
(2)ROSAT 全天X線画像データベース(中継サービス開始)
(3)BeppoSAXーX線天文データベース(中継システム開発中)
(4)TRACE 太陽紫外線画像データベース(中継システム開発中)


 このように、平成9年に「あすか」の X 線天文データベース及び「ようこう」の太陽物理データベースの公開、平成10年に Geotail の磁気圏プラズマデータベースの公開から始めた DARTS データベースの最近2年間の発展・充実ぶりは目覚ましいものがある。ACT-JST の支援による本プロジェクトは平成13年度上半期に終了するが、現在手掛けている上記の開発項目は一部を除いて(「はるか」電波干渉計相関アーカイブデータの公開は平成13年度後半〜平成14年度前半の予定)この期間中に完成・公開開始の予定である。さらに、ACT-JST プロジェクト終了後もこのバーチャルデータセンターの理念・構想を継承し DARTS-VDC システムを継続的に運用・展開していきたいと考えている。今後、Astro-F 衛星以降各衛星毎に数 10 テラバイトに達すると予想される宇宙研の大容量衛星観測資源を効率的に較正・編集し、迅速な公開サービスを可能とするためには、高速入出力の大容量データ蓄積装置の導入、所内 LAN、国内回線、海外回線を包括する高速通信網の整備、PLAIN センターのマンパワーの強化、各衛星プロジェクトチームとの一層緊密な連携などが課題である。

(長瀬 文昭)


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新研究・管理棟のネットワーク整備について

 新研究・管理棟のネットワーク整備の概要をお知らせします。

(1) 概略

 新研究・管理棟(新 A 棟)では、各階の LAN 室に 10 BASE-T/100 BASE-TX 対応のポートを備えたネットワーク装置を設置し、LAN 室から各室の情報コンセントまで配線を行います。ネットワークを利用する際には、(予め接続申請が必要ですが) 従来 ATM 系の情報コンセントで使用されていたハブ等をそのまま利用して所内 LAN に接続できるように環境を整備します。接続申請の際に発行される IP アドレスは、原則としては新研究・管理棟専用のアドレスとなりますが、下記 (2) のような場合は、既存の棟と共通のサブネットアドレスを割り当てることも可能ですので、ご希望の方は接続申請の前にご相談下さい。

 ネットワークの概略は、図1のようになります。図中の「L3SW」は、今回導入される装置 (Layer 3 Switch) の配置を表しています。各支線の通信性能は、従来の ATM 系の支線と同等(もしくはそれ以上)のものとなるよう、調整しております。



図 1. 新研究・管理棟ネットワーク概要図


(2) 棟間に跨って同一サブネットアドレスを使用する場合

 現在の所内 LAN は、ATM 系のネットワークを主として、様々なサブネットが構築されています。ここで使用される IP アドレスは、ATM 系のサブネットでは、居室の物理的な配置をもとにして割り当てられています。 例えば、 A 棟の 4 階であれば、133.74.114.* のようなアドレスになります。新研究・管理棟が完成すると部門の大規模な移動が行われるため、従来のサブネットの割り当て方に従っていると、同じ研究グループが異なるサブネットに分割されてしまうおそれがあります。これを解決するために、新研究・管理棟に導入される装置は VLAN の構築が可能なものとなっています。すなわち、ネットワーク装置や居室の物理的な配置とは別に、任意の居室の組み合わせで一つの仮想的 (Virtual) な LAN を構築できるものです。新研究・管理棟と既存の棟との間の VLAN 構築も可能とするために、既存の各棟の要所にも新研究・管理棟に設置されるネットワーク装置と同じ装置を配置し、互いに接続する予定です。

 例えば従来同じサブネットを共有していた研究グループの一部が新研究・管理棟に移動した場合、既存の棟に残る各室の支線を今回設置される最寄りのネットワーク装置に接続変更すれば、引き続き両者が同一のサブネットを共有する設定が可能となります。ただし既存の棟で現在使用されているサブネットが他の部門等と共用となっている場合は、別途アドレスの調整が必要となります。また既存の棟に導入されるネットワーク装置は、あくまでも新研究・管理棟のネットワーク機能を補うものであるため、全ての居室を網羅して VLAN を構築するだけのポートは有していません。悪しからずご了承下さい。

(3) AppleTalk

 AppleTalk は、新研究・管理棟では既存の棟とは異なるゾーンとなります。また、上記 (2) のように VLAN を構築したサブネットにおいては、従来と異なる AppleTalk ゾーンに変更となる場合があります。このような場合、AppleTalk を使用する際に従来と別のゾーンを選択する必要がありますが、一旦ゾーンの選択が終われば従来と同様に使用できます。

 詳細につきましては、三浦もしくは長木までお問い合わせ下さい。 (三浦 昭 )


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大型計算機に関するお知らせ

1. 大型計算機の1月・2月の保守作業の予定


 M:システムメンテナンス


2. 大型計算機の相談窓口について

 大型計算機関係の相談窓口は、原則としてSE 高橋氏(内線8391)が受け、相談内容の切り分けにより各担当者が対応しますのでご協力お願いします。

(三浦 昭 )


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編集発行:文部省宇宙科学研究所
宇宙科学企画情報解析センター
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